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  • 四分の一波長板、45度で円偏光になるのはなぜか

    四分の一波長板、45度で円偏光になるのはなぜか

    直線偏光の光を四分の一波長板へ通すと、円偏光に変えられます。ただし、板を置くだけで必ず円になるわけではありません。同じ板でも、光の振動方向と板の軸の角度によって、直線のままだったり、楕円になったりします。

    鍵になるのは、二つの直交する成分の振幅と位相差です。振幅は振動の大きさ、位相差は振動のタイミングのずれ。この二つを分けると、「45度に合わせる」という操作の意味が見えてきます。

    簡単にまとめると?

    • 四分の一波長板は、二つの軸方向の偏光成分に90度の位相差を与える光学素子です。理想的には、一方の成分を取り除く偏光板とは違い、振幅を保ったまま位相の関係を変えます。
    • 直線偏光を板の軸から45度で入れると二成分の振幅が等しくなり、90度の位相差と組み合わさって円偏光になります。軸にそろえると直線のまま、途中の角度では通常は楕円です。
    • 波長と軸角度を確かめ、検光子を回した明るさの変化を見ます。ただし「明るさが一定」だけでは、円偏光と無偏光を区別できません。

    板が変えるのは、二成分の相対的な位相

    光の電場は、進む向きに垂直な面の中で振動します。ある場所で時間とともに電場の先端が直線を往復するものを直線偏光、円を描くものを円偏光、楕円を描くものを楕円偏光と呼びます。ここで描いているのは電場の変化で、光の進路が円を描くという意味ではありません。

    四分の一波長板には、互いに直交する二つの主軸があります。軸ごとに屈折率が異なる複屈折の性質を使い、対応する偏光成分の位相の進み方を変えます。位相速度の速い軸が速軸、遅い軸が遅軸です。MITの講義資料は、二成分の重ね合わせが、伝わる間に直線から楕円、円へ変わる様子を説明しています。[1]

    「遅れる」といっても、ここで比べるのは同じ周波数の波の位相です。短い光パルスの到着時刻や、情報の伝わる速さを、そのまま90度という値で表しているわけではありません。

    「四分の一」は板の厚さではない

    位相の一周期は360度です。四分の一波長板では、対象の波長に対して二成分の相対位相を90度、すなわち一周期の四分の一だけずらします。これは物理的な厚さが波長の四分の一という意味ではありません。

    単純な一枚の複屈折材料へ垂直に入射するモデルでは、厚さをd、二軸の屈折率差をΔn、真空中の波長をλとすると、位相差の大きさδは次のようになります。[1]

    δ = 2π Δn d / λ

    たとえば、説明用にλ = 532 nm、Δn = 0.01と置き、余分な一周期を含まないδ = π/2の条件を選ぶと、d = λ/(4Δn) = 13.3 μmです。532 nmの四分の一である133 nmとは100倍違います。この数値は式を確かめるための仮定で、特定の材料や製品の仕様ではありません。

    式に波長が入っているため、ある波長で90度になる板が、別の波長でも同じ位相差になるとは限りません。実際には屈折率差も波長によって変わります。広い波長域の光を扱う場合は、軸の向きに加え、どの波長域で所定の位相差を与える設計かを見る必要があります。

    45度で、二つの振幅が等しくなる

    入射する直線偏光の電場振幅をE0、その向きと速軸との角度をθとします。二軸へ分けた振幅は、それぞれE0 cos θとE0 sin θです。板の向きを変えると、この配分が変わります。

    θ = 0度なら、一方の軸の成分しかありません。もう一方との位相差をつけても、比較する成分がないため、偏光は直線のままです。θ = 45度なら二成分が等しくなります。そこへ90度の位相差が加わると、一方が最大のとき他方は0になり、電場の先端が円を描きます。

    では30度ならどうでしょう。二つの振幅は約0.866 E0と0.5 E0です。位相差が90度でも大きさがそろわないので、先端の軌跡は楕円になります。短軸と長軸の比は0.5/0.866、約0.577です。円偏光に必要なのは「90度の位相差」だけでなく「等しい振幅」も、ということです。

    理想的な四分の一波長板の軸に対する入射直線偏光の角度比較。0度は直線、30度は楕円、45度は円。検光子の透過率はそれぞれ0から100%、25から75%、50%一定。
    位相差を90度に固定した独自計算。光の進行方向に垂直な面で、ある一点の電場の先端を一周期分描いています。軌跡は光線の経路ではありません。横軸は速軸方向、縦軸は遅軸方向の電場成分です。各図は同じ入射強度を基準にしています。

    MITの実演でも、軸をそろえた場合、軸から少し外した場合、およそ45度にした場合を分け、後ろに置いた偏光板で明るさの変化を調べています。[2] 理想条件での円と、実物で円に近づけた状態は区別して考えます。

    検光子を回すと、何が分かるか

    偏光を調べるために使う偏光板を検光子と呼びます。直線偏光なら、その透過軸を回すと明るさが変わり、直交する向きで理想的には暗くなります。円偏光なら、どの向きにも同じ成分があるため、理想的な線偏光の検光子を通った平均強度は一定です。

    今回の損失のないモデルで、波長板へ入る直線偏光の強度を100%とすると、0度入力の検光子透過率は0〜100%、30度入力では25〜75%、45度入力では50%で一定になります。波長板が光の半分を消しているのではありません。45度入力で50%になるのは、その後ろの検光子を通した結果です。

    ただし、無偏光を理想的な検光子へ通した場合も平均強度は50%で一定です。したがって、明るさが変わらないという観測だけで円偏光と断定することはできません。入射光が直線偏光であることを先に確認したり、別の波長板で位相差を補い、直線偏光へ戻せるかを調べたりして、確認条件を増やします。完全に無偏光の光は、位相だけを変える理想的な波長板を一枚通しただけでは円偏光になりません。

    角度が合っていても、位相差がずれると楕円になる

    角度と位相差は別々の調整条件です。入力角を45度にそろえたまま、位相差だけが90度から80度へずれた場合を計算すると、検光子の透過率は約41.3〜58.7%の間で変わります。電場の軌跡は円ではなく、短軸と長軸の比が約0.839の楕円になります。

    そのため、明るさに揺れが残ったときに、原因を軸角度のずれだけへ決めつけることはできません。入力の偏光、使用波長に対する位相差、入射方向、素子の損失などを順に切り分けます。今回の計算では吸収・反射・散乱を無視し、単色で完全に直線偏光した光を仮定しています。実物の透過率を保証する値ではありません。

    名前の似た半波長板は、相対位相を180度ずらす素子です。適切な配置で直線偏光の向きを変える用途があり、四分の一波長板と同じものではありません。MITの実習資料でも、二種類の板の軸を見つけ、どちらの板かを区別する課題を設けています。[3]

    四分の一波長板を読む順序は、まず入射光の偏光、次に主軸との角度、そして波長に対する位相差です。「45度だから円」という一条件だけで判断せず、等振幅と90度の位相差がそろっているかを見ると、偏光の変換を具体的に捉えられます。

    出典

    1. MIT OpenCourseWare, 6.013 Electromagnetics and Applications, Spring 2009, Chapter 9. Section 9.5.1、pp.293–295、Figure 9.5.3、Example 9.5A。講義資料PDF
    2. MIT Video Demonstrations in Lasers and Optics, “Optics: Quarter-wave plate.” Spring 2008コースに収録された実演の公式書き起こし、pp.1–2。実演書き起こしPDF
    3. MIT 6.161 Modern Optics Project Laboratory, Laboratory Exercise No. 2, Fall 2017. Section 2.3、p.4。実習資料PDF