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  • 毛細管現象、細い管ほど水が高く上がる理由とぬれ方の影響

    毛細管現象、細い管ほど水が高く上がる理由とぬれ方の影響

    水に細い管を差し込むと、管の中だけ水面が高くなることがあります。ポンプで押し上げているわけでも、上から吸い込んでいるわけでもありません。液体と壁が接するところに働く力と、水柱の重さがつり合うことで、高さが決まります。

    この毛細管現象を考えるとき、「細いほど高く上がる」という説明は出発点になります。ただし、管の寸法だけでは高さを予測できません。同じ細さでも、壁が液体にぬれやすいかどうかで結果は変わり、条件によっては外の水面より低くなります。ここでは円形の細い管を使った理想的な計算で、その違いを見ていきます。

    簡単にまとめると?

    • 同じ液体・同じぬれ方なら、毛細管の上昇高さは管の内半径に反比例します。半径を半分にすると、理想的な高さは2倍です。
    • ぬれ方を表す接触角も効きます。半径が同じでも、接触角60度の高さは0度の場合の半分になります。
    • 到達する高さと、そこまで上がる速さは別の問題です。実際の吸液を比べるには、表面の状態、粘性、空気の逃げ道も確認します。

    上向きの力は管の周囲、重さは断面積で増える

    液面が壁と接する場所を接触線と呼びます。円形の管なら、接触線は内壁を一周しています。液体と空気の境界面には、面積を小さくしようとする表面張力が働きます。その力のうち、水柱を支える鉛直方向の成分が、接触線に沿って加わります。[1]

    内半径をr、表面張力をγ、接触角をθとすると、この鉛直成分の合計は 2πrγ cos θ です。接触角は、壁と液面の接線がなす角を液体側で測ったものです。一般に、小さい角ほどその固体を液体がぬらしやすいことを表します。液体・固体・気体の組合せで決まり、水だけの固有値ではありません。[2]

    一方、外の液面から高さhまで上がった水柱の重さは、液面の曲がりによる小さな体積の補正を無視すれば ρgπr²h です。ρは液体の密度、gは重力加速度です。空気の密度は水に比べて小さいとして省いています。

    二つがつり合う条件から、h = 2γ cos θ / (ρgr) が得られます。これはジュランの法則と呼ばれる関係です。支える力は半径rに比例しますが、同じ高さの水柱の重さはr²に比例します。管を細くすると、支える力そのものも小さくなる一方、支える水の量はもっと速く減る。そのため、より高い水柱まで支えられるわけです。[1]

    半径と接触角を一つずつ変えて比べる

    例として、表面張力を0.072 N/m、密度を1,000 kg/m³、重力加速度を9.8 m/s²と置きます。水を想定した丸めた入力値であり、特定の温度・純度の実測値ではありません。十分に長い、内径が一定の鉛直な円管を大きな水槽につなぎ、管の上端は大気に開いているとします。

    独自計算による上昇高さ。内半径0.2mm・接触角0度は7.35cm、0.1mm・0度は14.69cm、0.1mm・60度は7.35cm。管を半分に細くした効果が、接触角の変化で相殺される例。
    ジュランの法則による独自計算。γ = 0.072 N/m、ρ = 1,000 kg/m³、g = 9.8 m/s²。棒は上昇高さを表し、管の形を描いたものではありません。実測結果ではありません。

    内半径0.2 mm、接触角0度なら高さは約7.35 cm。接触角を変えずに内半径を0.1 mmにすると、約14.69 cmになります。ここで使っているのは半径です。内径0.2 mmの管は、内半径0.1 mmの行に対応します。

    しかし、細い方の管の接触角を60度にすると、cos 60° = 0.5なので、高さは約7.35 cmに戻ります。この例では、半径を半分にした効果と、ぬれ方の変化がちょうど相殺されます。「穴を細くしたのに吸い上げ高さが増えない」という結果でも、寸法測定だけで原因を決めることはできません。

    内半径0.1 mmに固定したときの計算
    接触角 cos θ 外の液面からの高さ
    0度 1 約14.69 cm
    60度 0.5 約7.35 cm
    90度 0 0 cm
    120度 −0.5 約−7.35 cm

