二枚の偏光板を重ね、透過軸を直角にすると、向こう側は暗くなります。ところが、その二枚の間に、透過軸を斜めにした偏光板をもう一枚入れると、光の一部が通るようになります。光を減らす板を増やしたのに明るくなる、この変化はマリュスの法則で説明できます。
鍵になるのは、偏光板が光の強さだけでなく、通過後の電場の振動方向も決めることです。枚数だけを数えるのではなく、どんな向きの光が次の板へ届くかを順番に追ってみます。
簡単にまとめると?
- マリュスの法則は、直線偏光と偏光板の透過軸のなす角を使い、通過する光の強さを計算する関係です。
- 直交する二枚の間に45度の板を置くと、理想条件では、最初の板を出た光の25%が最後まで通ります。各段階で光が増えているわけではありません。
- 同じ板を最後の後ろに追加しても効果はありません。追加する位置、強さの基準、実際の板の損失を分けて確かめる必要があります。
「通す向き」は光の進行方向とは別
光には、進む向きに対して横方向に振動する電場があります。その電場が一つの決まった方向に沿って振動する光を、直線偏光と呼びます。ここでの「向き」は、光線が右へ進むか上へ進むかではなく、光線を正面から見たときの電場の振動方向です。
理想的な直線偏光板は、透過軸に平行な電場の成分を通し、垂直な成分を通しません。入射する電場の振幅をE、透過軸との角度をθとすると、通る成分の振幅はE cos θです。光の強さは振幅の二乗に比例するので、通過前後の強さは次の関係になります。[1]
Iout = Iin cos² θ
これがマリュスの法則です。軸が同じ向きならθ=0度で全て通り、直角ならθ=90度で通りません。45度なら振幅は約0.707倍ですが、強さはその二乗の0.5倍です。「振幅が半分」と「強さが半分」を取り違えると、この先の計算も変わってしまいます。
間に置いた一枚が、最後へ届く偏光を変える
ここからは、最初の板の透過軸を0度、最後の板を90度と呼びます。角度は同じ基準から測ります。また、最初の板を通った直後の強さを100とします。元の光源の強さを100とする計算とは、基準が違います。
間に何もなければ、0度の偏光が90度の板へ直接届きます。通せる電場成分がないため、出力は0です。
二枚の間に45度の板を置くと、まず0度から45度への段階で、強さは100×cos²45度=50になります。このとき、通った光は45度方向の直線偏光になっています。最後の90度の板から見れば、届いた光との角度はもう90度ではなく、45度です。そのため、50×cos²45度=25が通ります。
追加した板が、もともと遮られるはずだった光を単に増やしたのではありません。最後の板へ入る光の偏光状態が変わった結果、最後の板に沿った成分が残ります。MITの講義資料やコロラド大学ボルダー校の実演資料でも、この中間の偏光板を使う構成が扱われています。[1][2]

45度は、二つの通過率の釣り合い
中間の板をα度にすると、その板との角度はα、最後の板との角度は90度−αです。したがって、最初の板の直後を基準にした最後の強さの割合は、次のように求められます。
Iout / Ifirst = cos² α × sin² α = ¼ sin²(2α)
この式を計算すると、αが30度でも60度でも18.75%、45度なら25%です。30度の場合は中間の板を75%が通りますが、最後の板を通れる割合はその25%です。60度では順序が逆で、中間を25%、そこから最後を75%が通ります。どちらも0.75×0.25=0.1875になります。
中間を0度にそろえると、そこでは全て通っても最後で遮られます。90度にそろえると、中間の時点で遮られます。0度から90度の範囲で45度が最もよく通るのは、二つの段階の通過率を掛けた値がそこで最大になるためです。三枚ならどんな角度でも明るくなる、という規則ではありません。
順番を変えると、同じ三枚でも0になる
45度の板を二枚の間ではなく、90度の板の後ろに置いたらどうでしょうか。0度から90度へ直接通す段階で、理想モデルの出力はすでに0です。後ろの板へ光が届かないので、その板を回しても0のままです。
この比較から、偏光板を「明るさを一定割合だけ減らす部品」として扱えないことが分かります。一定割合の減光だけなら、三つの割合を掛ける順番を交換しても答えは変わりません。偏光板では、一段を通ると電場の向きも変わり、次の段の通過率がそれに依存します。光学系を比べるときは、使う部品と角度に加えて、並べる順番も必要な情報です。
25%の基準と、現物でのずれ
ここまでの25%は、最初の偏光板を通過した後の光が基準です。元の光が無偏光で、その強さを100とする場合、理想的な最初の板を通る強さは50になります。そこから45度、90度の順に通すと、50→25→12.5です。元の光に対する割合は12.5%であり、25%ではありません。入射光が初めから特定方向の直線偏光なら、最初の段階にもその方向と軸の角度を使います。
どちらの基準でも、光が各段階で増えることはありません。100→50→25という変化は、元の100を超えず、途中の50も超えません。増えたのは「中間の板がない、出力0の別の配置」と比べた最後の出力です。
実際の偏光板では、通したい成分にも損失があり、遮りたい成分が完全には消えないこともあります。MITの資料も、直交させた実物の透過が厳密な0にならないことを区別しています。[1] したがって、ここで計算した25%や12.5%を、手元の偏光板の性能保証としては使えません。
比較するときは、同じ光源・受光条件で、最初の板の直後と、各配置の最後の強さを分けて記録します。板の重なっていない部分を光が通り抜ければ、それも測定に混ざります。コロラド大学の実演写真には、二枚が重ならない部分の明るい帯と、偏光板を通った領域を区別した説明があります。[2] 暗い配置でも残る光が、偏光板の漏れなのか、板の外を通った光なのかを分けることが、式と現物を比べる入口になります。
出典
- MIT OpenCourseWare, 6.007 Electromagnetic Energy: From Motors to Lasers, Spring 2011, Lecture 24: Polarized light and polarizers, pp.14–16(Crossed Polarizers、Malus’ law、Polarizer Puzzle)。講義資料PDF
- University of Colorado Boulder, Physics Undergraduate Labs, Polaroid Sheets(2026年3月27日更新、PurposeとFigures 1–4)。実演資料
