ギブス現象、項数を増やしても段差の飛び出しが消えない理由

白い段差の上で、淡い薔薇色と青色の透明な帯が山を作って波打つ抽象アート

正弦波をたくさん足し合わせると、四角い波形を描けます。足す波を増やせば角も鋭くなりますが、段差の近くには、元の高さを少し超える山が残ります。計算を細かくしたのに、なぜこの飛び出しは消えないのでしょうか。

簡単にまとめると?

  • ギブス現象は、不連続な段差をフーリエ級数の途中までの和で表すと、その近くに飛び出しが残る現象です。
  • 項数を増やすと、山は段差のすぐそばへ寄ります。しかし、元の値からの飛び出し量は、段差全体の高さの約9%へ近づきます。
  • 波形の再現性を見るときは、山の高さと段差からの距離を分けて比べる必要があります。細い領域に収まることと、最大の誤差が小さくなることは別です。

まず、何を足しているのか

ここでは、下側が−1、上側が+1の理想的な矩形波を考えます。矩形波とは、二つの高さを交互に取る四角い波形です。位相を表す横軸を x とし、−π < x < 0 では−1、0 < x < π では+1、それを周期2πで繰り返すものとします。段差の高さは、1−(−1)=2です。

この波形は、基本の正弦波に、3倍、5倍、7倍……の細かな正弦波を加えることで近似できます。ただし、細かな波ほど重みを小さくします。例えば最初の3項なら、次の和です。

S₃(x)=(4/π)[sin x + sin(3x)/3 + sin(5x)/5]

以下の N は、こうして足す奇数次の正弦波の本数です。N=5なら1、3、5、7、9次までを使います。最高次数の9と、項数の5を混同しないようにします。元の係数を変えずに途中で足し止める、普通のフーリエ級数の部分和を扱います。

125項にしても、最大値は1を超える

この和を独自に計算し、段差の右側にできる最初の山を比較しました。値も位相 x も、この例では無次元です。x は角度としてラジアンで表しています。

奇数次の正弦波を5、25、125項足した波形を同じ軸で比較。段差の右側の最初の山はx約0.3142、0.0628、0.0126ラジアンへ近づく一方、最大値はいずれも約1.18。上側の元の値は1。
理想的な矩形波のフーリエ部分和を独自計算。図は段差の右側のみを示し、横軸・縦軸の範囲を揃えた。実測値ではない。
項数 N 最初の山の x 山の高さ
5 0.3142 rad 1.18233
25 0.0628 rad 1.17911
125 0.0126 rad 1.17899

5項から125項に増やすと、山と段差との距離は25分の1になります。一方、山の高さは約1.18のままです。「より狭いところに収まった」とはいえますが、「どこを見ても元の値からずれなくなった」とは、まだいえません。

項数を限りなく増やしたとき、この最初の山は約1.17898へ近づきます。上側の値1からの超過は約0.17898です。それを段差全体の高さ2で割ると、約0.08949、つまり約8.949%になります。「約9%」はこの割合です。上側の値1を基準にするなら約18%に当たり、分母が違います。また、有限の項数で常にぴったり9%になるわけでもありません。

山が残る場所も、項数とともに動く

この例では、最初の山の位置は x=π/(2N) と求められます。和を微分すると、段差の右側で最初に傾きが正から負へ変わるのがこの位置になるためです。Nを5倍にすれば、山までの距離は5分の1になります。

ここで二つの見方を分けると、疑問がほどけます。一つは、段差から離れた同じ場所を見続ける見方。例えば x=0.4 を固定して項数を増やせば、部分和はその場所の元の値1へ近づきます。近づき方は上下に揺れてよく、毎回一方向に改善するとは限りません。

もう一つは、項数を変えるたびに最も飛び出した山を追いかける見方です。このとき観測する場所は固定されず、x=π/(2N)に沿って段差へ寄っていきます。そこで見る超過が約0.179残るのです。同じ場所での収束と、場所を動かして探す最大のずれは、異なる問いです。

段差のちょうど中央 x=0 も別に考える必要があります。ここでは各正弦波が0なので、何項足しても和は0です。この理想的な矩形波では、それは左右の値−1と+1の平均に当たります。山が段差へ寄ることは、x=0の値が山の高さになることを意味しません。

波形を比較するとき、何を確認すればよいか

まず、段差の大きさを揃えます。高さ2の段差で生じた約0.18の飛び出しを、高さ1の段差の飛び出しと、そのまま比べることはできません。次に、横軸の拡大率を揃えます。毎回山の周囲だけを拡大すると、山が段差へ寄ったことが図から読み取りにくくなります。

そのうえで、段差からどれだけ離れた領域を使うのか、最大値の超過が問題になるのかを分けて考えます。段差付近の狭い範囲を除いて形を再現したい場合と、どの位置でも上限を超えないようにしたい場合では、同じ波形への評価が変わります。

なお、ここで確かめたのは、瞬間的に値が変わる理想的な周期波形を、係数を変えずに途中まで足した場合です。重み付けを変えた再構成や、有限の立ち上がり時間を持つ実測信号に、この数値をそのまま当てはめることはできません。観測した山が何に由来するかを判断するには、入力波形と再構成の手順も確認する必要があります。

出典