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  • WiwynnとAVCが示す二相DLC、沸騰を使う液冷の流量配分と圧力損失

    WiwynnとAVCが示す二相DLC、沸騰を使う液冷の流量配分と圧力損失

    たとえば、液体で冷やすチップの発熱が増え、冷却液を沸騰させて熱を運ぶ方式を検討するとします。液体が蒸気へ変わるときには、多くの熱を受け取れます。ただ、その変化は冷やしやすさだけでなく、配管の中の流れ方にも関わります。

    OCP APAC 2026の公開資料「Technical Challenges and Key Considerations in Transitioning from Single-Phase to Two-Phase DLC」は、単相から二相へ移る直接液冷(DLC)の設計課題を扱っています。注目したいのは、熱を受け取る量だけでなく、液体と蒸気が混ざった流れをどう配り、圧力をどう管理するかです。[1]

    簡単にまとめると?

    • 二相DLCは、冷却液が蒸発するときに吸収する熱も使ってチップを冷やします。
    • 蒸気が増えると流れにくくなり、熱の大きい側へ液体が届きにくくなる場合があります。
    • 単相との比較やシステム全体の実験検証は、今後の課題として残っています。

    液体の温度上昇に加えて、蒸発するときの熱を使う

    チップの熱を受け取る板状の部品が、コールドプレートです。単相の直接液冷では、内部を流れる冷却液を液体のまま使い、温度の上昇によって熱を運びます。二相では液体の一部を沸騰させ、液体から蒸気へ変わるときに吸収する蒸発潜熱も利用します。[1]

    資料は、二相冷却によって熱の受け渡しや温度の均一さを改善できる可能性、必要な流量やポンプ動力を抑えられる可能性を挙げています。ただし、これは方式の利点としての説明です。特定の装置で、同じ条件の単相冷却より何割優れていたというシステム全体の実証ではありません。[1]

    熱が大きい経路に、自然と多く流れるとは限らない

    二相の流れでは、液体と蒸気の割合も変わります。資料の乾き度は、気液混合物の質量のうち、蒸気が占める割合を表す値です。流れながら熱を受け取ると、この割合が変わり、圧力損失にも影響します。圧力損失は、流れに伴って入口から出口へ圧力が下がることです。[1]

    複数のコールドプレートを直列につないだ構成例では、下流へ進むにつれて蒸気の割合が増え、各プレートの圧力損失や冷却の状態がそろわなくなる課題を示しています。上流と下流を同じ液体の条件として扱うだけでは、十分ではありません。[1]

    並列に分ければ解決するとも限りません。資料の800 Wと300 Wの熱負荷を並べた例では、熱負荷の大きい側に少ない流量、小さい側に多い流量を示す矢印があります。高い熱負荷で蒸気の割合が増え、流れにくくなると、必要な側へ十分な液体が届かなくなる場合があるのです。この図は流量の偏りを説明する構成例であり、すべての並列回路で同じ配分になるという測定結果ではありません。[1]

    さらに、気泡が逆向きに動いたり、流れが周期的に揺れたりする流動不安定も課題になります。資料は過去の研究とAVCの実験例を示し、入口の流れを絞る部材、広げた出口流路、液体を分配するマニホールドの設計などを対策の候補に挙げています。必要な総流量とともに、各流路へどのように配るかを設計する必要があります。[1]

    低い圧力の冷媒でも、設備の条件が緩くなるとは限らない

    冷媒を選ぶと、装置が受ける圧力だけでなく、圧力が下がったときの温度条件も変わります。ここで関わるのが飽和温度です。液体と蒸気が共存できる温度で、圧力に応じて変わります。資料は、この関係が建物側の冷却水の温度条件にまで影響すると説明しています。[1]

    資料の仮定したシステムでは、飽和温度50℃から圧力が100 kPa下がった場合を比べています。低圧側の冷媒R1233zdの例では飽和温度が37℃へ、中圧側のR1234yfの例では46℃へ下がります。これは圧力と温度の関係を示す比較図で、装置の実測性能を比べた値ではありません。[1]

