タグ: 冷却配管

  • IMMERSEKOOLのUQDホースキット、かしめ後の漏れと抜けをどう確かめるか

    IMMERSEKOOLのUQDホースキット、かしめ後の漏れと抜けをどう確かめるか

    液冷サーバーへ冷却液を届けるホースは、つなぐ継手が合えば完成、とはいきません。ホースの端を金属部品に差し込み、その外側を固定する接合部も、液を閉じ込め、圧力がかかった状態でホースを保持する必要があります。着脱する面の互換性と、組み立てたホースの健全性は、確かめる場所が違います。

    IMMERSEKOOLの公開資料は、UQD(Universal Quick Disconnect)などの液冷継手を付けたホースキットについて、加工から出荷検査までを示しています。OCP Korea Tech Dayの公式一覧から取得できる同社資料と、2026年9月24日付の接続ライン紹介を手がかりに、「検査済み」の内訳をどう読むかを整理します。[1][2][4]

    簡単にまとめると?

    • UQDの接続仕様を満たすことに加え、ホース・差込部・スリーブの組み合わせと、組立条件を確かめます。
    • 漏れ、ホースの抜け、長期使用への適合は、同じ検査一つでは判断できません。全数検査とロット単位の試験を分けて読みます。
    • ホースの破裂試験値は使用圧力ではありません。完成キットの使用条件と、納入品に対応する検査記録が選定の判断材料になります。

    UQDの接続面から、ホースを固定する部分へ

    QDは、冷却液の流路を切り離し、つなぎ直すための継手です。その反対側には、ホースや配管へつなぐ端末があります。ホースを差し込む突起付きの部分はホースバーブと呼ばれ、その外側を金属の筒で締めて固定する方式が、かしめです。

    IMMERSEKOOLは、ホースの外径に合わせたスリーブ、差込部、かしめ後の径を一組として管理すると説明しています。スリーブはホースを外側から支える筒です。同じUQDの接続面を選んでも、その後ろで使うホースやスリーブが異なれば、組立条件まで同じにはなりません。[1]

    ただし、同社資料の「OCPが標準化するのは継手」という表現を、端末には規定がないという意味で読むのは正確ではありません。たとえばOCPのUQD仕様Rev.1.0、§3.1は、最低限用意するホースバーブやねじ端末、端末が満たす圧力要件も定めています。そのうえで、バーブの形状などは供給者の裁量とし、ホースとの組立てに固有の要求を供給者が示すよう求めています。確認すべきなのは、採用する仕様と版の要求に加え、その部品の組立要求を満たしているかです。[3]

    確認穴、漏れ検査、引抜き試験は役割が違う

    図1の工程では、かしめの後に全数の漏れ・耐圧検査を置き、ホースの引抜きについてはロット単位で確認すると説明しています。また、スリーブに確認穴を設け、ホースが十分に差し込まれているかを目視できる構成は、オプションとして示されています。[1]

    ホースキットの設計、加工、かしめ、検査、出荷を示す原図。スリーブの径管理とロット単位の引抜き確認、確認穴による挿入状態の目視を別々に説明している。
    図1 IMMERSEKOOLが示すホースキットの製作・検査工程。上段は設計、加工、かしめ、検査、出荷の順です。下段はアダプター、かしめ用スリーブ、オプションの確認穴を示します。出典:IMMERSEKOOL「Liquid Cooling for AI Data Centers」p.17。原資料 / 図を拡大する

    ここで、確認穴からホースが見えることは、挿入状態を確かめる手がかりです。締付けが適切か、圧力をかけたときに漏れないか、引く力に対して保持できるかを、それだけで証明するものではありません。同様に、ある圧力と時間で漏れなかった記録から、引抜きの強さや長期寿命まで読み取ることはできません。

    たとえば、外観も接続面も同じホースキットを二つの供給元から選ぶ場合を考えます。一方に漏れ検査の結果しかなく、もう一方に組立条件、漏れ検査、引抜き試験の条件がそろっていれば、後者のほうが、どの不具合を確認したかを追えます。ただし、試験項目が多いだけで優劣が決まるわけではなく、実際に使う組み合わせ・圧力・温度に対応した記録かが重要です。これは資料の工程から整理した選定例で、同社製品と他社製品の実測比較ではありません。

