二つの入口へ光子を1個ずつ入れ、それぞれが半分の確率で透過・反射する光学部品を通します。出口が二つなら、1個ずつ別の出口へ分かれる場合もありそうです。ところが、光子の性質と到着のタイミングを揃えると、別々の出口で光子を同時に検出する回数が減ります。
これがHong–Ou–Mandel干渉(HOM干渉)です。理想的な50:50ビームスプリッターでは、区別できない二つの光子は同じ出口へまとまって現れます。光子が消えるのではなく、二つの出口へ分かれるという結果が、量子的な干渉によって抑えられます。
簡単にまとめると?
- HOM干渉では、各入口に1個ずつ入れた光子が、別々の出口へ分かれる確率を測ります。平均の明るさだけでは見えない二光子の相関です。
- 理想的な50:50分岐で光子を区別できないと、「両方透過」と「両方反射」の確率振幅が打ち消し合います。
- 到着時間を揃えるだけでなく、偏光・スペクトル・空間的な光の形も関わります。同時検出の谷の深さは、検出器や光源の条件と併せて読む必要があります。
独立に分かれるなら、半分は別の出口に出る
ビームスプリッターは、入射光を透過側と反射側へ分ける光学部品です。ここでは損失のない50:50のものを考え、二つの入力ポートへ1光子ずつ入れます。出力側には、それぞれ検出器を置きます。両方の検出器が同じ測定窓で反応した事象を、ここでは同時検出と呼びます。
光子を区別でき、独立な分岐として数える場合、両方透過・両方反射・片方だけ反射という四つの組合せがあります。このうち両方透過と両方反射は、二つの出力へ1個ずつ分かれる結果になります。それぞれの確率が1/4なので、同時検出の確率は合計1/2です。
この1/2は入力が1個ずつで、分岐比と検出を理想化した値です。光源から何個出たかを確かめず、二つの検出器の計数だけを比べた実験が、そのままこの条件に当たるわけではありません。
打ち消し合うのは、二通りの結果への振幅
偏光などに違いがなく、どちらの入力から来た光子かを出力の状態から区別できないときは、二つの確率をそのまま足しません。同じ「各出口に1個」という結果へ至る、両方透過と両方反射の確率振幅を先に足します。確率振幅は、結果が起こる確率を計算するための量で、位相も持ちます。
理想的な50:50ビームスプリッターでは、この二つの振幅の大きさが等しく、位相が逆になるため、和はゼロになります。残るのは二つとも一方の出口に出る成分です。どちらの出口になるかは決まっておらず、対称な条件なら各出口が半分ずつです。

図の両端は、二つの光子が同じ出力へ向かう成分です。中央の二つだけを打ち消すので、出てくる光のエネルギーがなくなる説明ではありません。また、光子同士が引き合ってくっつくという力を導入する必要もありません。同じ最終状態へ至る二光子全体の振幅の干渉として扱います。
「同じ光子」に必要なのは、到着時刻だけではない
二つの入力の偏光が直交していれば、たとえば横向きの偏光と縦向きの偏光が、出所を見分ける手掛かりになります。検出器が偏光を記録しない場合でも、光の状態に区別が残っていることは変わりません。単に記録を見ないことと、物理的に区別できない状態を用意することは別です。
同じことは周波数の分布や到着時間、光の空間的な形にも当てはまります。遅延を掃引し、二つの光子が最も重なる付近で同時検出が少なくなる様子を描くと、谷のような曲線が現れます。これをHOMディップといいます。谷の幅を一つの光子の普遍的な「長さ」とは扱えず、スペクトルやフィルター、光子間の相関など、用いた状態の条件に依存します。
たとえば独立な純粋状態の単一光子を、ほかの性質を揃えて理想的な50:50分岐へ入れるモデルでは、同時検出確率は P=(1−M)/2 と書けます。Mは二つの状態の重なりの絶対値二乗で、0から1の値です。M=0ならP=1/2、M=1ならP=0。中間のM=0.8ならP=0.1となります。これはモデルからの計算例で、特定の光源の測定値ではありません。混合状態や周波数でもつれた入力には、それぞれに対応した計算が必要です。
谷の深さを比べるときに揃える条件
谷のコントラストを表す可視度を、十分離れた遅延での同時検出数Cfarと、谷底のCminから V=(Cfar−Cmin)/Cfar と定義できます。同じ積算時間で、仮に遠方が1,000回、谷底が80回ならV=0.92です。この例は数え方の説明で、実験成績ではありません。
比較の際には、背景の同時検出を差し引いたか、時間窓をどう選んだか、光源から複数対が出る事象を含むか、分岐比が50:50からどの程度ずれるかを揃えます。低い可視度を、直ちに光子の性質だけの問題と決めつけることはできません。逆に、高い可視度だけで光源の効率や装置全体の成功率まで分かるわけでもありません。
「別々に出なかった」と「二つを数えた」は異なる
通常の単一光子検出器は、反応後しばらく次の光子を記録できない時間を持ちます。その間に同じ出口へ二つの光子が来ても、1回の反応としてしか記録できない場合があります。そこで、別々の出口の検出器が同時に反応しなくなることから、二つが同じ側へ出たと確かめる方法が使われます。
NISTが紹介するShawらの2003年の実験では、受け取った光子数を識別できる遷移端検出器を使い、一つの出力に現れる光子対を直接観測しました。「二つの出力での同時検出が減ること」と「同じ出力で2光子を数えること」は、同じ干渉現象を異なる検出方法で確かめています。HOM干渉のグラフを読むときは、その縦軸がどちらを数えたものかを見ると、実験が直接示している範囲をつかみやすくなります。
出典
資料確認日:2026年10月26日。仕組みと式は2017年の解説資料、光子数を識別する観測は2003年の著者所属機関による紹介に基づきます。新しい装置の性能を報じる記事ではありません。
- Agata M. Brańczyk, Hong-Ou-Mandel Interference, arXiv:1711.00080v1(2017年10月31日)、第2〜4.1節、式(7)〜(12)、(30)、Fig. 2。本文では入力状態の範囲を明示しています。
- Matthew Shawほか、Direct observation of photon pairs at a single output port of a beam-splitter interferometer、NIST掲載の著者要旨(2003年12月16日)。掲載論文:Physical Review A 68, 063817、doi:10.1103/PhysRevA.68.063817。