    同じ圧力低下でも、温度への影響は同じではありません。資料は、低圧側では機械的に受ける圧力を抑えられる一方、圧力損失による温度変化に敏感になり、設備水の温度条件が厳しくなると整理しています。中圧側では、その影響を抑えやすい反面、より高い圧力に耐える機械設計が必要になります。どちらが使いやすいかは、冷媒だけでなく冷却回路と設備側の条件を合わせて考える部分です。[1]

    冷媒どうしの比較と、単相・二相の比較を分ける

    資料には、同じコールドプレートと同じ一次側の条件を使い、R134aとR1233zd(E)を比較した実験もあります。ここで比べているのは、二相冷却に使う冷媒の違いです。先ほどの仮定したシステム図とは冷媒の組み合わせも異なり、単相と二相の優劣を直接示す実験ではありません。[1]

    冷媒の選択では、潜熱や密度に加え、接触するホース、継手、コールドプレート、ポンプの材料との適合性も個別に確かめる必要があります。安全面や環境面の条件も含め、熱の物性値一つで決められるものではありません。[1]

    発表の最後に残されているのは、同じ設備水条件で単相と二相を比べること、流動不安定を評価する解析手法、システム全体での実験検証です。二相冷却の可能性を活かすには、沸騰によって熱を受け取れることに加え、必要な流れを安定して届けられることまで確かめていく。その道筋を示した資料といえます。[1]

    実験例を紹介しているAVCの事業全体については、cyclewaveの企業解説にまとめています。

    参考資料

  • AVCのコールドプレート、微細流路で熱を取る工夫と圧力損失

    AVCのコールドプレート、微細流路で熱を取る工夫と圧力損失

    チップの熱を受け取るコールドプレート。その中に細かな流路を増やすと、冷却液へ熱を渡す面積を広げられます。小さな部品の改良に見えますが、液体を送り出すポンプや、汚れを取り除くフィルターにも新しい条件が生まれます。

    2026年8月のOCP APAC Summitで、AVCのFang-chou Lin氏が取り上げたのは、このつながりでした。今回は公開スライドから、冷やす面積を増やすことと、液体を流し続けることの両立を見ていきます。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • コールドプレートのフィンを細かくすると熱を渡す面積を増やせますが、流れの抵抗との両立が必要です。
    • ポンプは最大流量だけで選ばず、実際の流路抵抗に対して出せる圧力と流量を確かめます。
    • AVCは細かなろ過や侵食の検証も求めていますが、発表値は共通規格や安全な流速・寿命の保証ではありません。

    45°Cの入口温度で、集中する熱を受け取る

    発表が背景に置くのは、先端的な半導体パッケージで熱が一部に集中する状況です。同氏は、局所的な熱流束が7W/mm²に近づく例を示しています。1mm²という小さな面積に、7W近い熱負荷がかかるイメージです。チップ全体の平均とは異なり、特に熱い場所をどう冷やすかが課題になります。[2]

    そこで紹介されるのが、45°Cの冷却液が入ってくる条件に合わせたコールドプレートです。内部の薄いひれ「フィン」を細かく並べ、熱を受け渡す面積を増やします。資料には、フィンのピッチを150µmから100µm、さらに80µmへと小さくする方向が示されています。ピッチはひれが繰り返し並ぶ間隔で、液体が通る隙間の幅そのものとは区別します。[2]

    ポンプには、流量と圧力の両方が必要になる

    細かな流路には、液体が通る際の圧力損失との兼ね合いがあります。圧力損失とは、流れに伴って入口から出口へ圧力が下がること。ポンプはその分を補いながら、冷却に必要な流量を送り続ける必要があります。[2]

    そのため、ポンプの最大流量だけを見ても、組み合わせたときの性能は分かりません。流路で生じる抵抗に対して、どれだけ圧力を出し、そのとき何L/分を送れるかが大切です。コールドプレートの面積を増やした効果も、必要な液体が届いてこそ生きてきます。

    発表では、液体を複数の領域に振り分けるマニホールドも紹介されています。図では供給口と排出口を分けて配置し、流れる道筋を短くしています。フィンを細かくする工夫に、熱い場所へ液体を配る工夫を組み合わせる設計です。[2]

    圧力損失のグラフには、フィンの高さや隙間を変えた計算例も載っています。ただ、流量や冷却液などの比較条件は十分に示されていません。特定の寸法ならどの製品でも同じ性能になる、と読むことはできません。