    IMMERSEKOOLの資料p.17には、全数の漏れ・耐圧検査について、圧力値、保持時間、判定基準の詳細まではありません。引抜き試験の荷重や、ロット内の抽出数も不明です。「全数検査済み」という表示を受け取ったら、これらを完成キットの品番・組立仕様と対応付けて確認する必要があります。

    10.34 barで使うホースと、89.1 barで破裂した試料

    資料p.15のEPDMホース表では、使用圧力が10.34 bar、破裂試験の結果が89.1 barと分けて示されています。EPDMはエチレンプロピレンジエンゴムで、ここで扱うのは過酸化物架橋のホースです。この二つの圧力は意味が異なり、破裂試験で得た高い値を、運転してよい圧力へ置き換えることはできません。[1]

    89.1 barは同社が示した試験値です。試料の口径、数、ばらつきなどはこの表だけでは分からず、すべての口径や完成キットに同じ破裂値が保証されるとは読めません。また、ホースに示された使用圧力だけで、接続するQDやかしめ部を含む流路全体の使用条件が決まるわけでもありません。

    同じ表の漏れ試験には20 bar・1分という条件が記されていますが、これをp.17の出荷全数検査の条件と同一視する根拠はありません。ホースの適格性を示す試験表と、納入する完成品の検査は、対象も目的も分けて読む必要があります。[1]

    長期使用についても同様です。PG-25、7 bar、87°C、20日という加速試験に「Pass」とあっても、劣化を何で判定したか、実使用の何年分に相当するかは掲載されていません。冷却液を替えた場合や、温度・圧力の変動を含む運転へ、そのまま寿命の保証として広げることはできません。[1]

    完成キットの記録を、設置するラックへ結び付ける

    検査結果があっても、納入後にホースや端末を別仕様へ替えれば、その記録が適用できるかを確認し直します。たとえば掲載表の内径1/2インチのホースは、外径22 mm、最小曲げ半径70 mmです。この寸法のホースで確認された組立てを、内径だけ同じで外径の異なるホースへ置き換えてよいとは言えません。スリーブの適合やかしめ条件、ラック内の取り回しを改めて合わせる必要があります。[1]

    IMMERSEKOOLは2026年9月の説明で、ホース、QD、ラックマニホールドなどを組み、現場へ送る前に接合状態、供給・戻りの接続、漏れや流路構成を確認する方針を示しています。現場の組立作業を減らす狙いですが、公開説明から削減時間や不良率までは評価できません。[2]

    受け取る側に必要なのは、部品のカタログだけでも、「検査済み」の一言だけでもありません。どのホース・継手・スリーブを、どの条件で組み、その納入品にどの検査を行ったかをたどれることです。そこまでそろえて初めて、UQDの共通接続を使う利点を、設置先で再現できる組立てと検査へつなげられます。

    参考資料

    1. IMMERSEKOOL「Liquid Cooling for AI Data Centers」。公式イベント一覧のCEJN KOREA/IMMERSEKOOL合同枠から取得した全19ページのPDF。掲載版の内容はIMMERSEKOOLによるもの。ホース仕様はpp.14–15、製作・検査工程はpp.16–17。本文は同社の説明・公表値を読み解くもので、試験を独自に再現した評価ではありません。
    2. IMMERSEKOOL「AIデータセンター向け液冷接続ラインの統合供給」(韓国語)、2026年9月24日。組立後のPre-Testingと出荷前確認の説明。
    3. Open Compute Project「Universal Quick Disconnect (UQD) Specification, Revision 1.0」、2020年9月4日、§3.1。端末とホース組立要求の規定を読む例として参照。採用製品の準拠版は別途照合が必要です。
    4. Open Compute Project「2026 OCP Korea Tech Day」公式発表一覧。資料確認日:2026年10月12日。開催当日の説明と現在掲載されているPDFの同一性は確認していません。
  • nVentのCDU液冷設計、ラック増設に備える配管と保守

