AIサーバーの電源を比べるとき、「何kWまで供給できるか」は大切な数字です。ただし、電源1台の出力、複数台を収めるパワーシェルフ全体の出力、故障に備えた余裕を残して使える出力は、それぞれ異なります。
ORv3(Open Rack v3)のPSUは、交流をサーバー向けの直流に変換する電源ユニットです。DeltaとAdvanced Energyによる2024年のOCP Global Summitの公開スライドをもとに、33kWという出力の内訳と、高電力化で一緒に考えるべき負荷変動・監視の仕組みを見ていきます。[1・2]
簡単にまとめると?
- 資料の33kWシェルフは5.5kW電源6台の構成で、1台分の余裕を確保するN+1では27.5kWです。
- 同資料のHPR2は10kW電源・60kWシェルフとして説明され、12kW超の電源は将来動向の図で別に示されています。
- 出力の大きさだけでなく、変換効率、急な負荷変動への応答、故障や停電への備えを分けて読む必要があります。
33kWは、どの電源を何台組み合わせた数字か
資料の「Power Shelf Details」には、PSU用の6スロットと管理用の1スロットを持つ構成が示されています。組み合わせる整流電源は1台5,500W。6台の出力を合計すると33kWです。同じページは、冗長性を持たせないN+0で33kW、1台分の余裕を持たせるN+1で27.5kWと明記しています。[1、p.11]
| 構成 | 資料の出力 | 出力の数え方 |
|---|---|---|
| 5.5kW電源6台、N+0 | 33kW | 6台分を合計。電源1台分の予備容量を含まない |
| 同じ6台、N+1 | 27.5kW | 5台分を負荷に使う上限とし、1台分の余裕を確保 |
たとえば、負荷が30kWなら33kWという合計値には収まります。しかし、1台分を失った後の27.5kWを超えるため、この構成で電源1台の故障に備えられるとは言えません。搭載容量と、冗長性を保って使える容量を分けると、数字の意味がはっきりします。これは資料の定格からの計算例で、実際の設備の運用事例ではありません。
一方、同じ資料のHPR2比較表は電源1台を10kWとし、シェルフは33kWから60kWへの拡張として説明しています。後半の電力動向図にある「12kW+ PSU」「70kW+/OU」は、さらに先の方向を示す別の記述です。33kW構成へ12kW電源の数字を混ぜたり、60kWをそのままN+1時の出力と読んだりすることはできません。[1、pp.5–6・20]
電力密度が上がることと、消費電力が減ることは別
資料では、HPRの5.5kW電源からHPR2の10kW電源へ進むと、長さは640mmから710mmへ約11%増え、出力は約82%増えると説明されています。幅と高さは比較表で同じなので、限られた設置空間から取り出せる電力を増やす、という意味があります。[1、pp.4–5]
これに対して変換効率は、入力した電力のうち何割を出力へ渡せるかを示します。比較表の230V・240V条件では、ピーク97.5%、100%負荷時96.5%という値が示されています。大きな出力を小さな筐体に収められることだけで、冷却や配電を含むデータセンター全体の効率まで改善したとは判断できません。設置空間と損失を、それぞれの指標で見る必要があります。[1、p.5]
急な負荷変動では、値と一緒に試験条件を読む
AI処理では負荷が短時間に大きく変わります。発表では、蓄えたエネルギーで一時的なピークを補うピークシェービング用シェルフと、PSUの入力電力制限を調整した試験を紹介しています。この二つは、電源から取り出せる連続出力を無制限に増やす仕組みではありません。[1、pp.8・12–18]
入力電流の波形のひずみを表すiTHDが2.91%となった例は、5.5kW電源に対して、入力277V・60Hz、負荷15~160%、負荷変動の周波数1.25kHz、入力電力制限7.5kWという試験です。同じ負荷条件で制限値を8.8kWにした例のiTHDは3.27%でした。2.91%はこの条件での測定値であり、すべての負荷で得られる性能値や変換効率ではありません。[1、pp.15–16]
入力電力を絞ればよい、とも限りません。別の試験では、230V・60Hzで5.5kW電源の負荷を50%から100%へ変え、入力電力制限を4.5kWにすると、高負荷が続いたときに出力を維持できず停止しました。続く例では、停止に至る前に制限値を自動的に引き上げています。ピークを抑える設定と、負荷へ給電し続けるための制御を組み合わせることが、この比較から読み取れる要点です。[1、pp.17–18]
図1は、入力制限を4.5kWに固定したときの停止例です。負荷を増やした後、内部のバルク電圧(緑)が下がり、入力電流(紫)の周期的な波形も途切れています。瞬間的な変動を受け止められることと、高い負荷を継続して支えられることの違いを示しています。
故障・停電への備えと、監視まで含めて考える
N+1が扱う電源1台分の余裕と、停電時に使うBBU(バッテリーバックアップユニット)は役割が違います。発表では、BBUへの切り替え信号に加え、PMM(Power Monitoring Module)がPSUやBBUの状態をまとめ、Modbus通信で上位のラック管理装置へ渡す仕組みを説明しています。出力の大きさだけでなく、状態を把握し、異常時にどう給電を続けるかまでがシステムの設計範囲です。[1、pp.6–7・19]
この発表を読むときの順序は、まず電源1台の出力、次にシェルフの合計、続いて冗長条件、最後に負荷変動と停電への対応です。将来の高電力化を示す図も、現行構成の定格や冗長運転の保証とは分けて見ると、自分が比べたい条件に近づけられます。
企業の事業全体については、cyclewaveのデルタ電子の企業解説とAdvanced Energyの企業解説も参照できます。
参考資料
- Cihan Aydin(Delta Energy Systems)、Harry Soin(Advanced Energy)「Requirements/Considerations of Next Generation ORv3 PSU and Power Shelves」、2024 OCP Global Summit、全23ページ。本文はこの公開スライドの数値と条件に基づきます。
発表スライド(OCP公式一覧のリンク先) - Open Compute Project「2024 OCP Global Summit」Rack & Powerの発表一覧。
公式プログラム・動画・スライド一覧 - Open Compute Project「Requirements Considerations of Next Generation ORv3 PSU and Power Shelves」発表動画。
発表動画
対象は2024年の発表資料です。資料確認日:2026年10月6日。現在販売されている全製品の仕様を比較したものではありません。