    25µmのフィルターは、数字の先まで見る

    流路が細かくなると、冷却液に混じる粒子にも敏感になります。資料が挙げるのは金属粒子、金属以外の異物、微生物による付着物です。流路がふさがれば、熱が集中する場所へ必要な液体が届きにくくなります。[2]

    Lin氏は、冷却液の温度や流れを整えるCDUに、従来の50µmから25µmへと細かいろ過を求める方向を示しています。稼働中に交換できるフィルターも併せて紹介しています。これはAVCの発表に示された設計の考え方で、すべてのCDUに共通するOCPの規格値として受け取らないことが大切です。[2]

    製品を比べる場面では、「25µm」の表記に加えて、どの大きさの粒子をどの程度取り除けるのか、必要な流量でどれだけ圧力が下がるのかまで知りたくなります。これらは今回のスライドだけでは確認できないため、実際のフィルター仕様と組み合わせて読む部分です。

    流れを速くする設計には、耐久性の宿題もある

    発表の最後には、まだ解くべき課題も残されています。一つは、サーバー側の冷却回路で許容する粒子の大きさや清浄度を、実用的な条件として定めること。もう一つは、コールドプレート内の流速を高めたときの侵食を調べることです。[2]

    侵食は、流れなどによって材料が少しずつ削られる現象です。同氏は研究の必要性を挙げていますが、安全な流速の上限や寿命を示したわけではありません。流量を増やして熱を運ぶ設計にも、長く使うための検証が伴います。

    この発表から読み取れるのは、コールドプレートの寸法、ポンプの流量と圧力、冷却液の清浄度を一緒に決める必要があるということです。熱を受け取る面を細かく作り込むほど、その面まで液体を届け、汚れを抑え、流路を保つ設計が重要になります。微細化は、冷却回路全体を見直すきっかけでもあるのです。

    AVCについて、もう少し

    AVC(奇鋐科技)は、台湾に本社を置き、冷却部品やファン、システム全体の放熱設計を手がける企業です。事業の広がりや決算は、cyclewaveの企業記事で紹介しています。[3]

    参考資料

    2026年9月23日確認。発表の解説は公開スライドをもとにしています。寸法や条件は発表内の例として紹介しています。

    1. Open Compute Project「2026 OCP APAC Summit」発表一覧 — Cooling Environments、Fangchou Lin(AVC)。開催日は2026年8月11〜12日。
    2. Fang-chou Lin「Advanced Thermal Management for High-Density AI Servers: Cold Plate Optimization and CDU Specification Requirements」公式掲載スライド — 4〜7・10ページ。局所発熱、フィンと流路、圧力損失、ろ過、今後の課題。
    3. AVC:会社紹介・製品分野 — 企業の輪郭を確認。
  • AVCとnVentの液冷設計、CDUとコールドプレートをつないで考える

    AVCとnVentの液冷設計、CDUとコールドプレートをつないで考える

    AIサーバーを液体で冷やす。そう聞くと、まず気になるのは「どれくらい冷やせるのか」という性能かもしれません。

    では、そのサーバーが何台も並び、毎日動き続ける場所ではどうでしょう。冷却液をきちんと行き渡らせるには。部品を交換するときは。そして、どこかに不具合が起きたら。

    そんな「使い続ける場面」まで考えると、液冷の見え方が少し変わってきます。

    2026年8月に台北で開かれたOCP APAC Summitでは、AVCとnVentが、こうした液冷の設計に関わる発表を行いました。今回は公式動画と資料をたどりながら、冷却液を送り出すCDUと、サーバー側の部品のつながりを見ていきます。[1]

    簡単にまとめると?

    • CDUは施設とサーバーの冷却回路の間で、冷却液の温度や流れを整えます。
    • コールドプレート、ポンプ、配管、フィルターを一続きの流路として考えます。
    • 冷却能力の数字だけでなく、故障への備えや部品交換時に止める範囲まで確かめます。

    冷やすしくみの間をつなぐ「CDU」

    まず押さえておきたいのが、CDUという装置です。正式にはCoolant Distribution Unit。今回の発表では、施設側の冷却設備とサーバー側の冷却回路の間に入り、冷却液の温度や流れを整える役割が紹介されています。[2]

    nVentのMing Tien氏が説明するのも、この「間に入る」という役割です。温度や流量、圧力、冷却液の品質を管理しながら、設備とサーバーをつなぐ。さらに、配管や弁を含めた設計によって、不具合が起きたときの影響をどこまでに抑えるかを考えます。CDUだけを見ていたときより、周りの設備との関係が見えてきます。[2]