    nVentのCDU液冷設計、ラック増設に備える配管と保守

    サーバーラックをもう一列増やしたい。置く場所と電源には余裕があっても、冷却液を届ける配管まで、そのまま使えるとは限りません。

    一つのラックを冷やす設計と、何列ものラックを動かし続ける設計。その間には、冷却装置の台数だけでは埋まらない違いがあります。

    2026年8月のOCP APAC Summitで、nVentのMing Tien氏が取り上げたのは、この規模の広がりです。公開スライドをもとに、冷却液を循環・調整する装置「CDU」と配管を、建物側の設備までつなげて見ていきます。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • CDUは施設側とサーバー側の回路を分け、液体を混ぜずに熱を受け渡します。
    • 液冷の増設は冷却能力の合計だけでなく、各ラックへ必要な圧力と流量を届けられるかで考えます。
    • 予備の装置を持つことと、故障した配管を切り離して運転を続けられることは別です。

    ラックごとに置くか、何台かで共有するか

    CDUの置き方には、ラックの中へ組み込む「インラック」と、ラック列のそばに置いて複数ラックを受け持つ「インロー」があります。発表では、複数ラックをひとまとまりにしたPODへ液冷を広げるとき、後者の集約しやすさに注目しています。[2]

    ラックごとにCDUを置けば、IT機器側の冷却回路をラック単位で分けられます。一方、ラックを増やすたびに、装置の設置や建物側の配管接続、監視・保守の対象も増えていきます。複数ラックでCDUを共有する構成なら、こうした運用をまとめやすくなります。[2]

    ただ、共有するほど、どこまでが一つの冷却系統なのかをはっきりさせる必要があります。まとめると運用しやすい部分と、分けておくと不具合を閉じ込めやすい部分。その両方から配置を考えると、装置の大きさだけでは見えなかった違いが分かります。

    発表の比較は、大きなAIクラスタを念頭に置いたものです。インローならいつでも安く、信頼性も高いと決まるわけではなく、既存設備や増設の単位に合わせて選ぶ必要があります。

    二つの回路を分けて、熱を渡す

    ここで、液体の通り道を整理しておきます。今回扱う液体同士で熱を交換するCDUでは、建物側を流れる一次回路と、サーバー側を巡る二次回路が分かれています。資料にあるFWSは建物側の水系統、TCSはIT機器側の冷却系統を指します。[2・3]

    サーバーで温まった二次側の冷却液は、CDUへ戻り、熱交換器を通じて一次側へ熱を渡します。二つの液体を混ぜずに熱を受け渡すことで、サーバーへ送る液体の品質や圧力を、建物側と分けて管理できます。[2・3]

    回路を分けても、建物側に頼らず冷やせるわけではありません。一次側がどの温度で、どれだけの流量を供給できるかは、CDUの働きに関わります。発表では、建物側からCDUへ供給温度・流量・差圧などを伝え、CDUからは戻り温度や受け渡す熱量、異常の状態を返す関係が示されています。[2]

    配管の接続位置だけでなく、互いに何を伝え、どちらが調整するかまで決める。設備担当とIT担当の境目に、CDUが置かれる意味はここにもあります。

    冷却能力の合計より、必要な場所へ流れるか

    ラックの数が増えると、冷却液の行き先も増えます。CDUの冷却能力を足し合わせて十分な値になっていても、それぞれのラックへ必要な流量を届けられるかは、もう一つの問題です。

    資料では、必要な冷却能力と流量から台数を考えたうえで、系統に必要な圧力と流量の組み合わせ、つまり「P-Qの運転点」でCDUを選ぶと説明しています。Pは圧力、Qは流量です。配管やサーバーを通る際の圧力損失を補いながら、必要な量を流せるかを確かめます。[2]

    nVentが示した構成例では、配管を環状につなぎ、CDUを分散して配置しています。狙いは流量と圧力の偏りを抑えることです。ただし、輪にしただけで均等になるわけではありません。実際の配管寸法、接続するラック、装置の運転条件を合わせて検討する必要があります。[2]

