量子ゼノ効果、測定を増やすと変化が抑えられる条件

白い浅いくぼみの緑色の球を、五枚の薄紫の半透明板が囲み、外側に桃色の曲線が延びる抽象的な構図。

量子ビットをある状態から別の状態へ動かしている途中で、短い間隔で状態を測ると、その変化が抑えられる場合があります。これが量子ゼノ効果です。ただし、画面を何度も見るだけで物理系が止まるという意味ではありません。どの状態を区別する測定を、どの間隔で行うかが結果を決めます。

簡単にまとめると?

  • 理想的な二準位モデルでは、総時間を固定したまま初期状態を確かめる測定を増やすと、すべての測定で初期状態が得られる確率が高くなります。
  • 「途中もずっと0だった確率」と「最後だけ0を得る確率」は別です。途中で1になってから戻る記録を、前者へ混ぜません。
  • 測定は物理的な操作です。所要時間、誤差、環境との相互作用を無視した極限を、そのまま実機の保証にはできません。

変化する時間を、測定で区切る

二つの基底状態を0と1と呼び、最初は0に準備します。測定しなければ、決めた総時間Tの後に1へ移るような一定の回転をかけます。途中の状態には0と1の振幅が含まれ、測定で0か1を得る確率は、その振幅の大きさの二乗から決まります。

ここでは、時間Δtの発展で0に残る振幅をcos(ΩΔt)と書くモデルを使います。Ωはこの式で定義した回転の強さで、総時間にはΩT=π/2を選びます。0から出発してTだけ発展すると、0を得る確率はcos²(π/2)=0です。Tは同じまま、その間をN等分して各区切りで0と1を区別する理想的な射影測定を入れます。

射影測定とは、この例では、結果が0なら測定後の状態を0、1なら1として扱う測定モデルです。測定結果を人が読むことではなく、系と測定装置との物理的な関わりを理想化しています。単に同じ計算結果を画面へ何度も表示することとは異なります。

一回の小さな変化を、N回つなぐ

最初の区間T/Nを過ごした後に0を得る確率はcos²(π/2N)です。0という結果を得れば、次の区間も0から始まります。そのため、N回の結果がすべて0になる確率は、同じ条件付き確率をN回掛けたP全0=[cos²(π/2N)]Nになります。

これは「0を得た記録だけを選んだから100%だった」という数値ではありません。最初に準備したすべての試行を分母とし、その中で全測定結果が0だった記録の割合です。一度でも1を得た試行は、全0の成功には含めません。

短い時間では、0から離れる確率は時間の二乗に比例する形になります。区間を短くすると、一回あたりの変化はおよそ1/N²まで小さくなり、それをN回積み重ねても全体の失敗確率は小さくなります。測定なしの連続した振幅の発展を、測定で状態を区切った確率の積へ変えることが、このモデルで変化が抑えられる理由です。

「全部0」と「最後が0」を並べる

N=2なら、各区間で0に残る確率は1/2です。全0の記録は00だけなので確率は1/4になります。一方、最後が0の記録には00に加えて10もあります。途中で1を得てから0へ戻る場合を含むため、最後が0の確率は1/2です。同じ実験の数字でも、集計する条件が違います。

総回転量ΩTをπ/2に固定した理想モデル。測定回数Nが2では全結果0の確率25.0%、最後だけ0は50.0%。Nを10、100へ増やすと二つの確率はともに1へ近づくが、有限回では区別が残る。
同じ総時間Tに対する独自計算。青は全測定結果が0、橙は途中の結果を問わず最後だけ0の確率。実機の測定値ではない。

計算では、各区間の二次元の状態変化と測定を順に適用する方法を使い、全0については上の式と照合しました。最後だけ0の確率については、0から1へ移る記録も含め、測定で0と1の間のコヒーレンスを取り除いた密度行列を次の区間へ渡しています。密度行列は、結果ごとの確率をまとめて扱う表現です。

N=10で全0の確率は約78.1%、N=100では約97.6%になります。測定回数だけでなく、総時間と回転の強さを固定している点が比較の条件です。測定を増やすたびに総時間まで長くすれば、ここで比べたものとは別の実験になります。

測る内容が変われば、残る動きも変わる

今回の測定は、初期状態0という一つの状態にいるかを確かめます。これに対して、複数の状態をまとめた領域の内側にいるかだけを測ると、その領域から外への移り方は抑えられても、領域の中では変化が続く場合があります。量子ゼノダイナミクスと呼ばれる、より広い扱いです。

したがって「測定を増やすと、すべてが動かなくなる」という説明では、何を区別する測定かが抜け落ちます。量子回路の測定基底や、制御したい状態の集合を変えた場合は、同じ計算式がそのまま使えるとは限りません。

実機で確かめるときの比較条件

この例では、測定は瞬時で完全、測定の間の発展は一定、環境による緩和や測定の読み違いはないと仮定しました。実際には測定時間が必要で、測定装置との結合や環境の性質も結果へ影響します。繰り返すほど必ず遅くなるとは限らず、条件によっては変化が速まる反ゼノ効果もあります。

測定頻度の比較を見るときは、総時間が同じか、測定時間を含めたか、どの結果を残したか、測定誤差を補正したかを確認します。成功した記録だけの状態と、その記録を得る確率も分けて読みます。この区別があれば、理想モデルの高い確率と、実機で繰り返し利用できる制御の性能を混同せずに比べられます。

今回は、下記レビューの二準位モデルと測定の条件を基に、総回転量と測定回数を明示して計算しました。理想的な射影測定による変化の抑制を理解する例であり、測定装置の実装、性能向上の実証、誤り訂正の代替を示すものではありません。

出典