平均光子数だけでは分からない光の揺らぎ QuTiPの二次相関で比較する

淡い青と白の粒が、等間隔の並びから不規則な散らばりと小さなまとまりへ変化する抽象画。

ある光のモードに含まれる光子数の平均が2だったとします。毎回必ず2個なのか、1個や3個などがばらついて出るのか、ときには多く、ときにはほとんど出ないのか。平均だけでは、この違いは見えません。

光子の数の揺らぎを比較する手掛かりが、二次相関g(2)です。ここではQuTiPの公式資料と5.1.1の固定実装を読み、時間差がゼロのg(2)(0)を中心に、同じ平均を持つ光がどう違うのかを整理します。装置の実測ではなく、単一モードを仮定した量子状態と独立計算の比較です。[1][2]

簡単にまとめると?

  • g(2)(0)は平均光子数だけでなく、異なる2個の光子からなる組の平均を見ます。同じ平均でも、光子数の揺らぎ方によって値が変わります。
  • 平均2の理想例では、2光子のFock状態が0.5、コヒーレント状態が1、単一モードの熱状態が2です。ただし、この一つの値だけで状態全体は決まりません。
  • ゼロでない平均、対象モード、時刻、規格化の分母をそろえます。時間差をつけた相関では、定常な場合と平均が変化する場合を区別します。

平均の次に、光子の「組」を数える

光のモードとは、空間的な形や周波数などで区別する場の一つの自由度です。ここでは一つのモードだけを扱い、同じ量子状態を用意して光子数を測るときの分布を考えます。光子数演算子をn=a†aと書き、aは光子を一つ減らす消滅演算子、a†は増やす生成演算子です。山括弧〈 〉は、その状態での平均を表します。

時間差ゼロの二次相関は、平均光子数〈n〉がゼロでないとき、次の形になります。[1][2]

g(2)(0)=〈a†a†aa〉 / 〈a†a〉2=〈n(n−1)〉 / 〈n〉2

分子が〈n2〉ではない点が大切です。n個の中から最初の光子を一つ選ぶ方法はn通り、同じ光子を除いて次を選ぶ方法はn−1通りなので、順序を区別した組はn(n−1)通りです。これは2個の組に関わる量であり、光子を自分自身と組にする分は数えていません。量子演算子でも、aaが|n⟩へ作用する係数の二乗がn(n−1)になります。

たとえば毎回2個なら、組の数は常に2です。一方、平均が2になるように光子数がばらつくと、多く出る回の組の数は二乗に近い速さで増えます。平均光子数をそろえても、分子にはその違いが残ります。g(2)(0)は光子数そのものではなく、この平均で規格化した無次元の指標です。

平均2の三つの状態を比べる

違いを具体的にするため、理想的な三つの状態を比べます。Fock状態|2⟩は、光子数が必ず2となる状態です。コヒーレント状態では光子数がポアソン分布に従い、平均2の場合の分散も2になります。単一モードの熱状態では幾何分布となり、同じ平均2でも分散は6です。分散は、平均からのずれを二乗して平均した、ばらつきの大きさです。[3]

光子数がnとなる確率をP(n)とすると、今回のコヒーレント状態はP(n)=e−22n/n!、熱状態はP(n)=(1/3)(2/3)nです。これらの分布から平均と組の数を計算すると、次のようになります。

単一モード・平均光子数2の独自計算。無限の光子数空間における理論値で、実験値ではありません。
状態 〈n〉 分散 〈n(n−1)〉 g(2)(0)
Fock状態 |2⟩ 2 0 2 0.5
コヒーレント状態
|α|2=2
2 2 4 1
単一モードの熱状態 2 6 8 2

表は確率分布の式から導き、光子数基底の消滅演算子を別に組み立てた行列計算でも照合しました。残す基底を10、20、40、80状態へ増やして確認し、80状態でのg(2)(0)の理論値との差は、三例とも1.3×10−11以下でした。QuTiP本体や光源を動かした結果ではありません。

熱状態は光子数の大きい側にも確率が残るため、平均だけでなく二次の量も収束しているかを見ます。今回の数値照合では、解析式の係数を有限範囲へ切り出して正規化しました。QuTiPのcoherentには有限空間の変位演算子を使う方法もあるため、同じNという表示だけで構成法まで同一とはしません。[3]

g(2)(0)が1より小さい、または大きいと何が分かるか

分散Var(n)=〈n2〉−〈n〉2を使うと、同じ式を次のように書き直せます。

g(2)(0)=1+[Var(n)−〈n〉] / 〈n〉2

したがって、この単一モードの条件でg(2)(0)が1より小さければ、分散はポアソン分布の基準である平均光子数より小さくなります。1より大きければ、その基準より大きい揺らぎです。光子がまとまって現れる傾向を論じる際の手掛かりになりますが、時間をずらしたときの相関の形は、これだけでは分かりません。

