タグ: 共有結合性有機構造体(COF)

  • 金を捕まえて育てる準二次元COF、水素結合で反応点を開く

    金を捕まえて育てる準二次元COF、水素結合で反応点を開く

    電子機器に使われた金を取り出すには、ほかの金属も混じった液体から、金の成分を選んで集める必要があります。材料に金を捕まえる場所が多くても、その場所へ液体中の成分が届きにくければ、十分には働きません。

    南京理工大学と中国科学院上海高等研究院の研究チームは、分子の鎖を水素結合で整え、金を捕まえる部分を使いやすくした準二次元の共有結合性有機構造体(COF)を報告しました。2026年10月30日に早期公開された論文では、金の成分を吸着し、金属の粒へ変え、その粒を成長させる一連の過程を調べています。

    簡単にまとめると?

    • 分子鎖の間に水素結合を作り、鎖のねじれを抑えて、金の成分が反応点へ近づきやすい構造にします。
    • 55℃で振動も加えた試験では、材料1g当たりに換算して約5.08gの金を液体から取り込みました。実際の試験は材料2mgを使った小規模なものです。
    • 速く取り込めること、最大量を取り込めること、繰り返し使えることは、それぞれ別条件で評価されています。工場の処理量や採算が実証されたわけではありません。

    反応点を増やすだけでなく、そこまでの道を開く

    COFは、有機分子を共有結合でつないで、規則的な骨組みや細孔を作る材料です。細孔は、分子やイオンが出入りできる小さな空間です。骨組みにどの官能基を置くかによって、特定の成分との結び付き方を調整できます。

    ただし、層が密に重なったり、孔の中の道が入り組んだりすると、反応できる場所が奥にあっても、液体中の成分が届くまでに時間がかかります。入口の狭い建物では、内部の部屋を増やすだけでは人の出入りが速くならないのと似ています。

    今回のPy-HP-COFでは、鎖の外側を向くヒドロキシ基(–OH)と、隣の鎖の部位との間に鎖間水素結合を作ります。これは隣り合う鎖を支え、分子のねじれ方を制限する働きをします。鎖が平面状に並びやすくなり、層状の、準二次元と呼ばれる構造へまとまります。

    比較対象には、ヒドロキシ基の位置を変えたPy-DIPH-COFを使いました。構成要素をまったく別の材料に置き換えるのではなく、基の位置と鎖同士の関係を変えることで、構造の違いが取り込みにどう影響するかを調べています。準二次元は、共有結合だけで一枚の網を作るという意味ではなく、一次元の鎖を鎖間の相互作用で組み合わせた構造です。

    金のイオンを捕まえ、金属の粒へ変える

    対象は、塩化物を含む液体中のテトラクロロ金(III)酸イオン、[AuCl4]−です。金の原子に四つの塩素が結び付いた、負の電荷を持つ成分です。最初から金属の小片を網ですくう実験ではありません。

    材料のイミン結合(–C=N–)やヒドロキシ基が、この成分の取り込みと反応に関わります。研究チームは、孔の周囲の電気的な環境や成分の結び付き方を計算し、塩素が順に離れ、金が電子を受け取って金属になる経路を検討しました。電子を受け取る変化が、還元です。

    実験でも、金を取り込んだ材料を電子顕微鏡やX線で調べると、金属の金のナノ粒子が確認されました。温度を上げて振動も加えた条件では、粒がより大きな集まりへ成長します。取り込んだ成分が反応点に一個ずつとどまるだけでなく、金属として析出・成長することが、大きな取り込み量につながると考えられます。

    このため、性能を「結合が強いから」とだけ説明するのは十分ではありません。計算上、局所的な吸着エネルギーが最も大きく負になるのは比較対象の方でした。著者らは、反応点への届きやすさ、成分を受け入れる空間、還元が続く条件を合わせて説明しています。計算で水素結合の拘束を外した比較構造は、実際に合成した材料とは区別されています。

    約5.08gという値を、実験条件と一緒に読む

    取り込み量の単位mg/gは、乾燥したCOFの質量に対し、液体から減った金の質量がどれだけあったかを表します。5082.32mg/gは、材料1g当たりに換算すると約5.08gです。金属として成長した分も含むため、材料そのものより重い金を集めるという値になります。

    この値を得た加熱・振動試験は、初期の金濃度1500mg/L、液量10mL、材料2mg、pH 3、55℃という条件です。温度依存性の評価は24時間の平衡化を行っています。同じ図の加熱・振動比較では、25℃で約2494mg/g、55℃で約3810mg/g、55℃に振動を加えると約5082mg/gへ増えました。

    材料2mgに当てはめると、最大条件で取り込んだ金は約10.2mgです。液体に最初に含まれる金15mgに対して、約68%に相当します。これは論文の条件から計算した値で、別条件の「約99%除去」と同じ試験結果ではありません。

    原論文と補足資料の数値から整理した、三つの試験の違い
    確かめたこと 条件と、読み取れる範囲
    取り込む速さ 金100mg/L、液100mL、材料10mg。両材料で2分以内に93%超、20分以内に約99%を除去。
    加熱・振動時の取り込み量 金1500mg/L、液10mL、材料2mg。55℃と振動で約5082mg/g。速さの試験とは濃度・投入量が異なる。
    再利用 金20mg/L、液100mL、材料20mg。取り込みと再生を5回繰り返して99%超の除去を維持。最大量での連続5回運転ではない。

    回収工程として比べるときに残る課題

    研究では、廃CPUから作った浸出液でも、ほかの金属イオンが共存する中で金を選択的に取り込めるかを調べています。純粋な金の溶液だけでなく、電子廃棄物由来の混合液へ進めた点は、用途を考えるうえで意味があります。ただし、電子機器からそのまま金を取り出す工程全体を置き換えるものではありません。

    材料を再利用するには、集めた金を別の液へ移す脱着と、材料の回収・洗浄が必要です。5回の試験でも結晶構造を示す信号は残りましたが、その強さは低下しました。細かな粉末がフィルターや器具に付着する損失も、回収方法によって異なります。

    実用的な比較には、材料1g当たりの最大量に加え、低い濃度での性能、液を流し続ける場合の処理速度、加熱や振動に使うエネルギー、再生に必要な薬液、材料の損失を合わせる必要があります。今回の結果は、小規模な回分試験と構造解析に基づく材料設計の成果です。

    水素結合で鎖の形を整えるという小さな変更が、成分の通り道と反応の進み方の両方に効く。このつながりが、今回の準二次元COFをほかの回収材料と比べる際の中心になります。

    出典

    1. Zhigao Zhu et al., Hydrogen-bond-mediated quasi-two-dimensional covalent organic frameworks for ultrahigh gold extraction, Nature Communications, DOI: 10.1038/s41467-026-78532-7. 2026年10月30日早期公開のArticle in Press。公開本文PDFのResults、Figures 1・4・5、Methodsを参照。最終編集版の公開前です。
    2. 同論文のSupplementary Information。取り込み速度、温度依存性、再利用の条件(2–4ページ)を参照。