直列RLC共振、電源より大きな電圧がコイルとコンデンサに現れる理由

山と谷が反対に並ぶ青緑と桃色の二本の大きな波形リボンの間に、細い真珠色のリボンが通る抽象アート

抵抗、コイル、コンデンサを直列につなぎ、交流を加えると、ある周波数で電流が最も大きくなります。これが直列RLC回路の共振です。このとき、コイルやコンデンサの両端には、電源より大きな電圧が現れることがあります。直列なのに電圧の合計が合わなくなるように見えますが、交流では大きさだけでなく、波のタイミングも含めて足す必要があります。

簡単にまとめると?

  • 共振では、コイルとコンデンサのリアクタンスが等しくなります。電源から見たインピーダンスは、回路全体の直列抵抗Rになります。
  • 部品の電圧がゼロになるわけではありません。コイルとコンデンサの電圧は逆位相なので、大きな電圧でも互いに打ち消し合います。
  • 独自の理想計算では、電源1 Vに対して部品の電圧が各10 Vになります。値はすべて実効値です。この倍率と共振の鋭さはQ値に関係しますが、電力を無から増やす仕組みではありません。

電流は同じでも、部品の電圧のタイミングは違う

Rは抵抗、Lはコイルのインダクタンス、Cはコンデンサの静電容量を表します。直列回路なので三つには同じ電流が流れます。ここでは理想的なLとC、周波数によらず一定の正のRを用い、正弦波を加えて十分に時間がたった定常状態を考えます。電源の内部抵抗や配線の抵抗を考える場合も、直列につながる抵抗はRに含めます。

抵抗の電圧は電流と同じタイミングで増減します。コイルの電圧は電流より4分の1周期進み、コンデンサの電圧は4分の1周期遅れます。したがって、コイルとコンデンサの電圧は互いに半周期ずれています。一方が正の山になる瞬間に、もう一方は負の谷になります。[1]

この大きさとタイミングを、矢印の長さと向きで表す方法をフェーザと呼びます。同じ周波数の正弦波を比べる道具で、部品の位置関係を描く配線図ではありません。交流の電圧を足すときは、この向きも含めた足し算をします。

共振で打ち消されるのは、二つのリアクタンス

コイルとコンデンサが交流に対して示す、位相のずれを伴う妨げをリアクタンスと呼びます。大きさはコイルがXL = ωL、コンデンサがXC = 1/(ωC)です。ωは角周波数で、周波数fとはω = 2πfの関係があります。二つのリアクタンスは周波数に対して逆向きに変わります。

直列回路のインピーダンスの大きさは|Z| = √{R² + (XL − XC)²}です。[1] 抵抗の分と、二つのリアクタンスの差を組み合わせた値になります。電源電圧の実効値をVとすると、電流の実効値はI = V/|Z|です。実効値は、同じ抵抗に同じ平均電力を与える直流の値に対応します。正弦波の最大値は、実効値の√2倍です。[2]

XL = XCとなる周波数では差がゼロになり、|Z|は最小のRになります。電源の電圧を一定にして周波数を変えると、電流はここで最大になります。その周波数はf₀ = 1/(2π√LC)です。[3] この「電源から見た妨げがRだけになる」という結果を、コイルとコンデンサそれぞれの電圧がなくなることと混同しないのが要点です。

電源1 Vから、部品には10 Vが現れる計算

比較用に、L = 10 mH、C = 1 μF、R = 10 Ω、電源V = 1 Vの回路を設定します。mHはミリヘンリー、μFはマイクロファラドです。ここから先の電圧と電流は、すべて実効値でそろえます。特定の部品を測った値ではなく、明記した理想モデルの独自計算です。

共振の角周波数は10,000 rad/s、周波数は約1,592 Hzになります。このときXLもXCも100 Ωです。回路全体の|Z|は10 Ωなので、電流は1 V ÷ 10 Ωで0.1 Aです。

