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  • アルキメデスの原理、同じ重さでも浮くものと沈むものがある理由

    アルキメデスの原理、同じ重さでも浮くものと沈むものがある理由

    同じ重さの二つの物体を水に入れても、一方は浮き、もう一方は沈むことがあります。違いを生むのは、重さだけではありません。どれだけの水を押しのけ、その水からどれだけの上向きの力を受けるかも関係します。この力が浮力で、その大きさを結びつけるのがアルキメデスの原理です。物体の体積を変えた数値例から、浮いているときのつり合いを読み解きます。

    簡単にまとめると?

    • 浮力は、物体が押しのけた水に働く重力と同じ大きさです。沈む物体にも浮力は働いています。
    • 静かに浮いている物体では、浮力と物体に働く重力がつり合います。外形全体の体積と、水中に入っている部分の体積を分けて数えます。
    • 密閉した空洞は、水を押しのけられる体積を広げられます。ただし、上下の力がつり合うことと、傾いても転覆しにくいことは別の条件です。

    押しのけた水の体積から、浮力を求める

    静止した水の中では、深い場所ほど圧力が高くなります。物体の下面は上面より深いので、下面を押し上げる力が上面を押し下げる力を上回ります。物体の表面全体に働く水圧を足し合わせたときに残る上向きの力が、浮力です。

    水の密度をρ、物体が押しのけた水の体積をV水、重力加速度をgとすれば、浮力の大きさFBはFB = ρgV水です。物体の材質名を直接入れる式ではなく、水の密度と押しのけた体積を入れる式になっています。

    一方、物体の質量がmなら、下向きの重力はmgです。「重さ600グラム」という日常の言い方に対して、ここでは質量を0.6 kg、力をニュートン(N)で区別します。以下は密度を1,000 kg/m³と置いた静かな水と、g = 9.80665 m/s²でのモデル計算です。物体は硬く、水を通さないものとし、空気の浮力、表面張力、底や壁との接触、ひもの力は省きます。

    質量は同じ0.6 kg、外形体積だけが違う二つのモデル

    モデルAの外形体積を0.1 L、モデルBを1 Lとし、両方の総質量を0.6 kgにそろえます。Bは空洞を含んだ密閉体でもよく、質量には殻と内部のものをすべて含めます。特定の素材や製品の測定値ではなく、体積の役割を見るための設定です。

    Aが全部水中に入っても、押しのけられる水は0.1 Lです。1 Lは0.001 m³なので、Aの浮力は1,000 × 9.80665 × 0.0001で、約0.98 Nになります。物体に働く重力は0.6 × 9.80665で約5.88 N。浮力は働いていますが、重力より小さいため、静止状態から手を離せば沈み始めます。

    Bが全部水中に入った場合の浮力は約9.81 Nです。これは約5.88 Nの重力より大きいので、手を離すと上昇し、水面に出るにつれて押しのける水の体積が減ります。静かに浮く状態で必要なのは、0.6 Lの水を押しのけることです。その水の質量は0.6 kgで、物体の質量と等しくなります。

    質量0.6キログラムの二つのモデル。外形体積0.1リットルでは全体が水中でも浮力は約0.98ニュートンで沈む。外形体積1リットルでは0.6リットルが水中に入り、約5.88ニュートンの浮力で重力とつり合う。
    同じ質量の二つのモデル。Bが浮いて静止しているときの浮力は、全体を沈めた場合の9.81 Nではなく、重力と等しい5.88 Nになる。QSによる独自作図。

    ここで分けたいのは、Bの外形全体の1 Lと、実際に水中へ入った0.6 Lです。浮力の式に入れるのは後者です。浮いているから強い上向きの力が出続けるのではなく、水中に入る体積が変わることで、上下の力がつり合う状態になります。波や運動がある間は、そのつり合いから外れることがあります。

    荷物を増やすと、浮力が増えるまで深く入る

    Bに0.3 kgの荷物を加え、外形体積を1 Lのままにすると、総質量は0.9 kgになります。静止して浮くために押しのける水も0.9 L必要となり、水中に入る体積は全体の90%になります。体積の割合であって、どんな形でも高さの90%が沈むという意味ではありません。

    モデル 総質量 外形体積 全部水中の浮力 水面での静止条件
    A 0.6 kg 0.1 L 約0.98 N 不足し、沈み始める
    B 0.6 kg 1 L 約9.81 N 0.6 Lが水中、浮力約5.88 N
    Bに荷物 0.9 kg 1 L 約9.81 N 0.9 Lが水中、浮力約8.83 N

    同じことを平均密度でも表せます。Bの平均密度は0.6 kg ÷ 0.001 m³で600 kg/m³、水の密度の60%です。そのため、つり合うときに水中へ入る体積の割合も60%になります。密閉した空洞が役立つのは、総質量に比べて水を押しのけられる外形体積を大きくできるからです。

    このモデルの1 Lの物体では、総質量が1 kgになると、全体を水中へ入れてようやく浮力と重力が等しくなります。さらに質量を増やすと、同じ外形体積では支えきれません。ただし「あと0.4 kgまで安全に載せられる」という設計値ではありません。水面から出ている部分の余裕や、波、浸水、姿勢の安定性を、この単純な力の計算は評価していません。

    深い場所ほど浮力が大きい、とは限らない

    深いほど水圧が大きいなら、同じ物体を深く沈めるほど浮力も増えそうに感じます。しかし、完全に水中にある硬い物体を、密度が一定の水の中で移動するだけなら、押しのけた体積は変わりません。浮力の大きさも同じです。

    面積Aの上下面を持つ高さhの角柱を考えると、上下の水圧の差はρghです。物体をさらに深く移しても、上面と下面の両方の圧力が増えるため、その差は変わりません。浮力はその差に面積を掛けたρghAで、hAが水中の体積に当たります。

    この説明には条件があります。柔らかい袋のように圧力で体積が縮む場合や、水の密度が深さで変わる場合には、同じ浮力とは限りません。また、底へ密着して下面に水が回り込まない状態は、ここで考えた「周囲を水に囲まれた物体」と分ける必要があります。

    外形体積だけでなく、何を一つの物体と数えるか

    浮沈を比較するなら、まず殻・内容物・荷物を含む総質量を確認し、次に水が入り込まずに押しのけられる体積を確認します。水が自由に出入りする穴や空洞まで、密閉された外形と同じように数えると、得られる浮力を過大に見積もります。

    そして、上向きと下向きの力が等しいだけでは、向きの安定性までは決まりません。荷物の置き場所などで変わる回転のつり合いも別に考える必要があります。アルキメデスの原理から分かるのは、まず水から受ける上向きの力の大きさです。その範囲を押さえると、「重いから沈む」「空洞があるから必ず浮く」といった判断を、質量と体積をそろえた比較に置き換えられます。

    出典