    マイナスの高さは、液面が外よりも下がる毛細管下降を意味します。θが90度を超えると、cos θの符号が変わるからです。下降する場合は、管の下端が十分深く液中にあり、液面がその位置に収まれることも前提になります。上向きにしか使えない式ではありません。

    曲がった液面を、圧力差として見る

    同じ関係を圧力で説明することもできます。管の中の曲がった液面をメニスカスと呼びます。ぬれやすい壁に沿って液面が持ち上がると、中央が低い形になります。細い円管でこの液面を球面の一部と近似すると、空気側の圧力から液体側の圧力を引いた差は 2γ cos θ / r です。これは曲率と圧力差を結び付けるヤング・ラプラスの関係から得られます。[1]

    半径0.1 mm・接触角0度の例なら、圧力差は1,440 Paです。水柱の高さ14.69 cmに相当する圧力 ρgh も約1,440 Paになります。水槽の液面と管の上端が同じ大気に開いていても、曲がった界面の両側では圧力が違います。上を密閉して真空を作る必要はありません。

    この近似には、管が重力で液面の形を大きく変える尺度に比べて十分細い、という条件があります。その尺度が毛細管長 √(γ / ρg) で、今回の入力では約2.71 mmです。計算に使った内半径0.1~0.2 mmはそれより小さい値です。数mm以上の太い管で、壁際だけ水面が曲がっている場合まで、一本の高い水柱という近似をそのまま広げないようにします。

    高く上がる管が、速く吸うとは限らない

    ジュランの法則が答えるのは、静止したときの高さです。そこへ至る途中では、液体の粘性や慣性も効きます。粘性は流れに抵抗を与え、管が細くなるほど流れやすさの比較に無視できなくなります。[1]

    例えば、慣性の影響が小さくなり、まだ重力による頭打ちも小さい範囲では、液面の移動距離zについて z² = γr cos θ × t / (2μ) というウォッシュバーンの関係が使えます。μは粘度、tは時間です。同じ液体・接触角なら、この範囲で同じ時間後の距離は√rに比例します。半径を半分にすると距離は約0.707倍。静止時の高さが2倍になることと、矛盾はしません。比べているのが「最終高さ」か「途中の同じ時刻」かが違うからです。

    ただし、この式を水に触れた直後から無条件に使ったり、最終高さを超えて上がり続けると解釈したりはできません。ここで示した0.707倍も、両方の管が同じ粘性支配・重力が小さい範囲にあるときの比例関係です。

    実際の材料では、寸法と表面の履歴をそろえる

    接触角には、液体が前へ広がるときと後退するときで違う値を取る履歴依存性があります。表面の化学的なむらや凹凸によって接触線が引っ掛かるため、静止した角がいつも一つに決まるとは限りません。これを接触角ヒステリシスと呼びます。[3]

    吸液材料を比較するなら、まず何を改善したいかを分けます。高い位置まで液体を届けたいなら到達高さ、短時間に浸透させたいなら所定時間後の距離や吸液量を測ります。そのうえで、内径・空隙の形、液体の温度と組成、表面処理や汚れ、乾いた状態から始めたかをそろえます。

    紙や多孔質材料には、曲がった経路、太さの異なる空隙、枝分かれがあります。閉じ込めた空気の圧力や蒸発も加わり得るので、一本の開いた円管の式から、そのまま材料全体の性能は出せません。ジュランの法則は、細さとぬれ方を切り分けるための比較の基準です。寸法だけを見て「よく吸う」と判断せず、高さ・時間・表面状態のどれを比較しているかまでそろえると、測定結果を読み解きやすくなります。

    出典

    1. John W. M. Bush, MIT OpenCourseWare, 18.357 Interfacial Phenomena, Lecture 8: Capillary Rise(Fall 2010)、pp.26–29。ジュランの法則、圧力・力のつり合い、粘性支配の上昇を参照。数値例と比較図は本稿の独自計算です。
    2. 同、Lecture 4: Young’s Law with Applications(Fall 2010)、p.12。接触角と界面のつり合いを参照。
    3. 同、Lecture 15: Contact Angle Hysteresis, Wetting of Textured Solids(Fall 2010)、pp.59–60。前進・後退接触角と接触線の固定を参照。