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  • 表皮効果、周波数が高いほど電流が表面に集まる理由

    表皮効果、周波数が高いほど電流が表面に集まる理由

    金属線を太くすれば、電流の通り道が広がり、抵抗は小さくなります。ただし、交流の周波数が高くなると、断面全体を均等に使えるとは限りません。電流が表面近くへ偏る表皮効果が現れるからです。導体の太さを考えるときには、外形だけでなく、電流がどのくらいの深さまで分布するかも見る必要があります。

    簡単にまとめると?

    • 交流が作る変動磁場と誘導電場の作用で、電流密度は導体の表面近くほど大きくなります。
    • 表皮深さは電流の振幅が表面の約37%になる深さです。そこから先が急に流れなくなる境界ではありません。
    • 同じ材料条件なら、周波数を100倍にすると表皮深さは10分の1になります。導体の半径や厚さと比べることが設計の出発点です。

    交流では、電流が作る磁場も変化する

    電流の周囲には磁場が生まれます。交流では電流の向きと大きさが繰り返し変わるため、磁場も変化します。その変化は、変化を妨げる向きの電場を導体内に誘導します。電流を流す電場と、この誘導電場を合わせて考えると、導体の奥まで同じように電流が流れる分布ではなく、表面から内側へ弱まる分布になります。周波数が高いほど、この偏りが浅い範囲に集中します。[1]

    これは、電子が外向きに押し出されて中心が空になる、という意味ではありません。どこでどれだけの電流密度が生じるかの違いです。電流密度は、単位断面積あたりに流れる電流を表します。また、奥の電流は振幅が小さくなるだけでなく、表面の電流との位相もずれます。以下では比較しやすいように、時間とともに振動する電流密度の「振幅」を扱います。

    表皮深さは「流れる・流れない」の境目ではない

    均質な良導体が表面から十分深くまで続くモデルでは、深さxでの電流密度の振幅は、表面を1としてexp(−x/δ)に比例して減少します。このδが表皮深さです。x=δでは約0.368、2δでは約0.135、3δでは約0.050になります。なだらかに減るので、δを超えたところにも電流はあります。[1、2]

    ここで、振幅と発熱を混同しないことも大切です。同じ導電率の材料で、ある場所の時間平均のジュール発熱密度は電流密度振幅の2乗に比例します。このモデルのδの位置では、振幅は表面の約37%ですが、局所的な平均発熱密度は約14%です。これは「導体全体の発熱が14%になる」という意味ではなく、表面とその深さにある場所を比べた値です。

    周波数を100倍にすると、深さは10分の1

    表皮深さは、周波数f、透磁率μ、導電率σを用いて、δ=1/√(πfμσ)と表せます。透磁率は磁場に対する材料の応答、導電率は電流の流れやすさを表す量です。この式は、伝導電流が変位電流より十分大きい良導体の近似に基づきます。σが角周波数と誘電率の積より十分大きい、という条件です。[2、式9.2.48]

    独自の計算例として、導電率を5.0×107 S/m、透磁率を4π×10−7 H/mに固定した仮想導体を考えます。後者は非磁性導体を考えるための近似値です。特定の製品や実測試料の値ではありません。

    周波数 計算した表皮深さ 1 kHzに対する深さ
    1 kHz 約2.25 mm 1
    100 kHz 約0.225 mm 1/10
    1 MHz 約0.0712 mm 約1/31.6

    周波数は平方根の中に入るため、100倍にしても深さが100分の1になるわけではありません。100 kHzから1 MHzへの10倍の変化では、深さは約3.16分の1になります。

    十分厚い仮想導体での電流密度振幅の独自計算。表面を1とすると、1MHzでは100kHzより浅い位置で減衰する。表皮深さはそれぞれ約0.071mmと0.225mmで、そこで振幅は約0.368になる。
    同じ仮想導体の表面から内側へ測った、電流密度振幅の減衰。各曲線の表面振幅を1にそろえた独自計算であり、同じ総電流を流した場合の比較ではありません。点はそれぞれの表皮深さを示します。

    太さを増やす前に、半径と表皮深さを比べる

    たとえば半径1 mmの丸線を考えると、上の1 kHzの表皮深さ2.25 mmは半径より大きい値です。こうした条件へ「表面の薄い層だけが電流を運ぶ」という近似を当てはめるのは適切ではありません。有限の太さをもつ線では、円形の形状と境界条件を考える必要があります。

    一方、1 MHzでは表皮深さが半径よりかなり小さくなります。表皮効果が十分強く、周囲の導体の影響を無視できる丸線なら、抵抗の目安を求めるときに、断面積πr2の代わりに外周と表皮深さの積2πrδを使う近似ができます。これは電流を境界で切り捨てるという意味ではなく、減衰と位相を含む分布から得られる、高周波側の抵抗の目安です。

    この近似から、材料と周波数を固定した強い表皮効果の範囲では、半径を2倍にしても交流抵抗はおおむね半分にとどまる、と見積もれます。断面をほぼ均等に使う直流の「半径2倍で抵抗4分の1」とは異なります。また、材料特性が変わらなければ、表皮効果による抵抗は周波数の平方根におおむね比例します。いずれも単独導体の近似から得た比較で、実装全体の損失を保証する数値ではありません。

    実際の配線では、周囲と材料の条件も必要

    見積もりでは、まず扱う周波数と材料特性からδを求め、次に導体の厚さや半径と比較します。δが寸法より十分小さい場合に、表面近くへ集中する近似が役立ちます。比較する寸法と同程度なら、有限の形状を考慮した計算へ進みます。薄い導体に半無限のグラフをそのまま当てはめないことが要点です。

    さらに、近くの配線が作る磁場も電流分布を変えます。これは近接効果と呼ばれ、表皮効果だけで交流抵抗の増加を説明できない理由になります。磁性材料では透磁率が周波数や磁場の強さによって変わる場合があり、一定のμを入れた上の計算例から外れます。表皮深さは導体を選ぶための有用な目安ですが、周波数、材料、形状、周囲の配線という条件と組にして使う量です。

    出典

    1. Hermann A. Haus, James R. Melcher, Electromagnetic Fields and Energy — 10.7 Skin Effect。式(5)、Example 10.7.1、Fig.10.7.2。
    2. David H. Staelin, Electromagnetics and Applications(PDFの著作権年は2011年。MIT OCWのSpring 2009コースで公開)。p.271、式9.2.48。表とグラフは本文の仮定に基づく独自計算。