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  • AFMのナノ粒子計測、横幅と高さをどう読み分けるか

    AFMのナノ粒子計測、横幅と高さをどう読み分けるか

    同じナノ粒子をAFMで測ったのに、画像の横幅と断面の高さが一致しない。そんな結果を見たとき、すぐに装置の誤差や粒子の変形と決めてよいのでしょうか。まず分けたいのは、横方向の輪郭を測った値と、基板からの高さを測った値です。

    原子間力顕微鏡(AFM)は、細い探針で表面をたどり、その凹凸を調べる装置です。ただし、探針にも大きさと形があります。NISTとNCLの金ナノ粒子測定プロトコルを読むと、横幅に探針の形が入り込むことと、高さを粒径として扱える条件が、別の問題だと分かります。[1]

    簡単にまとめると?

    • AFMの横方向の輪郭には探針の形が影響します。画像で広く見えることだけでは、粒子そのものが大きいとは判断できません。
    • 粒子の高さは頂点と周囲の基板の差から求めます。高さを直径と読むには、球形や変形の有無も確かめる必要があります。
    • 測定を比べるときは、探針、走査条件、基板、画像処理、校正をそろえて読みます。柔らかい粒子では、測る力自体が形を変える場合があります。

    横幅には、粒子だけでなく探針の形も入る

    AFMの探針は、小さな片持ちばりであるカンチレバーの先に付いています。探針と試料の間に働く力でカンチレバーの状態が変わり、その変化を検出します。間欠接触モードでは、カンチレバーを振動させ、設定した振幅を保つように上下位置を調整しながら表面を走査します。その位置の変化を並べることで、表面の高さの分布が得られます。[1]

    ここで、探針の先が無限に細い点なら、粒子の輪郭に沿ってどこまでも近づけるはずです。実際の探針は丸みや斜面を持つため、粒子の側面では、先端の中心が側面の真上へ来る前に探針の一部が触れます。記録される横方向の輪郭には、粒子と探針の両方の形が含まれるのです。横に広がった像を、そのまま粒子の直径と読むことはできません。これはプロトコルが述べる、探針と試料の形状による像の広がりを、接触の位置から説明したものです。[1]

    一方、孤立した粒子の頂点と十分に平らな基板へ探針が届き、測定で粒子の形を変えない場合、高さはこの横方向の広がりとは分けて測れます。「横幅と高さが違う」という結果だけでは、どちらか一方が間違っているとは限りません。

    高さを「粒径」と呼べるのは、どんなときか

    プロトコルの高さ測定は、粒子の頂点の値から、粒子の両側にある基板の平均高さを引く方法です。基板の段差に乗った粒子や、隣の粒子と重なった部分まで同じ方法で読めるわけではありません。断面を複数の位置で確認し、孤立した粒子が平らな場所にあるかを確かめます。[1]

    公称60 nmの金ナノ粒子を示すAと公称30 nmを示すB。それぞれ左にAFM像、右に線に沿った断面があり、基板のbaselineと粒子頂点のpeak heightを示す。
    図1:金ナノ粒子のAFM像と断面。Aは公称60 nm、Bは公称30 nmの試料で、粒子の高さは頂点と両側の基板の平均値との差から求めます。Grobelnyほか、NIST–NCL Joint Assay Protocol PCC-6、Version 1.1(2009年)、p.14、Figure 3。原資料。Republished courtesy of the National Institute of Standards and Technology. 図を拡大する

    図1では、左の画像の線に沿った断面が右に示されています。山の頂点(peak height)と、粒子の両側の基板(baseline)の差を読みます。Aの60 nm、Bの30 nmは公称値であり、断面の頂点がその数字と一致することを示すものではありません。[1]

    たとえば仮に、基板からの高さが20 nm、画像上の横幅が45 nmだったとします。この二つを平均して「粒径32.5 nm」とする根拠はありません。横幅には探針の形が関わり、高さには基板の決め方や粒子の置かれ方が関わるためです。この数値は考え方を示す例で、原資料の測定結果ではありません。

    粒子を球とみなせ、基板上でつぶれたり積み重なったりしていなければ、高さを直径として扱えます。反対に、薄い板状の粒子や平らにつぶれた粒子では、高さはその姿勢での厚さです。高さから得た粒径は、形状についての前提を含む値として読む必要があります。プロトコル自体も、球形を仮定した場合に高さが直径に対応すると説明しています。[1]

