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  • ブリュースター角で消える反射、残る反射——偏光と入射角の関係

    ブリュースター角で消える反射、残る反射——偏光と入射角の関係

    ガラスを斜めから見ると、向こう側の景色に手前の映り込みが重なります。ところが、光の振動方向をそろえ、ガラスに当たる角度を選ぶと、反射をほぼ消せる場合があります。この特別な入射角がブリュースター角です。

    ただし、ガラスをその角度に傾ければ、どんな光も反射しなくなるわけではありません。消えるのは特定の偏光の反射です。どの成分が消え、どの成分が残るかを分けると、映り込みを抑える条件と、この方法の限界が見えてきます。

    簡単にまとめると?

    • ブリュースター角では、入射面内で電場が振動するp偏光の反射率が0になります。吸収のない、平らな非磁性誘電体の単一境界を考えた結果です。
    • 空気の屈折率を1、ガラスを1.5とする理想例では、その角度は法線から約56.31度です。同じ角度でもs偏光は約14.79%反射し、無偏光の平均反射率は約7.40%残ります。
    • 偏光、角度の基準、表面の条件をそろえて比較する必要があります。金属、表面の膜、粗さ、複数の境界を含む実物へ、そのまま0%を当てはめることはできません。

    まず「入射面」を決める

    光の偏光とは、進む向きに対して横向きに振動する電場の方向のことです。反射を考えるときには、画面の縦横よりも入射面が基準になります。入ってくる光線と、表面に垂直な線である法線を含む平面です。

    電場が入射面に平行な成分をp偏光、垂直な成分をs偏光と呼びます。資料で見かけるTMとTEは、それぞれこのpとsに対応します。pの電場は光線には垂直なので、常にガラスの表面に平行、という意味ではありません。[1]

    入射角も法線から測ります。法線から56.31度なら、表面から測った角度は33.69度です。この二つを取り違えると、同じ数字を使っていても別の配置になってしまいます。

    境界でつながる電場と磁場が、反射の大きさを決める

    光が二つの物質の境界へ来ると、入射・反射・透過する波の電場と磁場は、境界で満たすべき条件に従います。光の向きが斜めになると、表面に沿う成分の大きさが偏光によって違うため、pとsの反射も異なります。この関係を表すのがフレネルの式です。[1]

    入射側と透過側の屈折率をn1、n2、入射角をθi、屈折角をθtとします。ここでは磁気的性質が同じで、吸収のない等方的な物質を考えます。p偏光の電場の振幅反射係数は、次の形になります。

    rp = (n2 cos θi − n1 cos θt) / (n2 cos θi + n1 cos θt)

    この式の分子が0なら、反射波の振幅も0です。屈折の関係を示すスネルの法則、n1 sin θi = n2 sin θtと組み合わせると、ブリュースター角θBはtan θB = n2 / n1になります。このとき反射光と屈折光の進む方向は直角です。[1]

    反射光が消えるのは、光が吸収され尽くしたからではありません。この理想条件のp偏光では、入射したエネルギーは境界を通過する側へ移ります。なお、振幅の比rとエネルギーの反射率Rは別物で、この場合の反射率はR = |r|2です。

    56.31度で、無偏光の反射は約7.40%残る

    空気をn1 = 1、ガラスをn2 = 1.5と置いて計算してみます。これは条件を見通すためのモデルで、特定のガラス製品を測定した値ではありません。

    正面から入る垂直入射では、pとsの反射率はともに4%です。角度を増やすとpの反射率は下がり、約56.31度で0になります。一方、sの反射率は同じ角度で約14.79%まで上がります。

    無偏光では、直交する二つの偏光へ平均的に同じ強さを割り当てられます。そのため、全体の反射率は(Rp + Rs) / 2です。ブリュースター角でも(0 + 14.79) / 2 = 約7.40%。この例では、無偏光全体の反射率は正面からの4%より大きくなっています。「pの反射を最小にする角度」と「無偏光全体の反射を最小にする角度」は同じではないのです。

    空気1からガラス1.5への単一境界の理想計算。垂直入射ではpとsの反射率は共に4%。ブリュースター角56.31度ではpが0%、sが14.79%、無偏光平均が7.40%。
    フレネルの式による独自計算。横軸は法線からの入射角、縦軸は各偏光の入射エネルギーに対する反射率。無偏光は二つの平均です。理想的な単一境界を示し、ガラス板全体の測定値ではありません。

    また、角度をさらに大きくすればpの反射が減り続けるわけでもありません。60度では約0.18%、75度では約10.68%に戻ります。反射を抑えるには、特定の偏光に加えて角度も合わせる必要があります。

    反射した光を調べる方法と、反射そのものを減らす方法

    無偏光をブリュースター角で当てると、反射して残る光はs偏光になります。その反射光を偏光板へ通して向きを変えれば、明るさが大きく変わります。アイオワ大学の実演資料も、法線からおよそ56度でガラスに当てた光の反射を、偏光板で調べる構成を紹介しています。[3]

    ここで、偏光板を反射の後へ置いて暗くする場合、すでに発生した反射光を途中で取り除いています。これに対し、入射光をあらかじめp偏光にそろえ、境界への入射角を合わせる方法では、境界で生じる反射そのものを抑えます。目に届く光が暗くても、どこで減ったのかは異なります。

    MITの実習資料では、偏光を切り替えながら入射角ごとの反射を測り、pとsを別々に計算と比べます。[2] 比較の際には、入射する光の強さを基準にした反射率なのか、検出器が受け取った明るさだけなのかも分けると、偏光の効果を読み違えにくくなります。

    実物では、材料と表面の条件まで見る

    今回の0%は、吸収がなく平らな単一境界という条件での値です。金属のような吸収のある物質では、ここで使った実数の屈折率だけの式をそのまま適用できません。表面のコーティングは多層の干渉を生み、粗さは異なる方向への散乱を加えます。光源の偏光が完全でなければ、混ざったs成分の反射も残ります。

    ガラス板には表裏の境界があります。平行で理想的な板なら、表でブリュースター条件を満たすp偏光は裏側でも対応する条件を満たし得ますが、実物の映り込みには他の面、膜、汚れ、周囲の光も関わります。単一境界のグラフだけで、窓全体の反射が消えるとは判断できません。

    また、ブリュースター角と全反射の臨界角は別です。ガラス1.5から空気1へ進む逆方向なら、このモデルのブリュースター角は約33.69度、臨界角は約41.81度になります。前者ではpの反射が0になり、後者を超えると伝わる屈折光がなくなって全反射になります。入る側と出る側を入れ替えたら、角度も計算し直す必要があります。[1]

    映り込みや光学系の損失を比較するときは、まずpとsのどちらを扱うか、角度を法線から測っているか、単一境界か多層構造かをそろえる。この順序が、ブリュースター角の効果を実際の条件へ結び付ける出発点になります。

    出典

    1. MIT OpenCourseWare, 6.007 Spring 2011, Lecture 33: Fresnel equations and EM power flow. スライド7、21–22、24–27。講義資料PDF
    2. MIT 6.161 Modern Optics Project Laboratory, Laboratory Exercise No. 2, Fall 2017. Section 2.5、pp.5–6。実習資料PDF
    3. University of Iowa, 6H20.10 — Polarization: Brewster’s Angle. Procedure。実演資料