レイノルズ数、管を細くすると流れが穏やかになるとは限らない

太さの異なる淡色の管口を通る透けた流線を上下に並べた抽象アート。管径と流れの条件の違いを表す

液体を流す管を細くすれば、流れは穏やかになるのでしょうか。小さな流路では粘性の影響が目立ちやすいものの、管径だけでは決まりません。同じ速さで流すのか、同じ量を毎分送り込むのかによって、細くしたときの変化は逆になります。その違いを整理する道具が、レイノルズ数(Reynolds number)です。

簡単にまとめると?

  • レイノルズ数は、流れの慣性と粘性の相対的な強さを比べる数です。円管では、断面の平均流速、管の内径、液体の動粘度から求めます。
  • 平均流速を同じにして管径を10分の1にすると、レイノルズ数も10分の1になります。一方、毎分の流量を同じに保つと、平均流速が100倍になり、レイノルズ数は10倍になります。
  • 小さい管という情報だけで層流や混合の良さは判断できません。何を一定にした比較か、液体の性質や入口・形状の条件まで確かめることが大切です。

慣性と粘性を、同じ物差しで比べる

慣性は、流れている液体の運動が保たれようとする性質です。粘性は、隣り合う場所の流速に差があるとき、その差をならすように力が働く性質です。レイノルズ数は、この2つの効果の大きさを代表的な長さと速さで見積もり、その比を取ったものです。

液体で満たされた円管を考え、内径をD、断面の平均流速をU、密度をρ、粘度をμとすると、Re=ρUD/μです。粘度を密度で割った量ν=μ/ρを「動粘度」と呼び、これを使えばRe=UD/νと書けます。Uをm/s、Dをm、νをm²/sにそろえると単位が消えるので、Reは単位を持たない数です。[1][3]

Reが小さくなるほど、同じ比較の中では慣性に対する粘性の影響が強まります。ただし、Reが大きければ粘性がなくなるわけではありません。また、低いReから高いReへの変化を、そのまま「層流から乱流へ変わった」と読み替えることもできません。

「流速が同じ」と「流量が同じ」は違う

流速は、液体が進む速さです。流量Qは、ある断面を単位時間に通り抜ける体積で、m³/sやmL/minで表します。断面積をAとするとQ=AUです。ここでUを断面の平均流速とすれば、中心と壁際で速さが違っていても、この関係を使えます。[2]

円管の断面積はA=πD²/4です。管径を10分の1にすると、断面積は100分の1になります。同じ流量を通すには、その小さな断面を100倍の平均流速で通過させる必要があります。

この関係をRe=UD/νに代入すると、Re=4Q/(πνD)になります。Uを固定した式ではReはDに比例しますが、Qを固定した式ではDに反比例します。どちらも同じ定義で、変えてよい量と一定にする量が違うだけです。

管径を10分の1にする、2通りの比較

動粘度をν=1.0×10−6m²/sと仮定し、内径1mmの管と0.1mmの管を比べます。特定の液体を測定した結果ではなく、条件の違いを示すための数値例です。密度と粘度が一定の、圧縮による体積変化を無視できるニュートン流体を対象とします。

比較条件 内径D 平均流速U 流量Q Re
平均流速を固定 1mm 0.010m/s 約0.471mL/min 10
平均流速を固定 0.1mm 0.010m/s 約0.00471mL/min 1
流量を固定 1mm 約0.0212m/s 1.00mL/min 約21.2
流量を固定 0.1mm 約2.12m/s 1.00mL/min 約212

上の2行では、管径を小さくした分だけReが下がりますが、送り出せる体積も毎分100分の1になります。下の2行では、毎分1mLという処理量を保ったため、平均流速が大きくなり、Reは上がります。管の小型化と処理量の維持を同時に考えるとき、この違いが効いてきます。

内径を1ミリメートルから0.1ミリメートルへ縮める比較。平均流速を0.010メートル毎秒に固定するとレイノルズ数は10から1へ低下し、流量を毎分1ミリリットルに固定すると約21.2から212へ増加する。
動粘度を1.0×10⁻⁶m²/sとした独自計算。上下はそれぞれ別の運転条件で、同じポンプ圧力での比較ではない。数字の増減は乱流への遷移を表していない。

たとえば、小型の流路へ同じ毎分流量を送る設計なら、「管が細くなったからReも下がる」とは見込めません。逆に、平均流速を据え置く比較では、Reが下がったことと引き換えに処理量がどれだけ減ったかを併記すると、装置の利点と制約を読み違えにくくなります。

同じポンプなら、何が一定になるのか

実際の装置では、管を交換しても同じQが自動的に保たれるとは限りません。流量は管の抵抗と圧力差、ポンプや制御の特性で決まるためです。上の「流量を固定」は、必要な圧力を供給してQを保てるという比較条件を置いています。[3]

したがって、比較の前に「流量を制御している」「平均流速を合わせた」「圧力差を同じにした」のどれに当たるかを確認します。圧力差を固定する場合は、その条件から変化後のQを求め、改めてReを計算する必要があります。上の表は圧力損失やポンプの必要能力を計算したものではありません。

レイノルズ数だけで決めないこと

層流は流れが整った層状になる状態、乱流は速度が不規則に変動し渦を伴う状態です。Reはこの流れ方を整理する重要な指標ですが、遷移には入口の乱れ、管の形状や壁の状態なども関係します。ある形状に使う境界値を、別の流路へそのまま移すことはできません。本稿の数値例はReの増減を示しており、乱流を実証する例ではありません。[3]

比較する資料同士で、代表長さや流速の定義が同じかも確認します。円管の内径と断面平均流速で求めたReに、別の長さや中心の最大流速で求めたReを混ぜると、同じ値でも意味がずれます。温度で粘度が変わる場合には、動粘度もその条件に合わせる必要があります。

また、レイノルズ数が比べるのは慣性と粘性です。溶質の濃度がどれほど均一かは、分子拡散や滞在時間なども含む別の問題です。微細な流路を選ぶ際は、管径、何を一定にするか、動粘度、必要な処理量を一組にして読み、その後に流れ方や混合の評価へ進むと、判断の筋道が明確になります。

出典

  • [1] NASA Glenn Research Center, Reynolds Number。慣性と粘性の比、動粘度、無次元化を参照。
  • [2] OpenStax, University Physics Volume 1, 14.5 Fluid Dynamics。式14.13、流量と断面積・流速の関係を参照。
  • [3] OpenStax, University Physics Volume 1, 14.7 Viscosity and Turbulence。粘性、管内の速度分布、圧力差と流量、レイノルズ数の説明を参照。数値例と比較図は本稿で設定した条件による独自計算。