はじめに
データセンターの電力供給の進化はAIと機械学習(ML)の需要増加により、かつてないスピードで進んでいます。本記事では、次世代ORv3(Open Rack v3)PSU(電源ユニット)および電力シェルフの要件と設計について、YouTubeプレゼンテーションの内容を基に詳しく解説します。データセンターが直面する課題をどのように解決しているかを見ていきましょう。
ORv3 PSUの進化
電力と効率の大幅な向上
ORv3 PSUは過去のモデルに比べて大幅な性能向上を遂げています:
世代 | 最大出力電力 | 電流値 (A) | サイズ増加率 | 電力増加率 |
---|---|---|---|---|
ORv3 Gen 1 | 3000 W | 60 A | – | – |
ORv3 Gen 2 (HPR) | 5500 W | 112 A | +23% | +83% |
ORv3 Gen 3 (HPR V2) | 12000 W | 244 A | +11% | +118% |
特に注目すべき点は、サイズのわずかな増加に対して電力が大幅に向上していることです。これにより、同じスペースでより多くの電力を供給できるようになり、データセンターの効率が飛躍的に向上しました。
動的負荷への対応
GPUやAIワークロードでは、大量の電力が瞬間的に必要になることがあります。ORv3 PSUは、この「パルス負荷」に対応するために以下の機能を実装しています:
- パルス負荷の吸収
- 最大136%の負荷を50ミリ秒間維持可能。
- 入力電流の変動を最小限に抑えるためのピークシェービング機能を搭載。
- 効率的な電力管理
- 277Vでのピーク効率は97.7%を記録。
- 高負荷時でも効率96.5%以上を維持。
- 入力電流の整流性改善
- 歪み率(THD)が2.91%まで低下。
- 入力電流波形をほぼ正弦波に近づける設計。
電力シェルフとモジュールの設計
ORv3システムでは、電力シェルフが重要な役割を果たします:
- 設計概要
1OUまたは2OUシェルフに最大6つの12kW PSUを搭載可能。合計で33kWの電力供給が可能。 - 効率的なモニタリング
専用の電力管理モジュール(PMM)がリアルタイムでデータを収集し、上位システムへ送信。 - 高電力化のロードマップ
現在は33kWが主流ですが、将来的には72kWや1MWラックへの対応が検討されています。
今後の展望
液冷技術の採用
高出力PSUでは熱管理が重要な課題です。現在の空冷技術では100kW程度まで対応可能とされていますが、それ以上の電力需要に対しては液冷技術の採用が必要になる見込みです。
単相から三相電源への移行
現状では単相電源が主流ですが、電力需要が20kWを超える場合には三相電源の導入が不可欠となります。インフラ整備の時間を考慮しつつ、長期的には三相システムへの移行が計画されています。
まとめ
次世代ORv3 PSUと電力シェルフは、AIやMLの増加する電力需要を支えるために、より高効率で柔軟なソリューションを提供しています。効率性、拡張性、そして信頼性を兼ね備えたこれらの技術は、今後のデータセンター設計の基盤となるでしょう。