AIサーバーの保存先を考えるとき、まず「SSDを何テラバイト積めるか」に目が向きます。でも、同じSSDでも、生成中の文脈を素早く取り出す場所と、学習用の大量の資料を置く場所では、求められる性格が違います。
2026年8月のOCP Korea Tech Dayで、FADUのAndy Kim氏は、フラッシュメモリーがAIデータセンターで担う役割を三つに分け、SSDコントローラーに必要な設計を示しました。発表は製品の性能保証ではなく、これからの負荷をどう捉えるかという提案として読むと、ストレージ選びの見通しがよくなります。[1・2]
GPUのメモリーとSSDの間にある悩み
文章を一語ずつ生成するAIは、それまでに読んだ文脈から計算した中間状態、KVキャッシュを使います。会話が長くなり、同時に応じる利用者が増えると、その置き場所が大きくなります。GPU上のHBMは速い一方、容量と費用には限りがあります。発表は、このギャップにフラッシュをもっと近づける構想を描いています。[2]
ここで、SSDをHBMと同じように読めると考えるのは早計です。生成のたびにすぐ使うKVは、GPUの近くに戻す時間まで含めて設計する必要があります。資料にある「モジュール上の高帯域フラッシュ、ラック内のNVMe、列に置く大容量QLC」という三段の図も、発表者が確立済みではない一つの方向と明記したものです。[2]
一つのSSDに、三つの仕事を押しつけない
発表では、AI向けSSDの役割を「メモリー」「性能」「容量」に分けています。メモリーに近い層は、文脈やKVを取り出すときの待ち時間が大切です。性能を重視する層は、頻繁に使うデータやメタデータを小刻みに読みます。容量を担う層は、資料群や使用頻度の低い状態を、無理のない費用で保管します。[2]
三つは同じ容量の単位で比べられても、評価したい数字は違います。毎秒に運べる量だけでは足りず、小さな読み出しをどれだけさばけるか、遅い時にどこまで遅くなるか、利用者が同時に増えた時に速度を保てるかも見ます。大容量向けのSSDを、活発に読み書きする層へそのまま当てはめると、容量は足りても待ち時間が合わないことがあります。
性能の裏側にいるコントローラー
SSDにはデータを保存するNANDと、その読み書き、配置、エラー訂正、他の機器との通信を調整するコントローラーがあります。発表がとくに強調するのは、AI向けの要求をこのコントローラーでどう受け止めるかです。[2・3]
挙げられた要件は五つ。512バイト〜4キロバイト程度の小さなI/Oを数多く処理すること、平均ではなく遅延のばらつきを抑えること、ペタバイト級でも管理用DRAMを容量に比例して増やさないこと、GPUが起点となるI/Oの経路を効率化すること、複数利用者の性能と安全性を分けることです。これらは設計上の要求であって、登壇した企業のすべての製品が五項目を達成したという試験結果ではありません。[2]
たとえば、小さな読み出しを増やすほど、NAND自体の速さだけでなく、要求を振り分ける制御や管理情報の扱いが効いてきます。逆に、巨大な資料を順に読む仕事では、一度に運べる量と容量あたりの費用が重要になります。「AI用SSD」という一つの名前にまとめず、何を置き、いつ取り出すかから考える理由がここにあります。
選ぶ基準は、保存量から仕事の種類へ
FADUは講演でPCIe 6.0世代のコントローラーも紹介しています。ただし、その発表値をSSD完成品の消費電力や、あらゆるAI負荷での実測値へ読み替えることはできません。必要なのは最高値だけでなく、対象のデータ量、読み出しの粒度、遅延のばらつき、書き換えの頻度を合わせて見ることです。[2・3]
SSDの役割が増えるほど、コントローラーは「速くする部品」から、容量・待ち時間・共有の条件を整える部品へ近づきます。GPUのそばに置くものと、長く保管するものを分けて考える。今回の資料は、その設計の出発点を示しています。
SSDコントローラーを手がけるFADUの事業全体は、cyclewaveの企業記事で扱っています。
参考資料
2026年9月23日確認。本文は公式掲載スライドの全9ページをもとにし、動画の発言や質疑応答は根拠に含めていません。
- Open Compute Project「2026 OCP Korea Tech Day」 — 発表一覧と登壇者。
- Andy Kim(FADU)「Flash in the AI Datacenter: New Roles and Requirements for SSDs and Controllers」 — 特にpp.2–8。p.5の三層図は提案。
- FADU 2026年半期報告書 — II-1、II-2。SSDコントローラーと完成品の区別。

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