Metaらの液冷コネクターBMQC試験、互換性と流量差の条件

白い背景の上で、細い切れ目を挟んで両端が向き合う淡青色の輪。

液冷用のコネクターを複数のメーカーから調達できれば、機器やラックの設計で選べる部品が増えます。ただし、形が合うだけで相互運用できるとは限りません。接続時の力、流れやすさ、液漏れ、繰り返し接続した後の状態まで、組み合わせて確かめる必要があります。

ORv3向けBMQC(Blind Mate Quick Connector)について、2024年のOCP Global SummitではMeta、SafeWay、Parkerの登壇者が、弁の試験とラック全体の流量試験を報告しました。この記事では「どこまで試験で確かめられ、手元の設計へ何をそのまま移せないのか」を読み解きます。接続構造とホース設計はBMQCの仕組みを扱う記事を参照してください。[1][4]

簡単にまとめると?

  • 相互運用性は、異なる供給元のプラグとソケットを組み合わせ、流量・接続力・漏れなどの条件を確かめる課題です。
  • 12台のシャーシを載せたラックで報告された流量差は8〜9%で、最大値と最小値の差を平均値で割った指標です。
  • 最大流量9 L/min、作動圧力50 PSIG、温度条件は別々の仕様であり、全構成で同じ流量や冷却能力を保証する数字ではありません。

相互運用試験は「つながるか」の先まで見る

BMQCは、ラックのマニホールドにあるソケットと、機器の背面にあるプラグを接続します。供給元を混ぜて使うには、両者が接続できることに加え、接続した状態での性能が要件に収まる必要があります。

2024年6月のBMQC仕様書は、同じ供給元同士と異なる供給元同士の試験を定め、対象となる承認済み供給元との相互運用試験を要求しています。圧力損失試験では、各組み合わせを少なくとも3サンプルで調べる要件があり、流す向きもプラグからソケット、ソケットからプラグの両方を確認します。したがって、ある一組が接続できたという観察だけでは、相互運用性の確認を代替できません。[2, pp.54・58–59]

発表スライドは弁とラックの試験が合格したと報告していますが、これは開発チームによる当時の試験報告です。新しい供給元や異なる部品を追加すれば、組み合わせの試験範囲も広げる必要があります。仕様書に試験要件があることと、市場の全製品がその試験に合格していることは区別して読みます。[1, pp.9・15][2, pp.58–59]

弁の圧力損失と、ラック内の流量差は別の指標

弁を通るときには圧力が下がります。この圧力損失は、決めた流量を流すためにポンプ側が受け持つ負荷の一部です。発表では、流量と接続距離を変えて弁の性能を評価し、目標を満たしたと報告しています。仕様書は流量ごとの圧力損失の上下限を定め、試験液には40℃のDowfrost LC25(25%プロピレングリコール水溶液)を指定しています。[1, p.10][2, pp.53–54]

BMQCの流量を横軸L/min、圧力損失を縦軸psiで示した原図。Avg、Upper、Lowerの3曲線と数値表があり、流量が増すほど圧力損失が大きくなる。
図1:発表で示されたBMQCの流量と圧力損失の関係。Glenn Charest、Nick Goenner、Timothy Marquis「OCP ORv3 Blind Mate Liquid Cooling (BMQC) Interfaces Updates」、OCP Global Summit 2024、p.10のグラフを抜粋。出典[1]

図1の横軸は流量、縦軸は圧力損失です。流量を増やすほど圧力損失が大きくなること、上下限とともに読む必要があることが分かります。この図を「冷却能力が±10%以内」や「ラック内のどの機器にも同じ流量が流れる」という保証へ置き換えることはできません。

発表はさらに、コールドプレート側の回路が弁よりも大きな圧力損失を担う設計なら、弁の小さな性能差を回路全体で受け止めやすいと説明しています。弁だけを低抵抗化すればラックの流量分配まで決まる、という話ではなく、各機器の冷却回路を含めた抵抗の配分が関係します。[1, p.10]

12シャーシで8〜9%だった結果をどう使うか

ラック全体の試験では、BMQC一組あたり最大9 L/minを目指し、供給元の混在、シャーシ構成、ラック配管の上部接続と下部接続が、流量のばらつきへ与える影響を調べています。発表スライドの指標は、(最大流量 − 最小流量)÷ 平均流量です。12台のシャーシを載せた構成では8〜9%となり、発表者はラック段階の目標内だったとしています。[1, p.14]

これは、各流量が平均からそれぞれ±8〜9%ずれた、という意味ではありません。たとえば、平均流量を仮に8 L/min、上の指標を9%とすると、最大値と最小値の差は0.72 L/minになります。この数値例は指標の読み方を示す計算で、試験で測定された流量そのものではありません。

同じスライドでは、シャーシ数を減らすとばらつきがやや小さく、上部・下部の配管接続では近い流量差だったと報告しています。ただし、異なるマニホールド、ホース長、機器内の冷却回路でも同じ値になるとはいえません。採用時には、自分のラック構成で必要な流量が各機器へ届くかを確かめるための比較材料になります。[1, p.14]

9 L/min・50 PSIG・温度条件を混ぜない

性能表の数字は、それぞれ異なる条件を示しています。発表の要約表と仕様書を対応させると、次のように整理できます。[1, pp.11–12][2, pp.53・59–60]

項目資料に記載された値読み方
最大流量9 L/minBMQCの仕様上の値。ラック全体の流量でも、機器の冷却能力でもない
最大作動圧力50 PSIG(約3.45 bar)大気圧を基準とした圧力。圧力損失の値とは区別する
静水圧試験150 PSIG仕様書ではこの圧力まで加える試験条件。常用圧力や破裂圧力ではない
弁の動作温度−5〜60℃、液あり(PG25)発表の弁の要約表が示す条件
弁の非動作温度−40〜70℃、液なし運転時の温度範囲として使わない

150 PSIGについては、発表スライドの表に「Burst」という表記がありますが、仕様書の試験11.1-4・11.1-5はその圧力まで加える静水圧試験であり、破裂まで試験するものではないと明記しています。設計上の意味は、試験手順まで確認して読む必要があります。また、ASTM B117の記載は塩水噴霧試験の参照であり、それだけで任意の塩害環境に対する寿命を保証するものではありません。[2, pp.60・66]

温度も部品ごとに確認します。マニホールド仕様の2024年4月版は、動作条件を5〜60℃、非動作条件を−40〜70℃・液なしとしています。弁の温度表をそのままラック全体の動作保証へ広げることはできません。[3, p.30]

今回の報告から得られるのは、相互運用を目指した試験の枠組みと、特定のラック構成で得られた流量分配の結果です。部品の型式、組み合わせ、配管、試験液、温度、接続距離をそろえて比較すると、数値が自分の設計にどこまで使えるかを判断しやすくなります。

発表企業の事業全体については、cyclewaveのMetaの企業解説も参照できます。

参考資料

  1. Glenn Charest、Nick Goenner、Timothy Marquis「OCP ORv3 Blind Mate Liquid Cooling (BMQC) Interfaces Updates」、OCP Global Summit 2024。発表スライド/元発表動画。
  2. Open Compute Project「Open Rack V3 Blind Mate Quick Connector Specification (BMQC)」、Revision 1.0、2024年6月4日。仕様書。
  3. Open Compute Project「Open Rack V3 Blind Mate Manifold Specification」、2024年4月5日版。仕様書。
  4. Open Compute Project「2024 OCP Global Summit」、Rack & Powerセッション一覧。公式プログラム。