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  • ブラッグの法則で、X線の回折角から結晶の面間隔を読む

    ブラッグの法則で、X線の回折角から結晶の面間隔を読む

    結晶にX線を当て、向きを変えながら散乱の強さを測ると、特定の角度にピークが現れます。その角度には、結晶の中で原子の並びがどの間隔で繰り返されているかという情報が含まれています。

    角度と間隔をつなぐのがブラッグの法則です。X線回折のグラフを読むときは、横軸に書かれた「2θ」と、式へ入れる「θ」を区別すると、計算の意味を追いやすくなります。

    簡単にまとめると?

    • ブラッグの法則は、波長・結晶面の間隔・回折角を結ぶ関係です。異なる面で散乱した波が強め合う条件を表します。
    • 測定値が2θで示されていたら、半分の角度を式に使います。同じ波長・同じ次数では、面間隔が広いほどピークは小さい角度へ移ります。
    • 式が与えるのは幾何学的な条件です。ピークの有無や強さ、物質の種類までは、一つの角度から決められません。

    面ごとの波が、ずれずに重なる角度

    原子が規則正しく並ぶ結晶は、同じ間隔で重なる平行な面として眺めることができます。この面どうしの垂直な間隔を面間隔 dと呼びます。結晶の切り取り方によって、異なる向きと間隔の面が考えられます。

    X線は原子の電子によって散乱されます。ブラッグの説明では、隣り合う面で散乱した二つの波が、同じ方向へ進む様子に注目します。面を鏡のように描くと道のりを比べやすくなりますが、結晶の中に実際の鏡があるわけではありません。

    深い側の面を通った波は、手前の波より余分な道のりを進みます。入射するX線と面の間の角度を θ とすると、その差は 2d sinθ です。差が波長 λ の整数倍なら、波の山と山がそろって強め合います。この条件が、次の式です。[1][2]

    nλ = 2d sinθ

    n は1、2、3……という正の整数で、回折の次数です。以下では n = 1 の一次回折に限って考えます。θ は面から測る角度であり、面に垂直な方向から測る角度ではありません。

    2θ = 40°のピークを、面間隔に直す

    散乱する前のX線の進行方向と、散乱後の進行方向がつくる角度は 2θ です。[1] グラフの横軸が2θなら、40°と読んだ値をそのまま sin に入れず、θ = 20°に直します。

    説明用に波長を λ = 0.154 nm、一次回折のピークを 2θ = 40.0°としましょう。実測データではなく、角度の扱いを比べるための数値例です。

    d = λ / (2 sinθ)
    = 0.154 nm / (2 sin20°)
    ≈ 0.2251 nm

    もし40°をそのまま使うと、答えは約0.1198 nmになります。正しい値より約47%小さく、丸め方の違いでは済みません。波長と面間隔は同じ長さの単位にそろえ、電卓が度を扱う設定かどうかも確認すると、この計算違いを防げます。

    波長0.154 nm、一次回折の計算例。測定角2θが40度ならθは20度、面間隔は0.2251 nm。面間隔を1%広げると、2θは約39.587度へ下がる。
    同じ波長と次数で比べた独自計算。上段は測定角から面間隔への変換、下段は面間隔が1%増えた場合のピーク位置です。物質を特定した測定結果ではありません。

    間隔が広がると、ピークはどちらへ動くか

    波長と次数を固定すると、式の左辺は変わりません。そこで d が大きくなれば、積を保つために sinθ が小さくなる必要があります。0°から90°の範囲ではθも小さくなり、ピークは2θの小さい側へ動きます。

    先ほどの面間隔を1%広げ、約0.2274 nmにすると、計算上のピークは 2θ ≈ 39.587°です。40.0°から約0.413°下がります。この比較では、同じ面に由来する一次回折を追い、波長を変えていません。違う面のピーク同士を比べたり、波長の異なる測定を並べたりすると、この読み方はできません。

    また、角度のずれは面間隔の値にも影響します。同じ例で、2θを40.0°ではなく40.1°と読めば、得られる d は約0.2246 nmとなり、約0.24%小さくなります。小さな変化を議論するときには、角度の校正や読み取り精度が必要になることが、この計算からも分かります。

    ピークの位置だけで結晶構造は決まらない

    ブラッグの条件を満たす面があっても、そのピークが必ず観測されるとは限りません。結晶の中の原子配置によっては、散乱した波が打ち消し合うためです。MITの教材では、結晶の対称性に応じて特定の反射が消える例が説明されています。[2]

    したがって、一つのピークから求めた0.2251 nmだけで「この物質だ」「原子同士の距離はすべてこの値だ」とは判断できません。ここで求めたのは、その反射に対応する面の繰り返し間隔です。結晶構造を調べるには、複数のピークがどの面に対応するか、どの反射が現れ、どの反射が消えるかまで考える必要があります。

    回折データを読む最初の手がかりは、使ったX線の波長、横軸がθか2θか、追っている反射と次数をそろえることです。条件をそろえると、グラフ上の角度の変化を、結晶内の間隔の変化として読み取れるようになります。

    出典

    1. Peter Hadley, Graz University of Technology, Bragg diffraction:回折ベクトルと2θ、道のりの差、ブラッグの条件。
    2. MIT OpenCourseWare, Introduction to Solid-State Chemistry, Fall 2018, ChemATLAS 3, Lecture 21: Bragg’s Law and X-ray Diffraction(4ページ):一次回折の計算と、結晶対称性による反射の消失。