コンデンサの二枚の電極の間に、電気を通しにくい材料を入れると、静電容量が増えることがあります。この材料を誘電体と呼びます。では、容量が増えれば、両端の電圧は必ず下がるのでしょうか。答えは、電源とのつながり方によって変わります。充電後に電源を外すと電荷が一定に保たれ、理想的な電圧源へつないだままなら電圧が一定に保たれるためです。
簡単にまとめると?
- 同じ形のコンデンサを比誘電率4の材料で完全に満たすモデルでは、静電容量は4倍になります。ただし、電荷と電圧が同時に一定になるわけではありません。
- 最初に100 pF、20 Vだった例では、電源を外してから材料を入れると5 Vになります。20 Vの理想電圧源へつないだままなら、20 Vを保って電極の電荷が4倍になります。
- 蓄えられるエネルギーも、電源を外した場合は4分の1、つないだ場合は4倍です。容量だけで増減を決めず、何を一定にしているかを確認します。
静電容量は、電荷と電圧の関係を表す
コンデンサでは、向かい合う電極に正と負の電荷を分けて蓄えます。片方の電極の自由電荷の大きさをQ、両端の電圧をV、静電容量をCとすると、基本の関係はQ = CVです。自由電荷とは、外部の回路を通って電極へ出入りできる電荷を指します。
容量Cが大きいほど、同じ電圧でより多くの電荷を分けておけます。これは「容量を増やせば、どんな接続でも電荷が勝手に増える」という意味ではありません。Q = CVのうち、外部との接続でQを固定するのか、Vを固定するのかを先に決める必要があります。
ここでは、電極の面積と間隔を変えない平行板コンデンサを考えます。最初の電極間は真空とし、そこを一様な誘電体で完全に満たします。材料は線形で、漏れ電流や誘電損失を無視し、電極の端の影響が小さい理想モデルです。比誘電率κは、真空に対して誘電率が何倍かを表す無次元の数です。この条件では、材料を入れた後の容量はC = κC₀となります。C₀は入れる前の容量です。[1]
電源を外した場合は、電荷を保って電圧が下がる
最初の容量を100 pF、充電した電圧を20 Vとします。pFはピコファラドで、1 pFは10のマイナス12乗 Fです。電極に蓄えた自由電荷の大きさは、100 pF × 20 Vで2 nCになります。nCはナノクーロンで、10のマイナス9乗 Cです。ここでの数値は比較用の設定で、実際の部品や材料の測定値ではありません。
充電後に電源を外し、ほかの導電経路もない状態にします。その後、比誘電率κ = 4の材料を入れると、容量は400 pFになります。電極へ電荷を足したり、そこから取り去ったりする経路がないので、自由電荷Qは2 nCのままです。
したがって、電圧はV = Q/Cから、2 nC ÷ 400 pFで5 Vです。容量が4倍になったぶん、同じ電荷に対応する電圧が4分の1になります。電圧が下がったからといって、電荷が漏れて減ったと考える必要はありません。
材料内部では、正負の電荷のわずかなずれや分子の向きの変化による分極が起きます。誘電体の表面に現れる束縛電荷は、電極の自由電荷が作る電場を部分的に打ち消す向きに働きます。電極の自由電荷が同じなら、合成された電場と電圧が小さくなります。材料が全体として電気的に中性でも、この分極は起こり得ます。[1][2]
電源につないだ場合は、電圧を保つため電荷が増える
次は、同じ100 pFのコンデンサを20 Vの理想電圧源へつないだまま、同じ材料で満たします。容量は先ほどと同じ400 pFです。しかし、今度は電源が両端の電圧を20 Vに保ちます。
必要な自由電荷はQ = CVから、400 pF × 20 Vで8 nCになります。最初の2 nCとの差である6 nCが、外部回路を通じて追加されます。電源を外した場合と比べると、材料も電極の形も同じなのに、最終的な電荷と電圧は異なります。
分極が起きなくなったわけではありません。分極の効果に対して電源が電荷を移動させ、両端の電圧を一定に保つのです。電極間隔も一定なので、電圧を間隔で割った平均電場V/dも元と同じになります。したがって「誘電体を入れたから電場が必ず小さくなる」と判断する前に、電極の自由電荷を固定しているかを確かめます。[2]

同じ容量の増加でも、蓄えるエネルギーは逆に変わる
線形なコンデンサに蓄えられるエネルギーUは、U = CV²/2 = Q²/(2C) = QV/2で表せます。[3] 三つはQ = CVで結ばれた同じ式です。電圧一定なら最初の形、電荷一定なら二番目の形を使うと、条件が見えやすくなります。
今回の初期状態では、100 pF × (20 V)² ÷ 2で20 nJです。nJはナノジュールです。材料を入れた後の結果を並べると、次のようになります。
| 量 | 入れる前 | 電源を外して挿入 | 電源につないで挿入 |
|---|---|---|---|
| 容量C | 100 pF | 400 pF | 400 pF |
| 自由電荷Q | 2 nC | 2 nC | 8 nC |
| 電圧V | 20 V | 5 V | 20 V |
| エネルギーU | 20 nJ | 5 nJ | 80 nJ |
電源を外した場合はQが一定なので、容量が4倍になるとQ²/(2C)は4分の1になります。一方、電源へつないだ場合はVが一定なので、CV²/2は4倍になります。U = CV²/2だけを見て「容量が増えたからエネルギーも増える」と結論すると、電圧も同時に変わる前者を取り違えます。
ここで計算したのは、コンデンサに蓄えられるエネルギーです。材料を出し入れする機構や電源まで含めた、装置全体のエネルギーではありません。つないだ電源は電荷を移動させ、材料も電場から力を受けます。容量の増加だけを、外から何も受け取らずエネルギーを増やせる仕組みと解釈することはできません。
比較の前に、接続とモデルの範囲をそろえる
この二つの結果を使い分けるときは、まず外部の導電経路を確認します。孤立して電荷が出入りしないのか、電源が電圧を保つのかで、固定する量が変わります。電圧計をつなぐ場合も、測定中の漏れや入力抵抗を無視できるかによって、電荷一定という近似の成り立つ時間が変わります。
次に、電極の形と、誘電体が満たす範囲を確認します。今回のC = κC₀は、形を変えず、すき間を完全に満たす設定です。一部分だけを入れた状態や、途中に真空の層が残る構造を、そのまま同じ4倍で計算することはできません。
また、比誘電率4は特定製品の性能を表す数字ではありません。実際の材料の損失、漏れ、絶縁破壊の条件は別に確かめる必要があります。ここで求めたのは変化前後の理想的な状態であり、挿入中の電流や、変化が落ち着くまでの時間は計算していません。容量、電荷、電圧を分け、接続で保つ量を先に決めると、同じ材料の効果を異なる条件へ誤って移さずに比較できます。
出典
- [1] OpenStax, Samuel J. Ling, William Moebs, Jeff Sanny, University Physics Volume 2, 8.4 Capacitor with a Dielectric:式8.11・8.12、図8.17。電源を外した場合の容量、電圧、エネルギー。
- [2] 同書、8.5 Molecular Model of a Dielectric:分極の説明、例8.12、図8.22、確認問題8.8。電源へつないだ場合の電荷と電圧。
- [3] 同書、8.3 Energy Stored in a Capacitor:式8.10。本文の100 pF・20 V・比誘電率4の比較と図表は、明記した条件による独自計算。
