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OCP APAC 2026 | 800 V電源の入力設計、過渡電圧の許容時間とプリチャージ

細い淡青の流れが大きな白い通り道へ穏やかに合流し、電源入力を段階的に受け入れる様子を表した概念画像。

たとえば、800 Vの直流配電につながるラックへ、電源ユニットを追加するとします。名目の入力電圧が合っていても、接続した瞬間の電流や、運転中に電圧が変動したときの振る舞いまで考える必要があります。

OCP APAC 2026の公開資料「LVDC Power Distribution and Its Interface with Rack Power Systems」は、LVDC(Low Voltage Direct Current、低電圧直流)の配電と、ラック側の電源との接続を扱っています。ここでは、そのうち電源の入力部分に注目します。電圧だけでなく時間を含めた動作範囲と、起動時の電流制御を組み合わせる考え方です。[1]

800 Vを、ラックのどこまで運ぶか

資料には、800 VをラックのDC-DCパワーシェルフで54 Vへ下げてから配る構成と、800 Vのバスバーで各サーバー側へ送り、PDB(Power Distribution Board、電力分配基板)を用いる構成が示されています。バスバーは、大きな電流を運ぶ導体です。後者では、高い電圧を受ける部分が、計算機に近い場所まで入ってきます。[1]

どちらも、最終的には半導体に必要な低い電圧へ変換します。ただし、800 Vを受ける場所が変われば、その入力部に必要な保護や起動の設計も重要になります。資料はPDB側の低背化、高密度化、冷却も課題に挙げています。以下では、特定製品の性能ではなく、この接続部分の設計を見ていきます。[1]

入力電圧の範囲に「続く時間」を加える

電源の入力条件は、通常の電圧範囲だけでは表しきれません。資料は、電圧が一時的に変化したときに、保護機能を作動させず運転を続ける領域も分けて説明しています。こうした短い時間の変化を、過渡現象と呼びます。[1]

資料の動作区分想定する役割
Continuous Operation保護停止せず、継続して電力変換できる範囲
Transient 1過渡変化の後、複数の電源が電流の分担を落ち着かせるための一時運転
Transient 2離れたラックでの故障に伴う短い変動の間も、一時的に運転を続ける領域
Transient 3サージや電圧途絶に備え、変換器を損傷させず停止するための条件
資料[1]8ページの説明を整理。確定した共通規格や、すべての電源が備える保証性能を示す表ではありません。

資料はTransient 1を数十ミリ秒、Transient 2を数百マイクロ秒程度の領域として説明しています。一方で、図には時間などの未確定項目を示す「TBD」が残り、Transient 3のサージ・電圧途絶条件も未確定です。数値をそのまま製品の設定値にするのではなく、電圧の大きさと、その状態が続く時間を組で考えるための整理として読むのが適切です。[1]

たとえば、電圧が通常範囲から短時間外れた場合でも、すぐに停止する設計と、決めた時間だけ運転を保つ設計では、ほかの電源や保護装置との組み合わせ方が変わります。反対に、運転を保てない変動では、変換器を安全に止めるための時間が必要になります。資料は後者を、電力供給を短時間維持するホールドアップ時間と結び付けています。[1]

変換回路の手前で、入力を整える

資料の一般化した電源構成図では、入力コネクター、電磁ノイズを抑えるEMIフィルター、HSC(Hot Swap Controller Circuit、ホットスワップ制御回路)、電源電圧の変動を抑えるデカップリングコンデンサーの先に、主電源と待機電源の変換回路が置かれています。HSCは、電源をつないだ際の電流を制御する部分です。[1]

同じページのコネクター概念図には、主な電力を運ぶ端子のほか、プリチャージや接続検知・電圧検知に関わる接点も描かれています。入力の設計には、電力変換回路だけでなく、コネクターから制御回路までの連携が含まれます。この図は概念図であり、特定コネクターの寸法や配線手順を示すものではありません。[1]

最初の突入電流と、その後の立ち上げを分ける

電源を接続した直後に、一時的に電流が流れ込む現象を突入電流と呼びます。資料は、HSCがあっても、配線や基板、半導体、保護部品に存在する寄生容量によって最初の突入が生じると説明しています。寄生容量は、部品や配線に付随して生じる、電荷を蓄える性質です。[1]

この最初の電流を抑えるために使うのが、プリチャージ抵抗です。資料の起動波形では、接続直後の突入電流をI2として示し、プリチャージ抵抗で制限します。その後にHSCが制御する電流I1の段階があり、起動を終えると定格に制御された電流I3へ移ります。I1・I2・I3は図中の電流の呼び名で、数字の順に発生するわけではありません。[1]

この図には電流値や各段階の具体的な時間がなく、途中の細かな区間の動作も説明されていません。読み取れるのは、接続直後の突入を抑える仕組みと、その後の起動電流を制御する仕組みを、分けて用意するという関係です。

短い変動を受け止める役割を、電源系統の中で分担する

入力部だけで、すべての変動を扱うわけではありません。資料は、コンデンサー、スーパーキャパシター、ラック列や配電側の蓄電設備を、応答する時間の違いに応じて配置する考え方も示しています。チップに近い電圧変動の抑制と、電力系統側の長めの変動への対応では、受け持つ役割が異なります。[1]

800 Vの配電からラック側の電源までを見るときは、定常時の電圧や電力に加えて、どの変動をどの時間まで受け入れ、接続時の電流をどの回路で抑えるかを追うと、設計のつながりが見えてきます。電源の入口は、電圧を変換する前から、配電側と計算機側の動作をつないでいます。

資料の共著企業のうち、デルタ電子の会社全体については、cyclewaveの企業記事で紹介しています。

参考資料

  1. Peter Barbosa、Rudy Wang(Delta Electronics)、Aurelio Rodriguez Echevarria(AMD)、LVDC Power Distribution and Its Interface with Rack Power Systems(OCP APAC 2026公開スライド)。ラック側の構成:6〜7ページ、動作領域:8ページ、入力部と起動:9〜10ページ、蓄電の役割分担:11〜12ページ。著者名・所属は表紙表記に基づきます。
  2. OCP APAC 2026公式プログラム・公開資料一覧。本記事は掲載PDFに基づきます。PDFの作成・更新日は2026年9月2日(UTC)で、8月11〜12日の会場投影版と同一かは確認できていません。

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