たとえば、液冷ラックを新しい機種へ入れ替えるとします。必要な冷却液の流量が変わっても、施設の配管をすべて作り直すのではなく、交換する範囲を区切っておけたら、次の構成へ移りやすくなります。その境目をつくる部品の一つが、配管を着脱するクイックディスコネクト(QD)です。
2026 OCP Korea Tech Dayの公式一覧に掲載されたStäubli(ストーブリ)の資料は、大口径QDからホースの材質、曲げ方、端末の固定方式までを並べ、液冷設備のモジュール化を考えています。ここでは、接続部品を単体で選ぶだけでは見えにくい、その組み合わせに目を向けます。[1・2]
どこで外すかを、配管全体から決める
資料の図は、施設側の冷却水系、冷却液分配装置のCDU、ラック、各サーバーを含む冷却系統の全体像を示しています。ラック内で冷却液を分けるマニホールドだけでなく、施設配管からラックへ分岐する場所にも、交換や接続の境界があります。[1]
その分岐部の説明では、流量を調整する部品、ホースを接続する部品、ラック側で着脱する部品を分けています。ホース端部を固定する継手と、着脱時の液だれを抑える「drip-less connector」は、それぞれ担う役割が違います。接続できる形をそろえることに加え、どの部分を外し、どの部分を設備側に残すかを考える構成です。[1]
大口径QDの反対側にも、接続の仕様がある
QDというと、二つの部品を着脱する面に目が向きます。ただ、その反対側ではホースや配管へ接続しなければなりません。資料にあるStäubliのTDUシリーズには、ねじ接続、ホースを差し込むホースバーブ、90度に曲がった端部、クランプで接続するTri-Clampなど、複数のホース側インターフェースが示されています。[1]
たとえば、掲載表では直線のホースバーブをTDU24は25mm、TDU50は50mmと記載し、90度曲がりの選択肢はTDU24に示す一方、TDU50の欄は「-」です。シリーズの大きさだけを替えれば、同じ取り回しをそのまま使えるとは限りません。端部の寸法、向き、シールの方式を合わせて見る必要があります。これらは掲載版に示された選択肢で、現行の全構成を網羅する一覧ではありません。[1]
ラック電力に応じてQDの大きさや個数を変える推奨例もあります。ただ、そこで示された電力区分だけでは、冷却液の条件や許容される圧力損失までは分かりません。製品名と個数を、どの設備にも当てはまる冷却能力へ読み替えず、実際の流量と流路の条件につなげて読むことが大切です。[1]
EPDMという材料名の、もう一段先を見る
ホースの節では、過酸化物架橋EPDMホースが取り上げられています。EPDMはエチレンプロピレンジエンゴムのことで、過酸化物架橋は、過酸化物を使ってゴムの分子同士をつなぐ処理です。材料名だけでなく、その作り方まで仕様に含まれている点が、この節の手がかりになります。[1]
ここで気をつけたいのは、同じシリーズ名でも口径によって条件が変わることです。資料に引用されたカタログの一つは、内層について1インチ以下は過酸化物架橋、1インチを超えるサイズは硫黄架橋と区別しています。見出しに「過酸化物架橋EPDM」とあっても、そのページに登場する全口径へ一律には広げられません。[1]
また、ホースの内層と、QD内部のシールは別の部品です。どちらにEPDMの表記があっても、同じ仕様が一式に適用されるという意味にはなりません。冷却液に触れる部分を分けて、材料と使用条件を確かめる必要があります。[1]
曲げられる半径が、置ける場所を変える
ホースは柔らかく見えても、どれだけ小さく曲げてよいかには製品ごとの条件があります。最小曲げ半径は、その取り回しを考えるための寸法です。資料の比較表は、口径、内層の材料、圧力の表示と、この半径を並べています。[1]
表を見ると、同じ1インチ、150PSI、過酸化物架橋EPDMという表示の行でも、最小曲げ半径はそろっていません。材料と圧力の二つが同じだけでは、同じ場所に収まるホースを選べない、ということです。この表は複数のカタログ値を並べたもので、同じ条件で曲げ試験をした結果や、製品全体の優劣を示すものではありません。[1]
たとえば、接続部のすぐ横でホースを曲げたい配置なら、ホース自体の曲げ半径に加えて、直線の端部を使うか、曲がった端部を使うかも関わります。接続部とホースを別々に選んでから配置を決めるより、必要な空間を一緒に考えるほうが、組み合わせの違いを見つけやすくなります。
端末の固定まで含めて、交換できる流路にする
最後に扱われるホースアダプターには、金属の筒を締めて固定するかしめ、クランプ、ねじ込み、専用の組み合わせでクランプを使わず保持する方式が並びます。これは、ホースを端末へ固定する方法の違いです。QDの着脱面とは別に、その手前にも適合を確認する接続があることが分かります。[1]
液冷設備をモジュール化するには、外せる部品を加えるだけでなく、外す境界、通したい流量、ホースの材質と曲げ方、端末の固定を一つの流路として考えます。大口径QDとホースを組み合わせる設計は、いまのラックへ冷却液を届けると同時に、次の交換で何を残し、何を替えるかを決める設計でもあります。
Stäubliの事業を知る
流体の接続部品を扱うStäubliの事業全体は、cyclewaveの企業解説にまとめています。
参考資料
公開されている21ページのPDFをもとに構成しました。表紙は2026年、PDFの作成日とフッターは2026年9月1日です。8月21日の開催当日に使われた版との同一性は未確認で、当日の発言や新製品の発売を示す資料としては扱っていません。
[1]Stäubli Korea「Quick disconnector for data center liquid cooling」。資料内題名「AI 데이터센터 액체냉각 모듈화 인프라를 위한 QD」(AIデータセンターの液冷インフラをモジュール化するためのQD)。5–7ページ:配管と接続の境界、11–13ページ:大口径接続とホース側の仕様、14–17ページ:ホース材・曲げ半径・端末固定。
[2]Open Compute Project「2026 OCP Korea Tech Day」。開催日、登壇者、公開資料の公式案内。

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