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    NICTのトップエミッション型深紫外LED、電極の隙間から光を取り出す

    LEDの中で光が生まれても、外へ出る前に電極に吸収されたり、境界で反射して戻されたりすれば、照明として使える光は減ってしまいます。情報通信研究機構(NICT)は2026年10月22日、深紫外光をチップの上面から取り出す「トップエミッション型」のLEDを発表しました。電流を流すための電極と、光が通る出口を同じ面にどう共存させるか。その工夫が今回の中心です。

    簡単にまとめると?

    • 同心円状の細い電極と、その隙間に設けたナノ構造を組み合わせ、波長275nmの深紫外光を上面から取り出しました。
    • 供給した電力のうち光として外へ出る割合は最大6.5%。同じエピウェハと電極メサ構造で作った比較用のフリップチップ型に対し、約35%高い電力変換効率を示しました。
    • チップを反転して接合する工程を省ける構造ですが、製品の価格や長期信頼性まで実証した発表ではありません。

    基板の裏から取り出していた光を、上面へ

    今回の素子には、アルミニウム・ガリウム・窒素を組み合わせた半導体、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)が使われています。発光波長は275nmで、人の目には見えない深紫外領域です。

    NICTが比較対象とした従来のフリップチップ型は、光をサファイア基板側から取り出します。光を外へ向けるため、チップを上下反転させ、配線と支持を担うサブマウントに位置を合わせて接合します。この組立工程に加え、半導体と基板の屈折率の違いによって、一部の光が内部へ戻されることも課題でした。

    上面から出せれば、反転して接合する工程を省くことができます。ただし上面には、電流を注入するp型電極と、その下のp型半導体コンタクト層があります。これらは深紫外光を吸収するため、単に光の出口を上へ向けるだけでは効率が上がりません。

    電流の通り道を残し、隙間から光を逃がす

    研究グループは、p型電極とコンタクト層を同心円状のマイクロリングに加工しました。電極が面を覆う範囲を減らしつつ、発光に必要な電流を送り込む経路を残す構造です。さらに、電極の開口部には酸化ハフニウム(HfO₂)の小さな構造を並べました。

    NICTの図3。左は同心円状のp型電極を備える深紫外LEDの模式図、右は開口部に形成した酸化ハフニウムのナノ構造の電子顕微鏡像
    図1:マイクロリング電極とHfO₂ナノ光取出し構造。右側の電子顕微鏡像では、先端を切った円すい状の構造が並んでいます。画像を開くと細部を確認できます。出典:NICT、2026年10月22日発表、補足資料図3(原図のまま)。

    図1の左側が電流を入れるリング状の構造、右側が開口部にあるナノ構造です。後者は、光が境界で全反射して内側へ戻るのを抑え、外へ出られる角度の範囲を広げます。電極を減らす工夫と、残った出口で光を取り出す工夫を重ねた点が重要です。発光層が光を生むことと、その光を素子の外へ届けることは、別々の課題なのです。

    最大6.5%と「約35%改善」は、違う数字

    発表では、最大外部量子効率(EQE)が7.5%、最大電力変換効率(WPE)が6.5%と報告されました。EQEは注入した電子の数に対して外へ出た光子の数を、WPEは投入した電力に対して外へ出た光のエネルギーを見ます。同じ効率という言葉でも、数えているものが違います。

    指標 今回の値と読み方
    最大EQE 7.5%。電子の注入数に対する、外部へ出た光子数の割合。
    最大WPE 6.5%。電流×電圧で求める供給電力に対する、光出力の割合。
    比較用素子からの改善 WPEが相対的に約35%高いこと。WPEそのものが35%という意味ではありません。

    比較用のフリップチップ型は、同じエピウェハ(半導体層を成長させたウェハ)と電極メサ構造を用いて作られています。研究グループは、良好な電流・電圧特性を保ったまま光出力が増えたと報告しています。材料から組立条件まで異なる市販品同士の比較ではなく、同じ研究内で構造の効果を調べた結果として読む必要があります。

    また、最大値はどの駆動条件でも得られるわけではありません。発表の効率曲線では、小さい電流の領域で頂点を迎え、電流を増やすとEQEもWPEも下がっています。用途に合う光源を比べる際には、最大効率だけでなく、必要な光出力を得る電流・電圧での効率も見ることになります。

    組立の簡素化と、実用光源までの距離

    この構造の利点は、光の取り出しを改善しながら、フリップチップ工程を不要にできることです。NICTは低コスト化や幅広い応用につながると期待しています。一方、発表には量産時の歩留まり、具体的な製造費用の削減率、長時間駆動での劣化の評価は示されていません。

    今回示されたのは、深紫外LEDで電流の注入と上面からの光取り出しを両立する素子構造です。実用化を追うときには、同じ波長・同じ光出力での消費電力に加え、組立後の放熱や寿命まで結果が広がるかが次の比較点になります。

    出典

    1. NICT「世界初、高効率なトップエミッション型深紫外LEDの開発に成功」(2026年10月22日、補足資料図3〜6・用語解説を含む) — 公式発表
    2. Guo-Dong Haoほか「High-Efficiency Top-Emitting AlGaN-Based Deep-Ultraviolet Light-Emitting Diodes」ACS Photonics、2026年10月21日オンライン掲載 — DOI: 10.1021/acsphotonics.6c00589