    鮮明な画像でも、測定の基準は別に確かめる

    高さの基準になるのは、粒子の周囲の表面です。基板の粗さが粒子の大きさに近いと、どこをゼロにするかが曖昧になります。乾燥後に残った有機物の層も、基板や粒子の表面を変える要因です。NIST–NCLの手順は、金ナノ粒子を平らな基板へ分散させ、凝集や残留物を抑える準備を測定の一部に含めています。[1]

    画像の傾きを取り除く平坦化処理にも注意が要ります。粒子を含んだまま基準面を計算すると、粒子の山まで背景の傾きとして扱ってしまうことがあります。プロトコルは、粒子の部分を除外して基板側を平坦化し、その後に高さを測る手順を示しています。見た目を整える処理が、測りたい量を変えないかを確認するためです。[1]

    さらに、画像の画素数と観察範囲も分けて読みます。資料の例では、一辺10 µmを512画素で記録すると、1画素は約19.5 nmです。画像を拡大表示しても、もとの測定点の間隔は細かくなりません。ただし、この横方向の間隔を、そのまま高さ方向の分解能と呼ぶこともできません。横と縦では、確認する性能が違います。[1]

    高さ軸には、測りたい粒子に近い高さの段差標準を使った校正が必要です。また、多数の粒子の高さが散らばる幅と、平均値に付ける不確かさは同じではありません。粒子を多く数えることに加え、校正の不確かさも含めて結果を読む必要があります。[1]

    柔らかい粒子では、探針が高さまで変える

    探針の形による横方向の広がりと、探針が試料そのものを変形させる現象は別です。NISTのFarkasとKramarによる2020年の研究は、ポリスチレンラテックス粒子を強いタッピング条件で走査すると、探針の形やカンチレバーの傾きによって非対称な変形が生じることを示しました。繰り返しの走査で、最も高い点の位置も移動しました。[2]

    同研究では、小さい粒子の一部で、変形によって見かけの最大高さがいったん増える場合も報告されています。「押せば低くなるだけ」と考えると読み違えます。ただし、これは特定の柔らかい粒子と強いタッピング条件での結果です。金粒子の標準手順や、すべてのAFM測定へ同じ変形量を当てはめることはできません。[2]

    違う測定結果を比べるとき、何をそろえるか

    粒子のロット間で大きさを比べたいなら、まず「横幅を比べるのか、基板からの高さを比べるのか」を決めます。続いて、粒子の形状、分散と基板、探針、走査条件、平坦化と粒子の選び方、校正を確認します。こうした条件が違うと、材料の差と測定方法の差が一つの数字に混ざってしまうからです。

    AFMの結果に違いが出たときの切り分け。資料[1・2]からQuantum Seaが整理したもので、原因を断定する表ではありません。
    見えた違い 先に確かめること その値だけでは決められないこと
    横幅が大きく、高さとの差がある 探針の形、粒子の孤立、横方向の測定点の間隔 粒子そのものが大きくなったか
    高さが試料や場所によって違う 基板の段差・残留物、基準面、平坦化、粒子の姿勢 粒子の製造ばらつきだけが原因か
    繰り返すと高さや形が変わる 探針との相互作用、設定値、走査履歴 もともとの形状がどうだったか

    AFMの長所は、表面の凹凸を位置と結び付けて調べられることです。その情報を生かすには、画像の輪郭と高さを別々に読み、粒子の形状と測定条件を添えて比べます。そうすれば、単に大きい・小さいと結論づける前に、材料の違いを判断するために何が足りないのかを具体的に確かめられます。

    参考資料

    1. Grobelnyほか、NIST–NCL Joint Assay Protocol PCC-6「Size Measurement of Nanoparticles Using Atomic Force Microscopy」、Version 1.1、2009年10月改訂。測定原理と球形の前提はpp.3–5、校正と走査条件はpp.9–12、画像解析と不確かさはpp.12–17。金ナノ粒子の測定手順をもとに、測定値の読み方を整理しました。
    2. Natalia Farkas、John A. Kramar、「Tip-induced deformation of polystyrene latex reference nanoparticles in atomic force microscopy」、Journal of Vacuum Science & Technology A 38、023211、2020年。保存した著者原稿のpp.3–14を参照。DOI: 10.1116/1.5141749。