エタンデュ、光を狭く集めると広がる角度も変わる理由

淡青の四角い開口を通る杏色の光が広い方向へ伸びる、集光面積と角度の関係を表す抽象アート

広い面から出る光を、小さな受光面へできるだけ集めたい。レンズで光の像を縮めれば入りそうですが、受光側が斜めから来る光を受け付けないと、一部は届かなくなります。集光では、光が通る面積と、その面を通る方向の広がりを一緒に考える必要があります。

この二つを結び付ける量がエタンデュ(étendue)です。ここでは、光を光線として扱える範囲で、同じ波長帯・偏光条件で、増幅や波長変換をしない光学系を考えます。面積だけを小さくしたとき、どこに制約が現れるのでしょうか。

簡単にまとめると?

  • エタンデュは、光線の束が占める面積と方向の広がりを表す幾何学的な量です。
  • 損失なく同じ光線の束を通す理想的な光学系では、面積を狭めると、その分だけ広い角度を受け入れる必要があります。
  • 狭い面へ集めて放射照度を上げることはできます。角度まで含めて評価する放射輝度とは区別します。

面積と「どの向きから来るか」を一緒に数える

小さな受光面でも、ほぼ正面から来る光だけを測れる場合と、斜めからの光も受けられる場合では、取り込める光線の束が違います。方向の広がりには立体角を使います。平面上の角度を空間へ広げた量で、単位はステラジアン(sr)です。

屈折率を n、微小な面積を dA、微小な立体角を dΩ、その光線と面の法線がなす角を θ とすると、微小な束のエタンデュは dG = n² cosθ dA dΩ です。cosθ は、斜めから見た面の見掛けの面積を表しています。束全体について足し合わせたものが G で、単位は m²·sr です。[1, 2]

方向の範囲がどの位置でも同じで、光線が法線のまわりの円すい内を満たすとします。円すいの半角を α とすると、角度について積分した結果は G = n² A π sin²α になります。単に「面積 × 円すいの立体角」とするのではなく、斜めの光に対する cosθ も含んだ式です。

面積を4分の1にしたら、必要な半角は約20度

空気中を想定して n = 1 とし、面積100 mm²、半角10度の円すいを満たす光線の束を考えます。この束をすべて通し、損失も増幅もない理想的な光学系で、出力の面積を25 mm²へ縮める仮想例です。

入出力で G が等しいため、100 sin²10° = 25 sin²α。したがって sinα = 2 sin10° となり、出力側には約20.32度の半角が必要です。角度そのものを単純に4倍するわけではありません。

比較する条件 面積 A 半角 α G(mm²·sr)
入射する光線の束 100 mm² 10° 約9.47
全体を通せる理想的な出力 25 mm² 約20.32° 約9.47
面積も半角も絞った受け口 25 mm² 10° 約2.37
同じ屈折率 n = 1、円すい状の方向範囲を仮定した独自の計算例。αは全角ではなく半角です。表は特定のレンズや検出器の測定値ではありません。

最後の行では、受け口のエタンデュが入力の4分の1しかありません。入力の放射輝度が面内・方向内で一様なら、理想的に光線を振り分けても取り込める光のパワーは最大25%です。実際にはレンズの反射や吸収、位置ずれなどでも減るので、25%の達成を保証する数字ではありません。

逆に、面積25 mm²でも約20.32度まで受けられれば、幾何学的には入力と同じ G を確保できます。ただし、G が足りることは光学設計が成功するための必要条件であり、収差や部品配置まで解決したことにはなりません。

集光で強くできる量と、保たれる量

光のパワーは、単位時間に運ばれるエネルギーで、ワット(W)で表します。受光面の単位面積あたりに入るパワーが放射照度で、単位は W/m² です。上の例で同じパワーを4分の1の面積へ届けられれば、面全体で平均した放射照度は4倍になります。

一方、放射輝度は、投影面積に加えて方向の広がりでも割った量で、単位は W/(m²·sr) です。同じ屈折率の媒質どうしを比べる理想的な光線光学では、受動的な光学系によって放射輝度を増やせません。屈折率が違う場合に保存される形は L/n² です。[1]

小さな面に光を集めると、そこにはより広い範囲の向きから光が到達します。面積あたりのパワーが増えても、方向まで含めた密度を増やしたことにはならないため、集光と放射輝度の制約は両立します。

受光器を選ぶときは、角度の条件も見る

たとえば広い発光面の像を小さな受光素子へ結ぶなら、受光面に収まるかに加え、光がどの角度で到達するかも見たいところです。受光部の手前に狭い開口があれば、面積には収まっても斜めの光が遮られます。

比較する仕様としては、発光面と受光面の大きさ、レンズが集める角度、受光側が受け入れる角度、媒質の屈折率が手掛かりになります。円すいの受入角を開口数 NA = n sinα で表すなら、この単純な模型では G = AπNA² と書けます。面積を小さくできるかは、NAをどこまで大きくできるかと組み合わせて判断できます。

一部の光を絞りで捨てれば、通過する束の G を小さくすることもできます。その場合は、入力の光を全部保った集光とは異なります。受光できたパワーや損失も一緒に比べると、「小さく集まった」という見た目だけで性能を判断せずに済みます。

なお、回折が支配的な小さな構造や、位相の関係がそろったコヒーレントな波では、光線だけの説明では足りません。Zhangらの2019年の論文は、波の散乱経路とコヒーレンスを使って集中できるパワーの限界を扱っています。この記事の面積と円すい角の計算を、そのまま全ての波動系へ当てはめることはできません。[2]

参考資料

  1. John Koshel, Étendue, Photon Snacks 11。アリゾナ大学の著者公開資料、2022年1月。pp.1–2、式(1.1)–(1.4)のエタンデュ・放射輝度・パワーの関係を参照。
  2. Hanwen Zhang, Chia Wei Hsu, Owen D. Miller, Scattering concentration bounds: brightness theorems for waves, Optica 6(10), 1321–1327, 2019年10月2日公開。DOI: 10.1364/OPTICA.6.001321。p.1321の光線光学の背景、図1と波動系への拡張を参照。