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  • Broadcomが解説するSUE-TとESUN、AIチップと通信網の役割分担

    Broadcomが解説するSUE-TとESUN、AIチップと通信網の役割分担

    AIチップ同士をEthernetでつなぐ、と聞くと、スイッチやケーブルを思い浮かべるかもしれません。でも、電気信号が届くだけでは、相手のチップがどのデータを読もうとしたのかまでは伝わりません。近くにあるチップ同士でも、通信には「運ぶ」仕事と「意味をそろえる」仕事があります。

    OCP Korea Tech Day 2026でBroadcomのChintan Shah氏が示した図には、「ESUN」と「SUE-T」という二つの名前が並びます。ESUNはEthernet側の運び方、SUE-Tは主にチップの端で操作を扱う方法。まずそう捉えると、図を読みやすくなります。ただし両者の境界は、きれいな一枚の線では切れません。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • ESUNは、低遅延でパケットを運ぶEthernet側の仕組みを扱います。
    • SUE-Tは、チップの読み書きなどの操作を通信へ写し、順序や再送を扱う端点側の要件を検討しています。
    • 両者はネットワークヘッダーで役割が重なり、同じ完成段階の一つの仕様として扱うことはできません。

    ESUNは、隣へパケットを届ける側

    発表資料でESUNが扱うのは、低遅延でパケットを届けるためのEthernet側の工夫です。短くしたヘッダー、リンク単位の再送(LLR)、混雑時に送信量を調整する仕組みなどが挙げられています。流量制御の例は、IEEEのPFCか、クレジットを使う方式です。二つを必ず同時に使う、という説明ではありません。[2]

    資料の構成例は、一つのスイッチを通り、複数の経路を並べて帯域を確保します。この場合、リンクで問題が起きたときの再送を、その近くで扱えます。一方、発表者は、より大きな領域へは複数ホップのEthernetも使えるとしています。ESUNを「単ホップしか認めない仕組み」と読むのは正確ではありません。[2]

    ESUN側では、ネットワーク運用者向けの基礎要件をまとめた1.0仕様が2026年3月に公開されています。そこで扱うネットワークの要件と、チップ内部を含む端点の設計を、同じ完成段階の一つの仕様と考えないことも大切です。[5]

    SUE-Tは、チップの操作を通信へ結びつける側

    チップが「このデータを読む」「ここへ書く」といった操作を出すと、それをEthernetのパケットへ写し、受け取った側で元の操作につなぎ直す必要があります。操作を小さな単位で送るか、いくつかまとめるか。届く順番をどう守るか。失敗したときにどこで再送するか。こうした端点側の要件を検討しているのが、OCPのSUE-Tワークストリームです。対象には計算チップだけでなく、ネットワークカードも含まれます。[2・3]

    すべてのチップが同じ内部構造を持つ必要はありません。資料は、データを押し出すか取りに行くか、操作をどう詰めるか、どの単位で順番を保証するか、といった選択をチップ開発者に残す考え方を示します。同一のラックに同種のチップを置く想定では、異なるメーカーのチップ同士を直接相互運用させることを必須条件にしていません。開かれた通信の検討と、チップ内部の設計自由度を両立させようとしているわけです。[2]

    二つの境目は、共同で設計する

    スライドの図をよく見ると、SUE-Tの赤い点線とESUNの青い点線は、ネットワークヘッダーのところで重なっています。端点が付ける情報と、Ethernet側が運ぶ情報の合わせ目だからです。ESUNが下、SUE-Tが上とだけ覚えると、この接点を見落とします。どんな情報をパケットへ載せ、スイッチや相手の端点がどう扱うかは、一続きの設計です。[2]

    同社のAPAC発表でも、SUE-Tが検討する操作の詰め方や順番が説明されました。今回のKorea資料はその技術説明をほぼ共有しており、新しい性能値を別に示した資料ではありません。この回では、運ぶ網と操作を扱う端点が、どこで手をつなぐかに目を向けました。スイッチの速度を比べるときも、端点の処理とリンク側の再送・混雑制御を同時に見ると、構成の違いを捉えやすくなります。[2・4]

