概要
Thomas Shrin氏(Rittal社所属)は、次世代のデータセンター向けラックソリューション「DLC Ready Rack」(Open Rack V3準拠)についてプレゼンテーションを行いました。このソリューションは、高効率で持続可能なデータセンター運営を可能にするために設計されており、特に小規模・中規模企業(SMB)や共同ロケーション事業者(Colocation Providers)向けの適応を目的としています。
主なポイント
1. DLC(ダイレクト液冷)とエア冷却の比較
- DLCの複雑性:
- エア冷却よりも安全性や中断のない運転を保証する必要がある。
- 温度許容範囲を厳密に維持する必要がある。
- システム全体の監視と制御が不可欠。
- 課題の増大:
- データセンターの電力消費は2030年までに500%以上増加すると予測されている。
- 現在15kWのラックが、将来的には100kW~1MWに対応する可能性がある。
2. DLC対応ラックの設計と課題
カテゴリ | 具体的課題 |
---|---|
電力管理 | – 高電力バスバー(例: 18kW、29kW、140kW)の選定と設置。 – ケーブルやパワーシェルフの配置とアクセス(上下どちらから接続するか)。 |
冷却システム | – 液冷(Liquid-to-Air, Liquid-to-Liquid)の配管設計、CDU(冷却配分装置)、クイックコネクターの選定。 – フロー率や圧力損失の監視と調整。 |
機械的適応性 | – 19インチラックとの互換性確保や、アダプターの設計。 |
モニタリング | – システム全体の監視および制御、BMS(ビル管理システム)への対応。 |
認証・規格 | – ラック全体の認証取得(電力・冷却・モニタリングが統合されたインフラとして)。 |
3. DLCソリューションの中核技術
- 電力システム:
- 高電力バスバー、DCバスバー、POE(パワーオーバーイーサネット)。
- 高重量(100kg超)の機器設置の適応性。
- 冷却システム:
- 液冷サーバーに適した圧力・流量の制御。
- 配管設計(カップリングや配分均等化)。
- モニタリングと制御:
- DLC用の新しいプロトコルと管理方法の導入。
- SMB市場向けのコンサルティングや簡易導入ソリューションの提供。
4. 小規模・中規模企業向けの課題
- DLCソリューションの複雑性から、自社内での導入が難しい場合が多い。
- OCP(Open Compute Project)の標準を基盤に、簡易導入可能な「統合型ソリューション」の提供が鍵。
結論と提案
- コミュニティの構築:
- DLC対応ラックソリューションを普及させるためのサブグループを形成。
- 小規模企業向けの導入支援や仕様策定を強化。
- 次世代ラックの展望:
- DLC対応の高電力・高冷却ソリューションが、将来のデータセンターに不可欠となる。
- SMB市場向けに容易に適応可能な「パッケージソリューション」が求められる。