レーザーが材料に当たった直後と、その後に衝撃波や飛散物が広がる時間では、現象の進む速さが大きく違います。最初の変化を細かく撮ろうとすると、限られたコマをすぐに使い切る。後まで追おうと撮影間隔を広げると、今度は初期の変化が抜けてしまいます。
東京大学の研究チームが開発したBRIDGE(band-resolved individual delay generation)は、波長ごとの光の到達時刻を個別に変え、この問題に取り組む光学技術です。2026年9月25日付でOpticaに掲載された研究では、最初は密に、後ほど間隔を広げる「対数的超高速撮影」によって、一つの出来事の初期と後期を11コマでつなぎました。大学は10月1日に日本語で発表し、21日にも英語で紹介しています。
簡単にまとめると?
- コマを等間隔にせず、変化の速い初期に多く、後期には広い間隔で配置する撮影法です。
- BRIDGEは光を波長ごとに分け、それぞれの通り道の長さで対象に届く時刻を調整します。
- 一度の出来事を追える利点がある一方、11コマの間にあるすべての変化を連続記録する方法ではありません。
撮影の「細かさ」と「長さ」を、コマの配置でつなぐ
11コマを短い一定間隔で並べれば、速い変化を追いやすくなります。ただし、記録できる時間はコマ間隔10個分です。たとえば1ps間隔なら、最初から最後まで10ps。10ns先まで同じ間隔で記録しようとすれば、11コマでは足りません。これは仕組みを考えるための例で、今回の撮影設定そのものではありません。
対数的な配置では、時間が進むほど撮影間隔を大きくします。初期の急な変化には細かい観測点を使い、後に続くゆっくりした変化へはコマを離して配置します。コマ数を増やす代わりに、どの時間を詳しく見るかを決める方法です。
大学が公開した実験画像の時刻は、照射前の−300fsから、300fs、1ps、3ps、10psと進み、最後は10nsに達しています。1psは1,000fs、1nsは1,000psです。並べた画像が同じ幅でも、隣同士の時間差は同じではありません。動画のように等速で眺めるだけでは、物質が広がる実際の速さを読み違えるため、各コマの時刻を確かめることが大切です。
BRIDGEは光の色を、時刻を分けるために使う
この時刻の配置を実現するため、BRIDGEは短い光パルスに含まれる波長帯を分け、それぞれに異なる光路長を与えます。光は有限の速さで進むので、遠回りした光ほど対象への到達が遅れます。その長さを波長帯ごとに調整し、対象を照らす時刻を個別に設定します。
対象から得られる像も波長ごとに分けて記録します。つまり、光の色はここでは材料の色を写すためだけのものではなく、「どの時刻に照らしたか」を対応付ける手掛かりです。大学の説明では、この仕組みをSTAMPという超高速撮影の方式に組み込んでいます。通常の動画カメラのシャッターを、その場で速めたり遅くしたりする構成とは異なります。
一度の出来事を追うことで、実験ごとの差を避ける
実証では、ガラスとハイドロキシアパタイトにレーザーを照射したときの変化を観察しています。ハイドロキシアパタイトは骨や歯にも含まれる鉱物ですが、この実験をそのまま生体の撮影実証と読み替えることはできません。
公開画像では、初期のプラズマに関わる変化に続き、衝撃波や物質の飛散が現れます。後の時間領域では、二つの材料の広がり方の違いも見えます。一度のレーザー照射について前後を記録できれば、別々の実験で得た初期像と後期像をつなぐ場合に生じる、試料や照射ごとの違いを避けられます。ただし、ガラスとハイドロキシアパタイトの二系列まで、同じ一度の照射で同時に得たという意味ではありません。
| 比べる点 | 確認したいこと |
|---|---|
| コマの間隔 | 変化が起こる時間に観測点が置かれているか。等間隔か、不等間隔か。 |
| 観測する期間 | 照射直後だけでなく、知りたい後続現象まで届くか。 |
| 一度の撮影か | 同じ出来事の前後を追ったか。複数回の実験から再構成したか。 |
| 一枚の露光時間 | 各コマがどの程度の時間を平均して写すか。コマ間隔と別に確認する。 |
空いた時間をどう読むか
間隔を広げれば、後の時間までたどれます。その分、コマとコマの間に起きた短い変化は記録から抜ける可能性があります。測りたい現象が途中で再び急変するなら、その時間にも撮影点を割り当てる必要があります。どの条件でも、等間隔より多くの情報が得られるという保証ではありません。
BRIDGEの意義は、速さの異なる過程を一つの測定の中で比較できるよう、撮影時刻の選択肢を広げた点にあります。レーザー加工などで初期の反応と後の損傷や飛散を結び付けたいとき、単に最高の撮影速度を見るだけでなく、必要な時間にコマを置けるかという観点が加わります。
出典
- Shimadaほか「Logarithmic ultrafast photography with band-resolved individual delay generation」Optica(2026年9月25日)。本稿では掲載論文を特定する書誌情報として示しています。
- 東京大学大学院工学系研究科の研究発表(2026年10月1日)。光学系の説明と実験画像の時刻を参照。
- 東京大学「Quality over quantity in ultrafast photography」(2026年10月21日)。STAMPへの実装と、一度の現象を追う狙いを参照。二つの大学発表は同じ研究の紹介です。
掲載論文の全文・補足資料は未確認です。実験条件と結果の説明は大学が公開した本文・図に基づき、個別の露光時間や装置全体の性能比較は扱っていません。
