光子検出器の不感時間と回復時間、次の光を測れる条件の違い

伏せた淡青の羽根が扇形に立ち上がり、小さな杏色の光を受ける、検出器の回復を表す抽象アート

弱い光を一つずつ数える検出器でも、光が続けて届けば、すべてを同じ条件で数えられるとは限りません。最初の光子を検出した直後には、次の光子に反応できない時間や、反応のしやすさがまだ戻りきっていない時間があるためです。

この違いを表すのが、不感時間(dead time)と回復時間(recovery time)です。どちらも短いほどよさそうに見えますが、何が回復した時点を終わりとするかで、数字の意味は変わります。

簡単にまとめると?

  • 不感時間には、到来した光子による測定可能な出力を得られません。その後、検出効率が戻っていくリセット時間が続きます。
  • 回復時間は、検出後から効率が定常値、または指定した割合へ戻るまでの全体です。「戻った」の判定条件もそろえて比べます。
  • 効率が戻ることと、到来時刻を同じ精度で測れることは別です。最大計数率には、許容する効率低下などの条件も必要です。

検出できない間と、感度が戻る途中

単一光子検出器は、光子を受け取った出来事を、読み出せる出力信号へ変えます。ここでいう検出効率は、入ってきた光子を検出できる確率に関わる量です。効率が定常値へ戻っても、その値が100%であるとは限りません。

NISTの用語集では、不感時間を、検出イベントの開始から、後続の光子による測定可能な出力を生成できない期間と定義しています。この期間の検出効率はゼロです。その後、効率がゼロから定常値へ向かって増える期間がリセット時間(reset time)です。回復時間は、しばしばこの二つを合わせた長さとして表されます。

光子の検出直後に検出効率がゼロへ下がり、不感時間の後にリセット時間を経て定常値へ戻る。回復時間は両期間を含む
検出後の効率の変化を示す模式図。横軸は時間t、縦軸は検出効率ηDE。tdeadが不感時間、tresetがリセット時間、trecoveryが回復時間です。出典:Bienfangほか『Single-Photon Sources and Detectors Dictionary』NIST IR 8486r1(2025)、p.34、Fig.6。図部分を切り出し、図中の内容は変更していません。Republished courtesy of the National Institute of Standards and Technology.

図の曲線は、検出効率が戻る様子を示しています。実機の回復曲線や速さを一律に定めるグラフではありません。受動的にリセットする方式では定常値へ徐々に近づくため、「完全に戻るまで」ではなく、「定常値の何%へ戻るまで」という基準を使うことがあります。

同じ100ナノ秒でも、途中の光子の扱いは違う

定義の違いを、仮の検出器で考えてみます。不感時間が20ナノ秒、検出効率が定常値の95%へ戻るまでの回復時間が100ナノ秒とします。ナノ秒は10億分の1秒です。これは製品の実測値ではなく、時間区分を理解するための例です。

最初の検出からの時間 その時点の状態 後続の光子について言えること
15ナノ秒 不感時間の中 測定可能な出力を得られない
40ナノ秒 リセットの途中 反応しても、定常時と同じ効率とは限らない
120ナノ秒 指定した効率の回復基準を通過 検出を必ず保証するわけではなく、時刻精度は別に確認する
途中に別の検出や回復を変える入力がない仮定例。定常値の95%という相対的な基準は、検出効率そのものが95%という意味ではありません。整理:Quantum Sea。

40ナノ秒で検出できたとしても、「回復済み」とは言い切れません。リセット中に起こる検出イベントは、トワイライトイベント(twilight events)と呼ばれ、効率低下や時刻のばらつきの増加など、通常と異なる挙動を伴う場合があります。

また、検出効率だけを見れば戻っていても、時刻を測る性能が同じ速さで戻るとは限りません。たとえば超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)では、検出時刻のばらつきを表すタイミングジッターの回復が、効率の回復と異なる場合があります。光子の個数を測りたいのか、到来時刻の差を測りたいのかで、必要な回復条件も変わります。

回復時間の逆数だけでは、使える計数率は決まらない

100ナノ秒の逆数は1秒あたり1,000万ですが、これをそのまま「毎秒1,000万回を、効率低下なく測れる」と読むことはできません。光子が等間隔で来る場合と、不規則に近接して来る場合では、回復途中に入る光子の割合が違うからです。入力が増えるにつれて、入力光子の割合に出力の計数が比例しなくなることもあります。

最大計数率(maximum count rate)は、許容する検出効率の低下や、余分な後続パルスの確率など、選んだ性能条件を満たす範囲で定める指標です。NISTの用語集でも、低い入力での効率に対して10%低下した点と50%低下した点など、異なる基準が例示されています。条件の違う二つの数値を並べても、そのまま優劣にはできません。

数えているものも確認が必要です。検出イベント率は出力された検出イベントの単位時間あたりの数で、未補正の値には暗計数など光子以外に由来するイベントも含まれます。一つのイベントから複数光子を読み取れる光子数分解型の検出器では、イベント数と検出光子数も一致しません。補正した計数率なら、暗計数、後続パルス、非線形応答など、何を補正したかまでそろえます。

二つの仕様を比べるときに見るところ

まず、不感時間だけを示しているのか、リセットを含めた回復時間なのかを見ます。次に、回復の基準が定常効率の何%か、効率と時刻精度のどちらを測った値かを確認します。光の波長や、連続光・パルス光といった入力条件、許容する効率低下も、比較を支える条件です。

回復途中の入力が不感時間を延ばす検出系では、強い入力で出力率がかえって下がる検出器麻痺(detector paralysis)も起こりえます。すべての検出器が同じ上限で単純に頭打ちになるわけではありません。短い時間の数字を探すだけでなく、自分が測りたい間隔と光の到来の仕方に対して、どの性能を保てるかを見ることが、仕様を選ぶ手がかりになります。

参考資料

  1. Joshua C. Bienfangほか、Single-Photon Sources and Detectors Dictionary、NIST IR 8486r1、2025年8月。2.23–2.29、2.31–2.35、2.46–2.51、Fig.6を参照。2023年版を置き換える用語資料です。