RC回路の時定数、負荷をつなぐと速く落ち着くのに電圧が下がる理由

高く満たされた薄緑の器と、横へ小さな流路が伸びる低い薄紫の器。蓄える量と流れる先の違いを表す抽象アート。

抵抗とコンデンサを組み合わせたRC回路では、電圧が新しい値へ近づく速さを「時定数」で表します。では、出力に別の抵抗をつないで時定数が小さくなれば、欲しい電圧へ早く到達できるのでしょうか。

負荷としてつないだ抵抗は、電流の行き先を増やします。その結果、落ち着くまでの時間だけでなく、落ち着いた先の電圧も変わります。ここでは単純な回路を使い、最終値へ近づく速さと、必要な電圧へ届くかどうかを分けて見ていきます。

簡単にまとめると?

  • 出力と基準電位の間に抵抗負荷を追加すると、今回のRC回路では最終電圧も時定数も小さくなります。
  • 時定数は「残りの差が一定の割合に減る時間」を表します。最終電圧そのものや、任意の電圧を超える時間とは別です。
  • 3.3V入力の例では、負荷なしは2Vを超えますが、同じ大きさの抵抗負荷を付けると最終値が1.65Vになり、待っても2Vには届きません。

比べるのは、出力に抵抗を一本足した回路

理想的な電圧源から抵抗Rを通し、その先の出力点と基準電位0Vの間にコンデンサCをつなぎます。出力電圧vは、コンデンサの両端の電圧です。この接続は、RCローパスフィルタの基本回路でもあります。ここでは周波数ごとの応答ではなく、入力を一度切り替えた後の変化を扱います。

比較する二つの条件は、出力から電流を取り出さない「負荷なし」と、出力点と0Vの間に抵抗RLを追加する「負荷あり」です。RLはCと並列です。電圧を観測する装置は回路へ影響しない理想的なものとし、負荷なしの条件に測定器の抵抗は含めません。

時刻0で入力を0Vから一定値Vsへ切り替えます。コンデンサの初期電圧は0V、抵抗と容量は一定とします。電源の内部抵抗、配線、部品の漏れや寄生成分を省いた、一つのコンデンサによる一次回路の計算例です。

最終電圧は分圧、近づく速さは並列抵抗で決まる

コンデンサへ流れる電流は、容量Cと電圧の変化率の積、C dv/dtです。負荷がある場合、直列抵抗Rから出力点へ入る電流の一部はRLへ流れ、残りがコンデンサへ流れます。電流のつり合いを書くと、

C dv/dt = (Vs − v)/R − v/RL

となります。負荷なしでは最後の項がありません。電圧が十分に落ち着くとdv/dtは0になり、コンデンサへ流れる電流も0に近づきます。それでも負荷抵抗には電流が流れ続けるため、RとRLで入力電圧を分け合います。

最終電圧 V∞ = Vs RL / (R + RL)

一方、式を最終値からの差について整理すると、その差が減る速さを決める抵抗はR単独ではなく、RとRLの並列合成抵抗になります。記号「∥」は並列接続の合成を表します。

時定数 τ = (R ∥ RL) C = RRLC / (R + RL)

入力を一定値に保った今回の条件では、出力はv(t) = V∞(1 − e−t/τ)と変わります。eは自然対数の底です。負荷なしはRLを無限大へ近づけた場合に相当し、最終電圧はVs、時定数はRCへ戻ります。基本の一次応答は末尾のMIT教材に基づき、負荷を加えた式と以下の数値は、この電流の式から計算しています。

時定数が半分でも、2Vには届かなくなる

Vsを3.3V、Rを1kΩ、Cを1µFとします。kΩはキロオーム、µFはマイクロファラドです。負荷なしの時定数は1ms、最終電圧は3.3Vになります。

ここへRL = 1kΩをつなぐと、並列合成抵抗は500Ωです。時定数は0.5msへ短くなる一方、最終電圧も半分の1.65Vになります。同じ1ms後の出力を計算すると、負荷なしは約2.086V、負荷ありは約1.427Vです。

入力3.3V、直列抵抗1キロオーム、容量1マイクロファラド。負荷なしは最終3.3V・時定数1ms、1キロオーム負荷ありは最終1.65V・時定数0.5ms。負荷ありでは2Vに届かない。
同じ入力・抵抗・容量で、並列負荷だけを変えた独自の計算例。破線は比較用の2Vです。実測波形ではありません。

時定数を一つ分だけ待つと、出力はそれぞれの最終値の約63.2%になります。負荷ありの0.5ms後は約1.043Vです。「0.5msで入力3.3Vの63.2%まで上がる」という意味ではありません。何を100%としているかが違うためです。

また、この例では入力直後の傾きはどちらも3,300V/sで同じです。初期電圧が0Vなので、最初の瞬間に負荷抵抗へ流れる電流は0で、両方とも3.3mAがコンデンサへ流れます。その後は負荷へ電流が分かれます。時定数が短いことを、立ち上がりの最初から電圧が速く上昇することと読み替えると、ここでも違いを見落とします。

「最終値の90%」と「2Vを超える」は別の条件

残りの差を10%にする、つまり各回路の最終値の90%まで上げるには、τ ln(10)、約2.303τの時間が必要です。負荷なしは約2.303ms、負荷ありは約1.151msで、この意味では負荷ありのほうが早く落ち着きます。ただし到達する電圧は、前者が2.97V、後者が1.485Vです。

次の回路が2Vを超えたことを必要とするなら、見るべきなのは別の条件です。負荷なしでは約0.932msで2Vになります。負荷ありの最終値は1.65Vなので、時間を長くしても2Vには届きません。時定数を何倍待つかという計算の前に、到達できる範囲を確かめる必要があります。

初期値0Vから上がる今回のモデルで、必要電圧Vthが0より大きく最終値より小さい場合、到達時間は次の式です。

tth = −τ ln(1 − Vth/V∞)

Vthが最終値に等しければ、理想的な指数応答は有限時間ではそこへ到達しません。最終値を超える条件なら、到達する時刻そのものがありません。実際の設計では、必要電圧に対する余裕や、許容誤差も含めて条件を決めます。

速さを比べる前に、負荷と基準をそろえる

RC回路の応答を比べるときは、入力の変化、初期電圧、負荷抵抗、そして「何V」または「最終値から何%以内」という判定基準を一緒に書くと、比較しやすくなります。例えば容量だけを小さくするなら、この理想モデルでは最終電圧を変えずに時定数を短くできます。負荷抵抗を小さくする場合は、最終電圧まで下がります。同じ「時定数を小さくする」操作でも、結果は同じではありません。

この計算は、負荷を一定の抵抗として表せる範囲のものです。入力に応じて電流が変わる能動回路や、切り替わる負荷、複数のコンデンサを持つ回路に、そのまま一つの時定数を当てはめることはできません。実部品では容量・抵抗のばらつきや測定器の入力抵抗も確認します。

時定数は回路の落ち着き方を読むための便利な量です。その隣に最終電圧を置いておくことで、「早く落ち着く」と「必要な電圧へ早く届く」を区別できます。

参考資料