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  • アッベ誤差、測る位置が離れると小さな傾きが長さのずれになる

    アッベ誤差、測る位置が離れると小さな傾きが長さのずれになる

    位置を細かく読めるセンサーを付けたのに、測りたい場所では少し違う値になる。精密な位置決めでは、センサーの目盛りだけでなく、どこを測っているかが効いてきます。移動する台がわずかに傾くと、離れた二つの場所は同じだけ動くとは限らないためです。

    このように、測定の軸と測りたい長さの軸が離れていることで、角度の変化が長さの測定誤差に結び付くのがアッベ誤差(Abbe error)です。距離と角度を一緒に見ると、表示の桁数を増やすだけでは解決できない理由が分かります。

    簡単にまとめると?

    • 測る軸と測りたい軸が離れていると、小さな傾きが長さのずれになります。
    • 角度が小さい範囲では、ずれはおおよそ「軸の間隔×角度(ラジアン)」です。100mmと10µradなら約1µmになります。
    • 測定位置を近づける、傾きを小さくする、角度も測って補正する、といった対策を幾何と残る誤差から選びます。

    二つの高さで、同じ面の位置を読む

    横へ動く台に、ほぼ垂直な面があると考えます。その面の横方向の位置を、上と下の二本の平行な線に沿って読むとしましょう。二本の間隔をh、面の垂直からの傾きをθとします。

    面が垂直なら、上下の読みは同じです。面が傾けば、上の線と交わる位置と下の線と交わる位置に横方向の差ができます。この図の幾何では、その大きさはh tanθです。θが小さければtanθはθに近いので、ずれ≈hθと見積もれます。角度は度ではなくラジアンで入れます。

    上下の平行な測定線の間隔hと、垂直から傾いた面を示す図。二つの交点の横方向の差はh tanθとなる。小角の計算例では、間隔100mm、傾き10マイクロラジアンで約1マイクロメートル、間隔10mmでは約0.1マイクロメートル。
    上下の線は平行、hは線の間隔です。傾きと横ずれは説明のため大きく描いています。図と数値は、この幾何から作った説明用の計算で、装置の実測値ではありません。

    実際の装置では、上側に測りたい点があり、下側に位置センサーが置かれることがあります。センサー側の位置を正しく読めても、その値を離れた場所の位置として使うと、台の傾きによる差が残ります。測る軸を対象の軸へ近づける、できれば同じ線上に置く、というアッベの原理は、この差が生まれる腕の長さを小さくする考え方です。

    100mmの隔たりと、10µradの傾き

    間隔hを100mm、傾きを10µradとします。10µradは10×10−6radで、約0.000573度です。小角近似を使えば、100mm×10×10−6=0.001mm、つまり約1µmのずれになります。h tanθで計算しても、ここで示す桁では同じです。

    同じ傾きでも、間隔を10mmへ縮めれば約0.1µmです。一方、間隔を100mmのままにして、傾きを2µradへ抑えれば約0.2µmになります。センサーの表示が0.01µm刻みであっても、この幾何から生じる1µmの差が自動的に小さくなるわけではありません。

    この成分に0.2µmまでを割り当てたいなら、100mmの間隔では角度をおおよそ2µrad以内へ、10µradの角度変化が残るなら間隔をおおよそ20mm以内へ、という設計上の目安も逆算できます。ただし、これはアッベ誤差だけの配分です。温度変化やセンサー自身の誤差まで含めた総合精度の保証にはなりません。

    ゼロ合わせ後は、傾きの変化が効く

    ある位置でゼロを合わせる測り方では、そのとき既にある一定の差は基準に含まれます。図と同じ一定間隔hの幾何で、基準位置の角度をθ1、移動後をθ2とすれば、残る差はh(tanθ2−tanθ1)です。小角ではh(θ2−θ1)となります。

    例えば100mmの間隔で、角度が5µradから15µradへ変われば、差は約1µmです。どちらの位置でも5µradのままなら、このモデルでの移動量の差はゼロになります。したがって、一度の角度調整や一か所のゼロ合わせだけで、移動範囲全体の誤差を判断することはできません。

    また、hが一定のモデルで誤差を決めるのは間隔と角度変化であり、移動距離そのものではありません。ただし、実機では長く動かす途中で傾きも変わることがあります。「距離に直接比例しない」ことと「長い移動でも問題がない」ことは別です。

    軸の間隔と、軸の向きは別々に点検する

    アッベ誤差と混同しやすいのがコサイン誤差です。こちらは、測りたい移動方向に対して測定方向が傾いている場合の、投影のずれです。長さLの移動を角度φだけ傾いた軸へ投影するモデルなら、読みはL cosφ、長さとの差はL(1−cosφ)となり、小角ではLφ2/2です。

    この投影のモデルと、軸の間隔hに角度変化を掛けるモデルでは、使う長さも角度の意味も違います。hを小さくしてアッベ誤差を減らしても、測定方向の合わせ込みは別に必要です。どちらが大きいかは、実際の配置と数値を入れて比べます。

    装置を検討するときは、まず「値を読み取る線」と「位置を知りたい線」を図に描き、間隔を確かめます。離せない配置なら、移動中の傾きを小さくする機構や、角度を併せて測る補正が候補になります。補正には、その角度が対象の場所と時刻を表していること、間隔や変形の見積もりが合っていることも必要です。細かい目盛りを選ぶ前に、測りたい場所まで測定の幾何をたどることが、精度を考える出発点になります。

    出典