AIサーバーの性能が上がると、ラックに何台収められるかが気になります。でも、ラックを何列も並べて動かすには、電気を運ぶ場所、熱を逃がす設備、人が通って手入れする空間も必要です。機器だけを新しくしても、建物側にその余地がなければ使い続けられません。
2026年8月25日のOCPオンラインワークショップでは、AI向けデータセンターの施設設計を、電力・冷却・寸法の三つをつなげて考える資料が公開されました。ここで示されたのは、2027年から2028年以降を見据えた設計目標です。ワークショップの時点で仕様は検討中であり、すべての施設にそのまま当てはまる確定規格ではありません。[1・2]
ラックの「何kW」から、列の「何kW」へ
資料で目を引く単位は、kW/ftです。これは床面積1平方フィート当たりではなく、ラックが並ぶ列の長さ1フィート当たりの電力を表します。幅の違うラックや、計算機以外の機器を含む列を、施設側から考えるための物差しです。1フィートは約30cmです。[2]
2028年以降の目標として、機器が混在する列の基準には25kW/ft、ML向け機器が集中する場所のピークには350kW/ftが並んでいます。二つは対象も意味も異なります。350kW/ftを建物全体の平均値や、ラック1台の仕様と読み替えることはできません。高密度の部分と、周辺のネットワーク・ストレージなどが混ざる部分を分けて設計する、という意図が見えてきます。[2]
電気を届けた分だけ、熱の出口も考える
電力密度が上がれば、冷却も同じ場所で考える必要があります。発表資料は、MLラックが集中する部分について、列の長さ1フィート当たり液冷335kW、空冷15kWを冷却設備の検討値として挙げています。これも将来の高密度部分を想定した設計上の目安で、一般的なラックの実測値ではありません。[2]
液冷では、配管の太さだけで運べる熱量は決まりません。冷却液をどれだけ流し、入口と出口で何度温度が変わるかによって、運べる熱が変わります。資料が管径と流量、温度差を並べているのは、そのためです。流れを強めれば何でも解決するわけでもなく、配管内の流速には発表資料上の推奨値が置かれています。冷却能力を比べるときには、温度と流量の条件まで一緒に読みたいところです。[2]
通路、天井、床までが設計条件になる
大きく重いラックの周囲には、設置と保守のための空間が要ります。資料では、奥行き約1.8mのラック、対面するラック間の冷気通路約2.1m、二系統のバスウェイを通す場合の天井高約5.5mなどが、配置を考える境界として示されています。床荷重も無視できません。ラックと隣接する装置を合わせた重量の想定例は約6.8tです。[2]
ここでいうバスウェイは、列に沿って大きな電力を配る設備です。天井の空間には、その経路に加えて通信ケーブルや冷却配管も収まります。資料には複数の配置例があり、天井高の制約で二系統か四系統かを変える案も出てきます。同じ形の建物を一律に作る話ではなく、共通の設計条件を押さえたうえで、現場の制約に合わせて組み立てる話です。[1・2]
建物の余白は、あとから増やしにくい
サーバーは世代が変われば入れ替えられます。一方、床が支える重量、天井の高さ、通路の幅、電力と冷却の通り道は、運用を始めてから広げるのが難しい部分です。
今回の資料から見えてくるのは、将来のAIラックの数字を競うことよりも、そのラックを安全に設置し、冷やし、交換できる建物を先に考える姿勢です。新しい設備の仕様を見るときは「最大何kWか」に続けて、どの長さを基準にした値か、熱をどう運ぶか、人がどこから手入れできるかを確かめる。そうすると、数字の先にある設計の意味がつかみやすくなります。
参考資料
2026年9月23日確認。本文はOCPが公開した開催ページと13ページの発表スライドをもとにしています。音声での発言や質疑応答は本文の根拠に含めていません。
- Open Compute Project「OCP AI Next Generation: Open Data Center for AI Virtual Workshop」 — 2026年8月25日開催、仕様が検討中であることを含む開催記録。
- OCP公式掲載スライド「Next-Generation ML Infrastructure: The Open DC Architecture」 — pp.3–12。2027〜2028年以降の設計目標、電力・冷却・寸法と配置例。

コメントを残す