抵抗の電圧は0.1 A × 10 Ωで1 V。一方、コイルとコンデンサの電圧の大きさは、どちらも0.1 A × 100 Ωで10 Vになります。1 Vの電源に対して、各部品に10倍の電圧がかかる計算です。

共振時の直列RLC回路の電圧を電流基準のフェーザで表した独自図。コイル10ボルトとコンデンサ10ボルトが逆向きで打ち消し、抵抗と電源の1ボルトが残る。値は実効値。
電流を基準にした、共振時の電圧のフェーザ。縦の10 Vと−10 Vが打ち消し、横の1 Vが残る。矢印は部品の配置ではなく、同じ周波数の電圧の大きさと位相を表す。QSによる独自計算・作図。

大きさだけを1 + 10 + 10と足すと21 Vですが、それはこの回路の電源電圧ではありません。コイルとコンデンサは逆向きのフェーザなので、二つの和はゼロです。抵抗の1 Vが電源の1 Vと一致します。これは平均したときだけのつじつま合わせではなく、各瞬間の電圧にも成り立ちます。コイルの電圧が正の最大値になる瞬間には、コンデンサの電圧が同じ大きさの負の最大値になります。

Q値が示す倍率と、抵抗を増やしたときの変化

この直列RLCモデルのQ値は、Q = ω₀L/Rです。[3] 今回は100 Ω ÷ 10 Ωで10になります。共振時にはI = V/Rなので、コイルの電圧を電源電圧で割ると、IXL/V = ω₀L/R = Qです。コンデンサも同じ倍率になります。Q値は、単に大きいほどあらゆる用途でよい、という性能点数ではありません。

LとC、電源電圧を変えず、直列抵抗だけを20 Ωにした場合も計算します。共振周波数は約1,592 Hzのままですが、電流は0.05 A、各部品の電圧は5 Vになり、Qは5へ下がります。

共振時に比べる量 R = 10 Ω R = 20 Ω
Q値 10 5
電流の実効値 0.1 A 0.05 A
コイル・コンデンサ各電圧 10 V 5 V
抵抗で消費する平均電力 0.1 W 0.05 W
半電力帯域幅 約159 Hz 約318 Hz

半電力帯域幅は、抵抗で消費する平均電力が共振時の半分になる、低い側と高い側の周波数の差です。電源電圧を固定したこのモデルでは、Δf = R/(2πL) = f₀/Qとなります。[3] 抵抗を増やすと電圧の倍率が下がる一方、共振の山は広がります。周波数を狭く選びたいのか、部品の電圧や電流を抑えたいのかで、比較すべき点が変わります。

大きな部品電圧を、電力の増幅と取り違えない

理想的なコイルとコンデンサでは、エネルギーを受け取る時間と回路へ戻す時間があり、一周期の平均消費電力はゼロです。[2] 共振している今回のR = 10 Ωの例では、電源が与える平均電力は1 V × 0.1 Aで0.1 W。抵抗の消費電力I²Rも0.1 Wです。部品電圧10 Vへ電流0.1 Aを掛けた数字を、その部品が消費する平均電力1 Wと読むことはできません。電圧と電流の位相がずれているためです。

実際の回路を比べる際は、電源の表示値だけでなく、接続後の回路両端の電圧と、コイル・コンデンサそれぞれの電圧を分けて確認します。巻線の抵抗、コンデンサの損失、電源の内部抵抗、追加した負荷などで実効的なQは変わります。部品の耐電圧や許容電流を、この理想計算だけで保証することはできません。

また、ここでのf₀は電流が最大になる駆動周波数です。電源を外した後の減衰振動や、電源を入れた直後の立ち上がりは扱っていません。共振周波数と部品電圧の最大になる周波数が、あらゆる条件で同じとも限りません。今回確かめた「共振時に各部品の電圧がQVになる」という関係は、直列回路・正弦波の定常状態・定数として扱えるR、L、Cという範囲で使います。

出典