Metaが開発した「Open Rack V3 High Power Rack (HPR)」とそのエコシステムについて解説します。HPRは、AIが牽引する電力需要の高まりに対応するため、従来のOpen Rack V3 (ORv3) を改良し、高出力設計を実現したものです。以下に主な特徴と進化点をまとめます。
HPRの主な改良点
ラック構造の改良
- ラックの深さ: ORv3より6インチ深い構造。
- バスバー容量: 最低18kWから最低92kWへ大幅に向上。
- 安定性の向上: バランスウェイトを追加して重量増加による不安定性を解消。
電力システムの強化
- パワーシェルフ: 従来の3kWから5.5kWのモジュールを採用し、最大33kWの出力を実現。
- ピークパワー: 大容量のコンデンサを搭載し、一時的な高負荷(136%や160%のピークパワー)に対応。
- バックアップ電源ユニット(BBU): 最大90秒のフルロードバックアップと4分間の部分バックアップが可能。
- 配線: 北米では20Aから30A ACウィップへ変更し、ヨーロッパでは従来の32Aプラグを維持。
接地と安全性の改善
- 接地ポイントの変更: バスバー側に接地ポイントを移動し、過電流のリスクを軽減。
- 新しいグラウンドクリップ設計: ITギアとの接続部材を適切に選定し、信頼性を向上。
冷却と拡張性
- 冷却効率の維持: ラック間のシーリング効率を保ちつつ、冷却用マニフォールドの柔軟性を向上。
- 将来の高容量冷却への対応: 深いマニフォールドをサポートする設計。
テスト結果と性能
HPRは厳しい性能テストを実施し、以下の結果が得られています。
- 最大出力: 155kWの電力供給を達成。
- バスバー設計: 厚みを増し、15kgから80kgへの重量増加で高出力に対応。
- 熱制御: バスバー温度上昇を30℃に抑え、3段階の温度制限(90℃、110℃、120℃)を設定。
エコシステムと開発への参加
MetaはHPR設計に多くのパートナー企業と協力し、ケーブル、バスバー、ラックの設計を最適化しました。また、Open Compute Project (OCP)のWikiでスペックを公開予定で、コミュニティからの参加も歓迎しています。
結論
HPRは、AI主導の需要に対応するための革新的な電力設計を提供し、スケーラビリティ、効率性、安全性を大幅に向上させています。この取り組みは、今後の高負荷環境におけるデータセンター設計の新たな基準を築くことを目的としています。