液冷の話では、コールドプレートや配管に目が向きます。でも、その中を流れる液体は「よく冷える」だけで選べません。冷却液が少しずつ薄まったり、金属やゴムに触れ続けたりする数年間まで考える必要があります。
2026年8月のOCP Korea Tech Dayで、GS Caltexはプロピレングリコール(PG)を混ぜた冷却液を取り上げました。PGは水より熱を運ぶ性能が低い一方、凍結や微生物の増殖を抑える助けになります。だから、濃度を下げれば必ず優れる、という単純な話にはなりません。[1・2]
冷えやすさと守りやすさの間で
水は熱容量と熱伝導率に優れ、粘度も低く、流しやすい液体です。PGを加えると凍結に強くなり、微生物が増えにくい条件もつくれます。ただし粘度や熱の運び方は変わり、同じ流路・ポンプ・流量でも温度と圧力損失が違ってきます。発表資料はPG25、PG15、PG10を比較し、薄くするほど熱・流れの面では有利という測定例を示しました。その比較はGS Caltexの試験条件に限ります。[2]
OCPが9月15日に公開した改訂ガイドラインは、PG25系の液体を、CDUからサーバーのコールドプレートへ至る閉ループで使う場合を主な対象にします。建物側の水系統まで同じ処方でよいという意味ではありません。この文書は推奨の枠組みで、現場の材質や運転条件に合わせて適合性を確かめるよう求めています。発表の後に公開された版なので、8月の講演時点で確定していた仕様として扱うこともできません。[3]
「入れた時」と「使い続けた後」は違う
運用中には、洗浄後に残った水や補給水で液が薄まることがあります。異物の混入、温度による変質、腐食防止剤の消耗も重なります。GS Caltexの発表は、この変化を前提に、PG濃度やpHだけでなく、腐食と微生物の両方を追う重要性を示しました。[2]
同社は複数の金属を使った腐食試験と、3種類の菌を用いた試験結果を載せています。PG10やPG15でも抑制効果が見えたとしていますが、これは同社製品を使った管理下の試験です。配管の材質、表面にできる膜、補給水、運転期間まで含めた実施設備の長期結果ではありません。OCPの改訂ガイドラインも、液体と触れる金属・樹脂・シール材の適合、洗浄、ろ過、採水・分析をまとめて扱っています。[2・3]
ひとつの数字で安全を決めない
資料は電気伝導率の低さも強調します。ただ、導電率は添加剤や温度で変わります。OCPの改訂ガイドラインでは、防食剤入りPG液の導電率は主な合否指標ではなく、変化を追う補助的な値として位置づけています。導電率だけで腐食や漏れの安全性を判定することはできません。[2・3]
温度の試験も読み方が大切です。GS Caltexが示した2台の250W CPUを使う系では、液の入口温度35〜50℃の範囲で測定値を記録しています。これだけで、別のCPU、流量、コールドプレート、室温でも同じ結果になるとは言えません。[2]
選ぶ時は、液体だけを比べない
まず冷却ループの範囲を分け、使う金属・樹脂・シール材、必要流量、温度範囲を決める。次に、その液を入れる前の洗浄と、入れた後の採水・補給・交換まで考える。この順番なら「冷えやすい液体」を選んだつもりが、保守しにくい設備をつくってしまうことを避けられます。
GS Caltexは講演時点で、自社PG25製品がOCP-Inspired認証の手続き中と説明していました。PG10・PG15についても、OCPの標準化はまだだと明記しています。発表を製品の認証や実施設備の寿命保証へ読み替えず、設計と保守の条件を考える材料として使いたいところです。[2]
冷却液を発表したGS Caltexが、エネルギー事業の中で何を扱う会社なのか。cyclewaveの企業記事で整理しています。
参考資料
2026年9月23日確認。発表スライドと公開文書を区別して読み、発表者の試験値は実運用の保証とみなしていません。
- OCP「2026 OCP Korea Tech Day」 — 開催情報と発表一覧。
- WooKyun Synn(GS Caltex)冷却液発表資料 — pp.5–9、13–25。比較・菌・腐食・CPU試験はいずれも同社資料。
- OCP「Guidelines for Using Propylene Glycol-Based Heat Transfer Fluids in Liquid Cooled Racks」 — 2026年9月15日公開、Revision 2.0 v1.0.0。8月の講演より後の改訂版。

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