    増設の相談で大切なのは、「あと何kW冷やせるか」に加えて、「追加したラックまで、どの経路で必要な流量を届けるか」です。冷却能力と液体の通り道を別々に見ないことが、拡張の出発点になります。

    予備を持つことと、切り離せることは別

    故障に備えて、必要な能力を担うN台に予備の1台を加える。これがN+1という冗長化の考え方です。発表でも、CDUの配置と一緒に冗長性が取り上げられています。[2]

    ここで確かめたいのは、何を予備にしているかです。たとえばポンプに予備があっても、共有配管を修理する間の別経路まで自動で用意されるわけではありません。装置の台数に続けて、故障した部分をどこで切り離せるかを見ていきます。

    資料が重視するのも、一次・二次回路の分離、弁の位置、保守する範囲の決め方です。正常に流れている状態だけでなく、漏れや停止が起きたときに影響がどこまで及ぶかを、配管の構成として考えます。[2]

    監視にも同じ視点が必要です。発表では、ネットワークが途切れた場合にも機器側の制御でIT機器を守れること、センサー故障やポンプ停止時の動作をあらかじめ決めることが挙げられています。画面で状態が見えることと、通信がなくても安全に対処できることは、分けて設計したい部分です。[2]

    増設しやすさは、配管を作る前に決まる

    将来のラック追加に備えるなら、空きスペースを残すだけでは足りません。配管の取り出し位置やCDUを運び込む通路、床が支えられる重さも、後の工事に関わります。

    発表では、ラック配置と接続寸法を先に固め、配管を工場で組み立ててから搬入する方法が紹介されています。現場での切断や溶接を減らし、出荷前には耐圧・清浄度・溶接の検査を行う。設置後には、現地で改めて確認する流れです。[2]

    事前に作る範囲が広がるほど、最初に決める寸法や接続位置の確かさが大切になります。後からラックの並びを変えると、あらかじめ用意した配管が合わなくなるかもしれません。増設の単位を決めることは、建物とIT機器の計画を早い段階で合わせることでもあります。

    また、将来の余裕は熱を受け取る能力だけでなく、流量や圧力にも必要です。主配管の大きさや系統の分け方を先に考えておけば、増設のたびに大きな配管工事や床の改修へ戻る事態を避けやすくなります。[2]

    冷却を広げるなら、止まったときから考えてみる

    新しいラックを加えたとき。CDUを一台点検するとき。配管の一部で不具合が起きたとき。それぞれの場面で、どこから液体を送り、どこを切り離し、誰が調整するのかをたどると、設備のつながりが具体的になります。

    液冷を大きくする設計は、高性能な装置を並べるだけでは完結しません。必要な流れを届け、影響を小さく区切り、次の増設を受け止められること。ラックから建物へ視野を広げると、この三つを一緒に整える大切さが見えてきます。

    nVentの事業について

    nVentは冷却だけでなく、電気をつなぐ部品や、機器を保護する筐体なども手がけています。会社全体の事業と収益のしくみは、cyclewaveにまとめています。[4]

    参考資料

    2026年9月23日確認。講演の公開スライドをもとに、設備を広げる際の考え方を整理しました。配置の比較や構成例はnVentの発表によるもので、設備ごとの条件に合わせた検討が必要です。

    [1]Open Compute Project:2026 OCP APAC Summit 発表・資料一覧。台北、2026年8月11〜12日開催。Ming Tien(nVent)の講演を収録。

    [2]nVent「From Rack to Facility: Designing Scalable CDU-Based Liquid Cooling System」公開スライド。4〜7ページ:拡張と配置、9ページ:配管と運転点、10〜13ページ:施工・保守・制御、15ページ:将来の余裕。

    [3]nVent「Rack Level High Density Liquid Cooling」。6ページ:一次・二次回路と、液体を混ぜずに行う熱交換の説明。

    [4]cyclewave:nVentはどんな会社? 電気設備を支える事業と収益のしくみ。公開本文を確認して参照。