1未満というだけで「必ず1個ずつ出る」とは言えません。表のFock状態|2⟩はg(2)(0)=0.5ですが、測れば必ず2個です。一般に、光子数mが正の整数で固定されたFock状態ではg(2)(0)=1−1/mとなります。単一光子の理想状態|1⟩なら0ですが、0.5を見てそれと同じだと扱うことはできません。

逆に、g(2)(0)=1だから状態が純粋なコヒーレント状態だとも断定できません。光子数分布が同じポアソン分布でも、異なる光子数成分の位相の関係を平均して失わせた混合状態を作れます。光子数の平均と二次相関は同じでも、密度行列の非対角成分は違います。今回の独立計算でも、平均と二次相関が同じでも密度行列は異なることを確認しました。g(2)(0)は有用な比較軸ですが、状態全体を復元する情報ではありません。

時間差をつけるなら、分母も時刻に合わせる

ゼロ遅延の比較は、ある時点の状態の光子数分布から行えます。ここまでの表に、時間に依存しない定常状態という仮定は必要ありません。一方、時間差τをつけてg(2)(τ)を求めるときは、その間に状態がどう変わるかというモデルが必要です。

QuTiP 5.1.1の固定実装coherence_function_g2は、初期時刻を0として、非規格化のG(2)(τ)と、規格化したg(2)(τ)の両方を返します。初期状態を指定する経路では、平均光子数を時間に沿って求め、分母にn̄(0)n̄(τ)を使います。ここでn̄は平均光子数です。[2]

g(2)(τ)=〈a†(0)a†(τ)a(τ)a(0)〉 / [n̄(0)n̄(τ)]

定常な状態で平均が一定なら、この分母はn̄2になります。減衰中などで平均が変わる場合に、初期平均の二乗で割り続けると、別の量を比較することになります。公式ガイドの説明式と、初期状態を時間発展させる例の分母を読むときも、この条件を分ける必要があります。[1][2]

同関数でstate0=Noneを指定すると定常状態を求めて使いますが、文書に記載された条件は、時間に依存しないハミルトニアンと崩壊演算子があることです。遅延相関の計算には量子回帰定理を用いるため、時間発展のモデルとその適用条件を引き継ぎます。任意の記憶効果を持つ環境で、同じ手続きを使えばよいという意味ではありません。

公式例の三つの曲線は、指定した熱浴との相互作用の下での時間変化です。g(2)(0)が0.5、1、2であることから、どの光源でも同じ時間尺度で同じ曲線へ進むとは言えません。本稿の表はゼロ遅延の数値であり、遅延曲線を独立に再計算したものではありません。

比較の前に、平均・モード・計算条件をそろえる

まず、比較する対象が同じモードなのか、複数の周波数や空間モードをまとめたものなのかを確認します。表の熱状態の値2は単一モードの理想例であり、複数モードをまとめた測定へそのまま当てはめる数ではありません。

次に、平均光子数がゼロでないかを確認します。真空では分子も分母もゼロで、規格化したg(2)(0)は定義できません。平均が非常に小さい計算でも、比だけを見る前に、分子G(2)と平均の値、数値精度を確認したいところです。QuTiPが両方の相関値を返すことは、この切り分けに役立ちます。

実験と比較するなら、検出する時間幅や周波数帯、背景光、検出器の応答などを含む測定条件と、モデルが表す量を対応させます。理想状態の分散が大きいことと、有限回の測定からg(2)を推定した値の誤差が大きいことも別です。後者には標本数と推定手順の情報が必要です。

平均光子数に加えて「組の平均」を選ぶと、見えていなかった揺らぎが比較できるようになります。そのうえで、数が固定されているのか、位相の関係まで知りたいのか、時間をまたぐ変化を知りたいのかを分ける。g(2)が答える問いと、追加の観測量が必要な問いを切り分けることが、計算や測定の使い道につながります。

参考資料

  1. QuTiP 5.1 Documentation, Two-time correlation functions。二時刻相関、定常性、二次相関の定義と熱浴下の計算例。
  2. QuTiP 5.1.1, correlation.pyの固定実装。coherence_function_g2の入力条件、平均の計算、G2とg2の規格化。最新版を示すものではありません。
  3. QuTiP 5.1.1, states.pyの固定実装。coherent・fock_dm・thermal_dmの定義と有限空間での構成法。本文の数表と同じ光子数分布を持つ状態の比較は、Quantum Seaによる独立の解析・行列計算です。