    この資料を発表したBroadcomの事業全体は、cyclewaveの企業記事にまとめています。

    参考資料

    2026年9月23日確認。Korea発表はAPACのBroadcom発表と図・説明を多く共有します。本文は公開スライドとOCPワークストリームの説明に基づき、性能の実測値や全製品共通の実装を示すものではありません。

    [1]Open Compute Project:2026 OCP Korea Tech Day 発表一覧。Broadcomの「Scale-Up Ethernet Transport (SUE-T) and ESUN」を掲載。

    [2]Chintan Shah(Broadcom):Scale-Up Ethernet Transport (SUE-T) and ESUN 発表スライド。全25ページ。主に12〜22ページを参照。

    [3]Open Compute Project:Networking / SUE-T ワークストリーム。端点側の検討範囲と作業状況。

    [4]Bhaskar Chinni / Mehak Mahajan(Broadcom):OCP APAC 2026 の SUE-T 発表スライド。Korea発表との内容比較に使用。

    [5]Open Compute Project:ESUN 1.0仕様の公開。2026年3月10日、ネットワーク運用者向け基礎要件の発表。

  • Broadcomが示すSUE-T、AIチップの読み書きをEthernetで運ぶ要件

    Broadcomが示すSUE-T、AIチップの読み書きをEthernetで運ぶ要件

    AIの計算を複数のチップに分けると、それぞれのチップが持つデータを、ほかのチップへ素早く渡す必要があります。この近い距離のやり取りを担うのが、スケールアップの通信です。データセンター全体を結ぶネットワークとは、求めるものが少し違います。

    OCP APAC Summit 2026でBroadcomのBhaskar Chinni氏とMehak Mahajan氏が紹介した「SUE-T」は、Ethernetを使うスケールアップ網で、チップやネットワークカードの端に何を持たせるかを検討する取り組みです。新しいケーブルの名前ではありません。チップから出るメモリーの読み書きをどう運び、届いたデータをどう正しく扱うか。そこに焦点があります。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • SUE-Tは、近距離のAIチップ間通信をEthernetで運ぶための端点側の要件を検討します。
    • 複数の操作をパケットにまとめる際は、ヘッダーの負担と送信までの待ち時間を調整します。
    • 紹介されたSUE-Tは要件検討中の取り組みで、全AIサーバーの相互運用を保証するものではありません。

    同じAIクラスタにも、距離の違う通信がある

    発表資料は、計算チップ(xPU)が近くでつながる「スケールアップ」、データセンター内のノードをつなぐ「スケールアウト」、建物やキャンパスをまたぐ「スケールアクロス」を描き分けています。SUE-Tが主に見ているのは、チップ同士がメモリーのデータをやり取りする、最も近い領域です。[2]

    資料には、チップ100万個のキャンパスならスケールアップ側だけで14.4Eb/s、といった試算も出てきます。ただし、これは通信量の桁をつかむための仮定を積み重ねた計算です。実際にその規模の施設で測った速度ではありません。数字そのものより、チップ間の通信が、離れたノード間の通信に比べて非常に大きくなりうるという設計上の問題に注目したいところです。[2]

    メモリーの操作を、そのまま線に流せるわけではない

    計算チップは、別のチップにあるデータを読みたい、書きたいという操作をします。Ethernetを使うなら、その操作の意味を保ちながら、送れる単位であるパケットに収めなければなりません。さらに受け取る側では、届いたものを元の操作として解釈する必要があります。

    通常のネットワークで使うRDMAやTCPには、離れた相手とも通信できるための仕組みがあります。一方、発表者は、同一のスケールアップ領域には近い距離・限られた参加者という条件があり、既存方式をそのまま持ち込むと、チップ内の面積や電力を余分に使う可能性があると説明します。既存方式が「使えない」という話ではなく、近い距離の通信に何を残し、何を軽くできるかという問いです。[2]

