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  • ホイートストンブリッジは、小さな抵抗変化をどう電圧に変えるか

    ホイートストンブリッジは、小さな抵抗変化をどう電圧に変えるか

    金属の部材がわずかに伸びると、そこに貼ったひずみゲージの電気抵抗も変わります。その小さな変化を電圧として取り出す回路が、ホイートストンブリッジです。四つの抵抗をつなぎ、二つの中点の電圧差を読みます。

    なぜ抵抗を四つ使うのでしょうか。片側を比較の基準にすると、もともとの大きな電圧から、変化した分に対応する小さな差を取り出せます。ただし、ゼロからのずれがすべて測りたい変形によるものとは限りません。抵抗の配置と初期値まで分かると、出力の読み方が見えてきます。

    簡単にまとめると?

    • ホイートストンブリッジは、二つの分圧回路の中点電圧を比べます。四つの抵抗が等しい場合だけでなく、左右の抵抗比が等しいときにも出力はゼロになります。
    • 一つの抵抗だけを変える例では、抵抗の変化率が0.1%、電源が5Vなら、出力は約1.25mVです。符号は抵抗の位置と電圧差を取る向きで変わります。
    • 二つのゲージを使っても、変化を足せるか打ち消すかは配置次第です。測定前のずれ、電源電圧、読み取り回路の条件を切り分けます。

    四つの抵抗を、二つの分圧回路として見る

    まず、回路の上側へ電源電圧Vs、下側へ0Vを加えます。左列は上からR1とR2、右列は上からR3とR4です。左の中点をA、右の中点をBとし、出力をVout=VA−VBと決めます。

    ここでは、読み取り回路へ流れ出す電流を無視できる理想条件を考えます。それぞれの中点の電圧は、下側の抵抗が列全体に占める割合で決まります。

    VA=VsR2/(R1+R2)
    VB=VsR4/(R3+R4)

    二つの分圧回路を比べるホイートストンブリッジ。左はR1とR2、右はR3とR4で、中点AからBを引いた電圧を読む。右上のR3を350Ωから350.35Ωへ変える計算例では、5V電源に対して出力は約1.249mV。
    抵抗の位置と出力の向きを固定した計算例。R3だけが増えるとBの電圧が下がり、A−Bは正になります。数値は理想回路の計算で、実測値ではありません。

    四つがすべて350Ωなら、AもBも電源電圧の半分です。5Vを加えた場合、各中点は2.5Vでも、その差は0Vになります。これが平衡した状態です。

    平衡の条件を式から整理すると、R1R4=R2R3、つまりR1/R2=R3/R4です。たとえば左が上100Ω・下200Ω、右が上150Ω・下300Ωでも、両中点は電源電圧の3分の2になり、差はゼロです。平衡とは四つの値が同じことよりも、左右の比がそろっていることなのです。

    350Ωが350.35Ωになると、約1.25mVが現れる

    今度は四つともR=350Ωの状態から、右上のR3だけがΔR=0.35Ω増えるとします。変わる素子が一つの構成は、クォーターブリッジと呼ばれます。以下は変化を読むための説明用の数値で、特定のゲージの仕様ではありません。

    左のAは2.5Vのままです。右のBは5×350/700.35≒2.498751Vとなり、出力は約0.001249V、つまり約1.249mVになります。右上の抵抗が増えると右列の電流が減り、右下の抵抗にかかる電圧も減るためです。

    抵抗の変化率をx=ΔR/Rと置けば、同じ配置の出力は次のようにまとめられます。

    Vout/Vs=1/2−1/(2+x)=x/(4+2x)

    xの大きさが1より十分小さければ、分母はほぼ4なので、Vout≒Vsx/4です。今回のx=0.001では近似値が1.250mV、厳密値が約1.249375mVで、近似の相対誤差は約0.05%です。x=0.02まで大きくすると、同じ近似の誤差は1%になります。「小さな変化」としてどこまで扱えるかは、必要な精度と合わせて決められます。

    この符号は、右上を増やし、AからBを引くという約束に対応します。測定端子を逆にすれば符号も逆になります。資料ごとに抵抗番号が異なることがあるため、式だけを移す前に、どの抵抗がどこにあるかを図と合わせる必要があります。

    ゲージを二つ使うときは、変化の向きをそろえて足す

    部材が曲がると、一方の表面は伸び、反対側は縮みます。MITの梁の曲げ実験資料では、この二つの変化をブリッジの左右の上側へ配置して読み取っています。伸び側と縮み側を入れ替えると、出力の極性が反転します。資料のAppendix Bは、この配置と式の対応を示しています。[1]

    先ほどの回路でも、左上をR−ΔR、右上をR+ΔR、下側二つをRにすると、Aは上がり、Bは下がります。差を取ることで二つの変化が加わり、出力はVs×2x/(4−x²)になります。x=0.001、電源5Vなら約2.500001mVです。一つだけを変えた場合のおよそ2倍になります。

    一方、左右の上側が両方とも同じだけ増え、下側二つが同じ値のままなら、AとBは同じ電圧へ下がるため、差はゼロです。ゲージの数だけでは感度を決められません。測りたい変形が、それぞれの抵抗をどちらへ動かすかまで含めた配置が必要です。

    ゼロ点と感度を別々に確かめる

    実際の部品では、負荷を加える前から抵抗値に差があり得ます。右上だけが初めから350.35Ωなら、先ほどと同じ約1.249mVが、測りたい変形がなくても現れます。負荷をかける前の出力を記録するゼロ点の確認と、既知の変化に対する出力を調べる感度の確認は、別の役割を持ちます。

    また、理想回路の式でも出力はVsに比例します。抵抗が変わらないまま電源を5Vから5.05Vへ上げれば、出力も1%増えます。出力を電源電圧で割った比を併記すると、この電源差を切り分けやすくなります。最初の例なら約0.249875mV/Vです。ただし、読み取り側の基準電圧や計測誤差まで自動で消えるわけではありません。

    温度の影響も、どの抵抗にどう現れるかで結果が変わります。四つすべてが同じ倍率で変わる理想例では、各分圧比が保たれるため出力比は変わりません。一つだけが変われば、変形による抵抗変化と同じ経路で出力へ現れます。温度が変わっても測りたい差だけを残すには、素子の応答と配置を合わせる必要があります。

    最後に、ここまでの式は中点から電流を取り出さないという条件でした。読み取り回路の入力抵抗が低ければ、その接続自体が電圧を変えます。増幅器の入力条件や測れる電圧範囲も確認して初めて、計算した小さな差を実際の測定につなげられます。ホイートストンブリッジを読む手掛かりは、四つの抵抗の値だけでなく、二つの比、差を取る向き、測定前の基準をそろえることにあります。

    出典

    1. L. L. Bucciarelli / MIT OpenCourseWare「1.101 Structures Lab., Week 2 – Beam Bending」(Fall 2005、2005年10月25日)。Appendix B、PDF13ページ/紙面表示14ページ。二つの能動ゲージの配置、差動電圧と抵抗変化の関係を参照。実験資料PDF

    本文の350Ω・5Vの例、近似誤差、平衡する異なる抵抗値の例と図は、明記した理想回路の条件から計算したものです。