光ピンセット、集めた光で粒子をとどめて力を測るしくみ

淡い杏色の光の束がくびれ、その中に小さな青磁色の粒が浮かぶ抽象画。

水の中を動く小さな粒子を、何にも触れずにその場へとどめる。光ピンセットは、強く絞ったレーザー光でこれを行う道具です。金属の先端で挟む代わりに、光が粒子へ及ぼす力を使います。

ただし、捕まえた粒子が静止するわけではありません。周囲の水分子から力を受けて揺れながら、光に引き戻されています。この揺れや位置のずれを調べると、光ピンセットは小さな力を測る道具にもなります。

簡単にまとめると?

  • 基本的な光ピンセットは、周囲の液体より屈折率が高い微粒子を、強く集光した場所の近くへとどめます。
  • 光の強い側へ引く勾配力と、光の進む方向へ押す散乱力の釣り合いが必要です。明るく照らすだけでは、安定した捕捉にはなりません。
  • 捕捉中も粒子は熱によって揺れます。位置の測定と力の校正を済ませると、平均位置のずれから外力を求められます。

光は押すだけでなく、強い場所へ引き戻す

光が粒子で散乱したり進行方向を変えたりすると、光と粒子の間で運動量がやり取りされます。その結果、粒子に力が働きます。基本的な光ピンセットでは、この力を散乱力と勾配力に分けて考えます。

散乱力は、おもに光の進む方向へ粒子を押す成分です。一方、光の強さが場所によって変わると、周囲より屈折率の高い透明な粒子には、光の強い側へ向かう勾配力が生じます。屈折率は、その物質の中で光がどう進むかを表す量です。

そこで顕微鏡の対物レンズを使い、レーザー光を小さな領域へ集めます。粒子が光の中心から横へずれると、勾配力が中心側へ戻そうとします。さらに光の進行方向についても、押し出す力に抗して戻せる条件を作ることで、三次元の捕捉が成り立ちます。釣り合う位置は、光を最も強く絞った点と厳密に同じとは限りません。

ここで大切なのは、光の総量と、その空間的な分布を分けることです。同じ程度の光を当てても、広く一様に照らす場合と、鋭く絞って強さの勾配を作る場合では、粒子を戻す力が違います。レーザー出力の数字だけで捕まえやすさを比較できないのは、このためです。

捕まっている粒子も、揺れ続ける

水中の微粒子は、周囲の分子から不規則に押されるブラウン運動をします。光ピンセットが働いていても、この熱運動は残ります。粒子をとどめるには、外へ動かす熱的な揺らぎに対して、光が十分に引き戻せる必要があります。

下図の左(a)は、捕まえた粒子の位置を時間に沿って記録したものです。位置はゼロ付近に集まっていますが、一本の水平線にはなっていません。中央(b)は位置に対するポテンシャル、つまりその場所にあるときのエネルギーの形で、中央ほど低い谷になっています。右(c)は粒子が各位置で観測された回数の分布です。

光で捕まえた粒子の三つのグラフ。左は0付近で揺れる位置の時間変化、中央は中央で低くなるポテンシャル、右は中央付近の観測回数が多い分布。
図:光トラップ内のブラウン運動。横軸は(a)が時間t、(b)(c)が位置xです。(b)の縦軸は熱エネルギーkBTを単位にしたポテンシャル、(c)は観測回数を示します。Jan Gieselerほか、Optical Tweezers: A Comprehensive Tutorial from Calibration to Applications、arXiv:2004.05246v1(2020年4月10日)、7頁、Fig. 3。原資料の条件は水中の半径1.03 μmのポリスチレン粒子、温度20℃など(Table 1、15頁)。図中の変動幅は、その条件での例です。画像を選ぶと拡大できます。

この三つは、「動いているのに捕まっている」ことを別々の見方で表しています。谷の中央から離れるほど戻す力が大きくなるため、長く観測すると中央付近にいる時間が多くなります。図のエネルギーのゼロ点そのものより、位置が変わったときのエネルギーの差と傾きが、力を考える手掛かりになります。

中心付近では、小さなばねとして使える

安定な釣り合い位置からのずれが小さい範囲では、光の力をばねに近似できます。一方向のずれをΔx、戻す力をFとすると、F=−κΔxです。κはトラップ剛性と呼ばれ、その方向にどれだけずらしにくいか、言い換えると光のばねの硬さを表します。マイナスは、力がずれと逆向きに働く印です。

一定の外力が加わると、粒子の平均位置は外力と光の力が釣り合う場所へ移ります。校正済みのκと、外力を加える前後の平均位置の差が分かれば、外力の大きさ=κ×平均位置のずれとして求められます。

たとえば、ある方向のκが0.05 pN/nmで、平均位置が20 nmずれたと仮定すると、外力は1 pNです。pN(ピコニュートン)は1兆分の1ニュートンを表します。これは計算のために置いた数値で、上図の実測値ではありません。また、一瞬20 nm動いたことだけでは一定の外力の証拠になりません。熱的な揺れと区別するため、平均位置の変化を測る点が重要です。

「位置が見える」から「力が分かる」まで

校正には二つの段階があります。まず、カメラの画素数や光検出器の電圧を、nmなどの実際の距離へ換算します。次に、その距離に対してどれだけの力が働くか、κを求めます。像を大きく表示できることだけで、力の測定が正確になるわけではありません。

κを調べる方法の一つが、熱による位置のばらつきを使う方法です。熱平衡にあり、中心付近をばねとして扱えるとき、位置の分散をσ²として、κ=kBT/σ²と書けます。kBはボルツマン定数、Tは絶対温度です。同じ温度なら、硬いばねほど位置のばらつきは小さくなります。

ただし、観測時間が足りない、位置検出の雑音が大きい、装置がゆっくりずれる、といった条件では、見えた分散をそのまま熱運動の分散と扱えません。原資料は、揺れの時間的な相関や周波数分布を使う方法も比較しています。測定結果を読む際は、κの値に加えて、校正方法、温度、測定方向、位置を記録した速さと時間を確認すると、比較の前提が分かります。

どんな粒子にも同じ条件が使えるわけではない

ここまでの説明は、液体中の微粒子を扱う基本的な構成を中心にしています。粒子の大きさ・材質・形、周囲の液体、光の波長や絞り方が変われば、働く力も変わります。周囲より屈折率が低い物体を捕まえる方法もありますが、基本形の「光の強い場所へ引かれる」という説明を、そのまま当てはめることはできません。

また、中心から大きく離れると、ずれに比例するばねの近似は崩れます。真空中では水による抵抗もなくなるため、揺れの動き方や校正の扱いが変わります。光ピンセットの性能を見るときは、「捕まえられたか」に加えて、「どの範囲で位置を力へ換算できるか」を分けて見ると、道具としてできることが具体的になります。

出典

資料確認日:2026年10月26日。基本原理と校正方法を扱う解説です。1986年の研究は公開要旨、2020年の資料は下記の節・図表を確認しています。

  1. A. Ashkinほか、Observation of a single-beam gradient force optical trap for dielectric particles、Optics Letters 11, 288–290(1986年)、doi:10.1364/OL.11.000288。水中の誘電体粒子の単一ビーム捕捉を報告した論文の公開要旨。
  2. Jan Gieselerほか、Optical Tweezers: A Comprehensive Tutorial from Calibration to Applications、arXiv:2004.05246v1(2020年4月10日)。第1〜2.2節、第3節の校正導入、第3.3節、Fig. 3、Table 1。