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  • Vertivが示す800V DC、AIサーバーへの給電はどう変わる?

    Vertivが示す800V DC、AIサーバーへの給電はどう変わる?

    AIサーバーを増やすとき、必要になるのは計算用のチップや冷却装置だけではありません。電気を届ける配線と電源装置にも、もう少し余裕がほしくなります。

    そこで進んでいるのが、ラックへ電気を送る直流の電圧を高める設計です。2026年8月、台北で開かれたOCP APAC Summitで、VertivのHenrik Nilén氏は800V DCへの移行を、電源の置き場所や変換の仕方まで含めて紹介しました。[1・2]

    この発表を読むと、電圧だけでなく、どこで変換し、どの区間を高い電圧のまま運ぶかが大切だと分かります。

    簡単にまとめると?

    • 同じ電力なら電圧を上げるほど電流を減らせますが、配線の太さを同じ比率で減らせるわけではありません。
    • 800Vをチップへ直接加えず、ラックやサーバー側のDC/DC変換で必要な低電圧へ下げます。
    • 全体の効率は電圧だけでは決まらず、変換段と、どこからどこまでを測るかが重要です。

    電圧を上げると、配線にはどんな余裕が生まれる?

    直流の電力は、電圧と電流を掛けた値です。同じ電力を届けるなら、電圧を上げるほど必要な電流を減らせます。

    たとえば300kWを送る場合、変換損失をいったん除いて計算すると、50Vでは6,000A、800Vでは375Aになります。電圧が16倍になるので、電流は16分の1です。

    300kWを送るときの電圧単純計算した合計電流
    50V DC6,000A
    800V DC375A

    これは電圧と電流の関係をつかむための計算です。実機では複数の経路に分けて配電するため、この値がそのままケーブル1本を流れるわけではありません。

    配線の抵抗が同じなら、そこで熱になる電力は電流の2乗に比例します。電流を減らせると、発熱や電圧降下を抑えやすくなり、太い銅の導体をどれだけ使うかにも選択の余地が生まれます。高電圧の直流配電が、ラック内のスペースや銅の使用量と一緒に議論される理由です。[3]

    もちろん、ケーブルの太さを16分の1にできる、という意味ではありません。温度、接続部、保護装置、絶縁などの条件も満たす必要があります。

    電源をラックの外へ移す、その先に800Vがある

    もう一つ変わるのが、電源装置の置き場所です。

    発表では、サーバーと同じラックに置いていた電源や蓄電装置を、隣の専用ラックへ移す構成が示されています。この隣接する電源ラックが「サイドカー」です。まず50Vのまま電源を外へ出し、その後、ラック間の配電を800Vへ変える流れとして描かれています。[2]

    ラックの中を計算用の機器に使いやすくすることと、ラックへ電気を運びやすくすること。二つの課題を、配置と電圧の両方から解いていくわけです。

    ただし、800Vをそのままチップへ加えるわけではありません。ラックやサーバー側で、直流の電圧を変えるDC/DC変換を行い、チップが使う低い電圧へ段階的に下げます。800V対応サーバーになっても、この役割は残ります。[3]

    同じ「800V」でも、接地の仕方が違う

    資料では、0〜800V DCと±400V DCが分けて扱われています。±400Vは、接地した中点に対して片側がプラス400V、もう片側がマイナス400Vとなる構成です。両端の差は800Vでも、負極を接地する0〜800Vの構成とは、接地に対する電圧が異なります。[2]

    受け取る機器から見れば、端子間の電圧だけが合っていればよい、とは限りません。どこを接地の基準にするのかによって、絶縁や保護の設計も変わります。「800V対応」という表示を読むときは、その電源方式までそろえて見る必要があります。

    効率は「800Vだから高い」とは決められない

    発表の比較例には、少し立ち止まって見たい数字があります。

    交流の配電幹線から受電する構成で、ラック内に50V電源と蓄電装置を置く例の電力供給経路の効率は約96.5%。一方、800Vのサイドカーから送り、ITラック側にDC/DC変換器を置く例は約96%です。800Vを受け取るサーバーまで含めた構成では、96.5%超が示されています。[2]

    いずれも発表中の構成例の値で、負荷率や細かな測定条件はスライドに示されていません。それでも、電圧を上げるだけで全体の効率が決まらないことは読み取れます。

    配線で減らせる損失があっても、途中で電圧を変える装置にも損失はあります。電源単体の効率、ラックへ届くまでの効率、チップが使える電圧まで含めた効率は、同じ指標ではありません。

    新しい構成を比べるときには、「何Vか」に続けて、どこからどこまでを測り、間にどんな変換を挟んでいるかを見る。そうすると、数字の意味がずっとつかみやすくなります。

    電気の通り道を、ラック全体から見直す

    800V化で得たいのは、大きな電力を無理なく届けるための余裕です。電流を減らし、電源の置き場所を変え、必要な変換を整理する。その組み合わせで、サーバーを収める場所と電気の通り道を整えていきます。

    今回の発表から見えてくるのは、電源装置だけを高性能にする発想から、ラックへ届くまでの仕組みをまとめて考える設計への広がりです。配線、接地、変換段、効率の測定範囲を一緒に眺めると、800Vという数字の先にある工夫が見えてきます。

    発表したVertivの事業全体は、cyclewaveの企業記事にまとめています。

    参考資料

    2026年9月22日確認。発表の解説は公開スライドをもとにしています。動画内の発言や質疑応答は、本記事の根拠には含めていません。

    1. Open Compute Project「2026 OCP APAC Summit」発表一覧 — 「800V DC Power Trends」、Henrik Nilén(Vertiv)。
    2. Henrik Nilén「800V DC Power Trends」公式掲載スライド — pp.7–9。接地方式、配置の変化、電力供給経路の効率。
    3. NVIDIA Technical Blog「NVIDIA 800 VDC Architecture Will Power the Next Generation of AI Factories」 — 2025年5月20日。高電圧配電とラック内DC/DC変換の背景説明に使用。