    小さなやり取りを、どう詰めて送るか

    端点側の仕事として、資料は「transaction packing」を例に挙げています。チップから出る複数の操作を、宛先ごとのキューに並べ、Ethernetで送るパケットに収める考え方です。一つずつ送れば扱いやすい反面、パケットごとのヘッダーが増えます。まとめすぎれば、送るまで待つ時間が生じます。資料の図は、この両方を見ながら、送れるものからパケットを作るスケジューラーを示しています。[2]

    ただし、どの操作でもまとめればよいわけではありません。発表資料は、想定する操作の大きさや上位の方式に応じて、この機能を使い分ける設計を提案しています。どれだけ速くなるかという実測結果は、このスライドには示されていません。

    速さだけでなく、順番と確かさも

    近くにあるチップ同士なら、通信の順番や再送の方法を、その範囲に合わせて設計できます。資料では、リンク単位の再送や流量制御を持つEthernetの仕組みを「ESUN」と呼び、その上でチップ側が、操作の順番、信頼性、詰め方などを扱う構成を描いています。SUE-Tは、そのチップ側・ネットワークカード側の要件をOCPのワークストリームで検討するものです。[2・3]

    ここが大切です。SUE-Tは、2026年9月時点でも端点の要件を検討している取り組みです。前身となるSUEの仕様書は公開されていますが、その名前だけで、すべてのAIサーバーに同じ機能や相互運用が備わるわけではありません。設計を比べるときは、チップが出す操作をどうパケットへ変え、届いた操作の順番と再送をどう扱うかまで見ると、単なるポート速度以上の違いが見えてきます。[3]

    発表したBroadcomの事業全体や収益のしくみは、cyclewaveの企業記事で整理しています。

    参考資料

    2026年9月23日確認。本文は公開スライドとOCPワークストリームの説明に基づきます。講演動画の発言と質疑は確認対象に含めていません。資料中の大規模ネットワークの値は概算モデルです。

    [1]Open Compute Project:2026 OCP APAC Summit 発表一覧。Broadcomの「Scale-Up Ethernet Transport (SUE-T)」を掲載。

    [2]Bhaskar Chinni / Mehak Mahajan(Broadcom):Scale-Up Ethernet Transport (SUE-T) 発表スライド。全26ページ。主に12〜23ページを参照。

    [3]Open Compute Project:Networking / SUE-T ワークストリーム。端点側の検討範囲と作業状況。

  • MicrochipのAIクラスタ接続案、PCIe・ESUNと銅線・光の使い分け

    MicrochipのAIクラスタ接続案、PCIe・ESUNと銅線・光の使い分け

    AIの計算機どうしをつなぐとき、「一番速い接続方法は何か」と考えたくなります。でも、一枚の基板の近くを結ぶのか、ラックの中を結ぶのか、列をまたいで結ぶのかで、必要な距離も、使える電力も変わります。

    2026年8月のOCP APAC Summitで、MicrochipのMatt Holdrege氏は、PCIe、ESUN、銅線、光接続を並べてAI向けネットワークの選び方を説明しました。発表から読み取れるのは、どれか一つに統一する答えではなく、接続する相手と距離に合わせて、組み合わせを変える考え方です。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • PCIe・ESUNという接続の仕組みと、銅線・光という信号を運ぶ媒体は、分けて考える選択肢です。
    • 近距離とラックを超える接続では条件が変わり、一つの方式へ統一するより用途に応じて組み合わせます。
    • 速度だけでなく、遅延・電力・費用・故障時の交換しやすさまで含めて選ぶことが重要です。

    「PCIeか、銅線か」という比べ方では足りない

    最初に整理したいのは、発表の四つの言葉が同じ種類の選択肢ではないことです。PCIeは機器をつなぐ規格、ESUNはAIアクセラレータ間のネットワーク向けにEthernetを発展させるOCPの取り組みです。一方、銅線と光ファイバーは信号を運ぶ手段で、CPO(Co-Packaged Optics)は、光エンジンと、通信を振り分ける専用半導体であるスイッチASICを同じパッケージに集積する構成を指します。つまり、接続の仕組みと、その信号をどう運ぶかを分けて考えます。[2・3・5]

