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OCP APAC 2026 | 基板と部品の熱を見積もる、材料構成と方向別の熱伝導率

薄い白い層と銅色の縁が重なり、一つの層に沿って淡い暖色が広がる、材料による熱の伝わり方の違いを表した概念画像。

たとえば、まだ部品メーカーから詳しい熱のデータが届いていない段階で、基板上のどこが熱くなるかを調べたいとします。部品の形や配置がわかっていても、中の材料をどう置き換えて計算するかで、予測する温度は変わります。

OCP APAC 2026の公開資料「From Material Composition to Effective Thermal Conductivity」は、材料の構成から有効熱伝導率を求め、基板や部品の熱シミュレーションに使う方法を紹介しています。複数の材料が混ざる構造を、熱の伝わりやすさを表す値に置き換える考え方です。ただし、同じ材料でも、熱が流れる方向によって扱いが変わります。[1]

熱が材料を順に通るか、並んだ経路を通るか

PCB(プリント基板)は、銅などの導体と絶縁材料を重ねた構造です。そこに部品を実装したものがPCBAです。資料は、基板自体の熱の流れと、実装する部品内部の熱の流れを分けてモデル化しています。[1]

材料を一つずつ通り抜ける方向では、それぞれの材料による熱抵抗、つまり熱の流れにくさが積み重なります。一方、異なる材料の経路が並び、両端の温度差が同じなら、各経路を通る熱を足し合わせます。資料はこの直列・並列の考え方から、材料の熱伝導率と体積の割合を使って、構造全体の有効熱伝導率を求めています。材料の割合だけでなく、熱の通り道を決めることが出発点です。[1]

基板の面内と厚さ方向を、同じ値にしない

基板では、層に沿う面内方向と、層を横切る厚さ方向を区別します。資料の例は、FR4という絶縁材料と銅からなり、厚さ2.34 mm、導体層が12層ある基板です。各層の厚さと銅が占める割合を入れると、次の有効熱伝導率になります。[1]

熱が流れる方向この基板例の有効熱伝導率
層に沿う面内方向64.2 W/(m·K)
層を横切る厚さ方向0.36 W/(m·K)

同じ基板でも、方向によって大きく異なります。この値は、資料の層構成と銅の割合から求めた例です。すべての基板へそのまま使える定数ではありません。[1]

資料は、各層の銅の割合を設定したモデルと、有効熱伝導率へ置き換えたモデルを比較しています。掲載された部品温度は、ほぼ同じ計算結果になりました。ただし、実測との差がなくなったわけではありません。たとえばダイオードは、実測99.8℃に対し、どちらのモデルも114.9℃です。ここで確かめているのは、主に基板のモデルを置き換えても計算結果が近いことです。[1]

部品の材料構成を入れると、予測はどう変わるか

部品側の例では、ダイオードを構成する樹脂、金属の支持部、半導体などの材料を使います。資料は、質量と密度から体積の割合を求め、直列モデルとして有効熱伝導率を0.96 W/(m·K)としています。[1]

この比較では、実測99.8℃に対し、エポキシを参照した0.7 W/(m·K)の設定で予測温度は110℃、材料構成から求めた設定で103℃でした。資料の表に示された実測との偏差は、10%から3%になっています。これは計算に入れる熱のモデルを変えた結果であり、部品を交換して実機の温度が下がった実験ではありません。直前の基板モデル比較とも、別の比較として読む必要があります。[1]

すべての部品で、実測への近さが改善したわけでもありません。電流を制御する半導体のMOSFETでは、熱の流れを抵抗で表す2Rモデルと、材料構成によるモデルを比較しています。掲載された4個のMOSFETについて、実測との偏差は2Rモデルが8〜11%、有効熱伝導率を使うモデルが12〜15%でした。たとえば1個目は、実測78.5℃に対し、それぞれ84.7℃と88.1℃です。材料の情報から見積もれることと、より正確に予測できることは、分けて評価する必要があります。[1]

詳細なデータが届く前の、初期設計に使う

この方法の位置づけは、部品メーカーの詳しい熱データが限られている初期設計で、材料の情報を使って検討を進めることです。形状が比較的単純な構造を想定しており、内部の熱経路が複雑な2.5D・3Dチップレットへの適用は、資料でも未検証とされています。[1]

また、掲載された温度比較だけでは、周囲温度、風量、各部品の発熱量、測定手順の全条件は確認できません。数値を別の装置の性能保証に広げず、まず方向別の熱の流れと材料の構成を整理し、得られた予測を実測と照らしていく。そのためのモデルの作り方として読むと、資料の使いどころが見えてきます。

共著者が所属するMicrosoftの事業全体については、cyclewaveの企業解説で整理しています。

参考資料

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