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  • 東大とENEOS XploraのCO₂鉱物化モデル、カンラン石の表面から反応の速さを読む

    東大とENEOS XploraのCO₂鉱物化モデル、カンラン石の表面から反応の速さを読む

    CO₂を岩石と反応させ、炭酸塩という固体に変える「CO₂鉱物化」。固定できる量が多い岩石でも、反応に長い時間がかかれば、実際に使える量は限られます。そこで必要になるのが、岩石の成分だけでなく、反応が進む速さを見積もることです。

    東京大学とENEOS Xploraの研究グループは、カンラン石の表面で起きる反応を取り入れ、その種類による速度の違いを説明するモデルを報告しました。論文掲載は2026年10月14日、大学発表は10月16日です。注目したいのは、CO₂を固定する材料の評価に、表面の酸素がどう反応するかという視点を加えたことです。

    簡単にまとめると?

    • カンラン石は、カルシウムやマグネシウムなどを含むケイ酸塩鉱物。含まれる金属が変わると、CO₂との反応の速さも変わります。
    • 今回のモデルは、CO₂と鉱物表面の直接反応が金属イオンの溶け出しやすさを変える効果を取り込みました。
    • 計算が説明するのは特定の鉱物・反応条件での速度です。地下貯留層全体の固定量や事業の採算を実証した結果ではありません。

    金属の量だけでは、固定の速さは決まらない

    カンラン石は単一の組成の物質を指す名前ではありません。今回の研究では、Caを含むものとMgを含むものの反応性の差が問題になります。Caはカルシウム、Mgはマグネシウムの元素記号です。

    炭酸塩ができる過程を考えると、金属イオンが鉱物から溶け出し、その後に炭酸塩として析出する道筋があります。このため、炭酸塩をつくる金属がどれだけ含まれるかと、その金属がどの速さで取り出されるかは、別々に見る必要があります。材料をたくさん用意しても、反応できる場所へCO₂が届かなかったり、金属が溶け出しにくかったりすれば、同じ時間で固定できる量は増えません。

    表面の酸素を介して、溶解が進みやすくなる

    研究が扱うのは、CO₂分子が鉱物表面の「非架橋酸素」と反応する経路です。ケイ酸塩の骨格では酸素がケイ素どうしをつなぐ場合がありますが、非架橋酸素はそのような橋をつくっていない酸素を指します。表面では、CO₂との反応に関わる場所になります。

    この反応によって、結晶にとどまっていた金属イオンが溶け出すためのエネルギーの壁が変わります。研究グループは、原子や電子の振る舞いから反応を計算する第一原理分子動力学と、鉱物の溶解・析出を扱う地球化学反応モデルを組み合わせました。金属の種類の違いを、周囲の酸素の反応しやすさと結び付けて説明する試みです。

    論文要旨では、Caカンラン石の表面反応によってCa²⁺の溶解障壁が60%低下し、イオン放出が6桁速くなる計算結果を報告しています。ここでの6桁は、モデルが扱うイオン放出過程の比較です。CO₂回収設備全体が100万倍速くなる、という意味には読み替えられません。

    「数時間で反応する」と「地下で使える」の間

    著者らは計算した見かけの溶解速度定数を使い、1気圧のCO₂条件でCaカンラン石が数時間で反応する既存の実験結果を再現したとしています。大学発表では、この照合を約2時間と説明しています。新しい地下実証施設で2時間の固定を達成した報告とは区別して読む必要があります。

    速度定数は、反応の進みやすさをモデルに渡す値です。貯留層で何トン固定できるかを求めるには、さらに岩石の分布、流体の通り道、反応できる表面積などが関わります。鉱物が速く反応しても、CO₂を含む流体が届く範囲は有限です。反対に、流体がよく通る場所でも、反応性の低い鉱物ばかりなら固定が速く進むとは限りません。

    比較する項目 答えようとする問い
    鉱物の組成 炭酸塩をつくる金属をどれだけ含むか
    表面反応と溶解速度 その条件で、どの速さで反応が進むか
    貯留層の構造と流れ CO₂がどこへ届き、どの範囲を利用できるか

    この表は、鉱物の反応と貯留層の評価を分けるための整理です。今回の研究によって進んだのは、主に二つ目の理解です。研究グループは、反応速度のモデルを流体の移動や地下構造の情報へ結び付けることを今後の課題としています。

    CO₂鉱物化の報告を比べるときは、固定量の数字に加え、鉱物の種類、CO₂の条件、測った時間、計算と実験のどちらの結果かを確かめると、技術の進展を読み取りやすくなります。本稿で確認したのは論文の公開要旨と大学発表の範囲で、詳細な計算条件や補足資料までの評価は含みません。

    共同研究に参加したENEOS Xploraの事業は、CyclewaveのENEOS Xploraの企業解説で紹介しています。石油・天然ガスの開発から国内供給、CO₂の回収・地下貯留への取り組みまで、会社が担う範囲を知るための案内です。

    出典