    この違いを押さえると、銅線がPCIeの「対抗技術」ではないと分かります。短い距離のPCIe接続に銅線を使うこともあれば、Ethernet系の接続で銅線や光を選ぶこともあります。

    近くをつなぐPCIeと、広げるためのESUN

    発表はPCIe 6.0を、筐体内やラック内で計算機とメモリー、ストレージをつなぐ候補として挙げています。短い距離での低遅延に強みがある一方、電気信号のまま遠くへ伸ばすには限界があります。資料にある「64GT/s」は1レーンの信号転送速度を示す値で、アプリケーションがそのまま使える通信速度ではありません。[2]

    ラックを超えて多くのアクセラレータを結ぶ話では、Ethernetを土台にしたESUNが登場します。通常のEthernetをそのままつなぐという意味ではありません。OCPのESUN作業では、短いメッセージで生じるヘッダの負担や、混雑・エラーをどう扱うかが検討され、2026年3月には1.0仕様が公開されています。発表者は、既存のEthernetの技術や運用経験を生かしながら、接続する機器の数を増やす道として紹介しています。[2〜4]

    銅線が届く距離と、光で広げる距離

    短い距離では、銅線は費用と消費電力を抑えやすく、構成も比較的単純です。ただし信号が高速になるほど、銅線だけで届く距離は厳しくなります。発表も、ラック内のような数メートル程度を得意な場面として整理しています。[2]

    列や部屋をまたぐ規模になると、光接続が候補になります。CPOは光エンジンをスイッチASICと同じパッケージに集積し、電気信号が通る距離を短くして損失を抑える設計です。DWDMは、一つの光ファイバーで異なる波長の信号を多重化する方法です。両者を組み合わせれば、届く距離や接続密度を広げる余地があります。[2・5]

    光なら必ず有利、というわけでもありません。発表資料は、費用、熱の管理、ほこりへの対策、故障した部品の交換しやすさを制約として挙げています。通信の数字だけでなく、設置してから直せるかどうかまで含めて比べる必要があります。[2]

    選ぶ順番は、距離・遅延・保守から

    発表では、比較的小さな自社設備やエッジ側にはPCIeと銅線、大規模施設にはESUNと光接続を組み合わせる配置例が示されています。これは発表者が示した設計の見取り図で、各方式の実装や性能を一律に保証するものではありません。[2]

    まず、何をつなぐのか。次に、どこまで離れるのか。そして、遅延、信号を運ぶための電力、故障時の交換、費用を順に見る。そうすると「一番速い線」探しから、AIクラスタ全体で使い続けられる接続の設計へ、視点を移せます。

    発表したMicrochipの事業全体は、cyclewaveの企業記事にまとめています。

    参考資料

    2026年9月23日確認。発表の解説はOCPが公開した14ページのスライドをもとにしています。動画内の発言や質疑応答は本文の根拠に含めていません。

    1. Open Compute Project「2026 OCP APAC Summit」発表一覧 — 「AI Fabric Architecture Options: PCIe, ESUN, Copper, and Co-Packaged Optics」、Matt Holdrege(Microchip)。
    2. Matt Holdrege「AI Fabric Architecture Options」公式掲載スライド — pp.3–11。方式ごとの強み・制約、配置例。
    3. Open Compute Project「Networking/ESUN」 — ESUNが担うネットワーク側の作業領域。
    4. Open Compute Project「The OCP ESUN 1.0 Specification has been released!」 — 2026年3月10日。1.0仕様の公開と主な変更点。

    CPOの定義を補う資料(2026年10月27日確認):[5]NVIDIA「A New Era in Data Center Networking with NVIDIA Silicon Photonics-Based Network Switching」(Brad Smith、2025年3月27日)、「What is co-packaged silicon photonics?」節。同じパッケージへの光エンジンとスイッチICの集積を説明しています。Microchipの発表内容とは別に、一般的な構成の定義を確認するために参照しています。