    装置を選ぶときも、冷却能力の数字と一緒に、流路で失われる圧力を補いながら、必要な量の液体を送れるかを確かめます。通信が途切れたり、センサーが故障したりしたときの動きも、あらかじめ考えておく。そのような運転中の備えまで、同氏の資料では取り上げられています。[2]

    チップの近くから、液体の通り道をたどる

    今度は、サーバーの中へ少し目を移してみます。

    発熱する部品に接し、その熱を冷却液へ渡すのが「コールドプレート」です。AVCのFang-chou Lin氏は、この部品の細かな流路と、CDUに求められる条件を説明しました。[3]

    細かな流路で熱を受け取る設計には、液体が流れるときに生じる圧力の低下、つまり「圧力損失」との兼ね合いがあります。さらに、粒子が流路をふさがないよう、冷却液の清浄さやフィルターにも気を配る必要があります。チップのすぐそばにある部品の話が、液体を循環させる設備の話につながっていくわけです。[3]

    二つの発表を合わせて読むと、コールドプレート、ポンプ、配管、フィルターを一続きで見ることの大切さが伝わってきます。たとえば部品を変えるなら、液体の流れや、メンテナンスの仕方にはどんな影響があるのか。そんなふうに視野を広げると、製品資料から知りたいことも具体的になります。

    製品紹介を読むときに、気にしておきたいこと

    ここからは、今回の発表をもとにQuantum Seaで整理した読み方です。次に液冷の製品紹介を見るときは、こんな点にも目を向けてみてください。

    その性能は、どんな条件で出るのか

    同じ冷却能力の数字でも、入口の温度や冷却液の種類、流量が違えば、比較の前提も変わります。数字のそばに書かれた条件まで読むと、使いたい環境に合うかを考えやすくなります。

    部品を交換するとき、どこまで止めるのか

    ポンプやフィルターを交換するとき、ほかのサーバーは動かし続けられるでしょうか。普段の性能に加えて、手入れや故障対応の場面を想像すると、設備の使い勝手が見えてきます。

    変化に気づき、対応するのは誰か

    温度や流れに異常が出たとき、設備の担当者とサーバーの担当者は、それぞれ何を確認するのか。冷却液の状態を誰が管理するのか。機器の仕様と一緒に、人の動きも考えておきたいところです。

    「冷やせる」の先にある、使い続けるための工夫

    たとえば、今ある設備にサーバーラックを追加する場面。冷却装置を増やすほかに、配管を変えたり、保守の手順を見直したりする必要はあるでしょうか。こうした問いが、今回の発表を自分の関心や現場に引き寄せて読む入口になります。

    講演だけで個々の製品の使い勝手までは判断できませんが、仕様や導入事例を調べるときの手がかりにはなります。次に液冷の製品紹介を見るときは、冷却能力の数字と一緒に、液体の通り道やメンテナンスの仕方にも目を向けてみてください。そこに、使い続けるための工夫が見つかるかもしれません。

    今回登場した2社を、少しだけ

    技術を追っていくうちに、つくっている会社にも関心が向いた方へ。今回の2社には、それぞれ次のような事業の広がりがあります。

    nVent:電気をつなぎ、機器や設備を保護する製品を手がける企業です。冷却に加え、機器を収める筐体や電力まわりの製品も扱っています。[4]

    AVC(奇鋐科技):台湾に本社を置く冷却ソリューションの企業です。冷却部品やファン、システム全体の放熱設計などを手がけています。[5]

    参考にした動画・資料

    対象は2026年8月11〜12日開催のOCP APAC Summitです。9月21日までに確認した資料のうち、液冷に関する二つの発表を取り上げました。紹介した設計の考え方は各社の発表に基づくもので、OCPの共通規格として紹介するものではありません。

    [1]OCP公式開催報告 / 講演・資料一覧

    [2]nVent「From Rack to Facility」:講演動画(9月18日公開、10:08・12:04・18:48付近)/ CDU設計のスライド(7・9・12・13ページ)。

    [3]AVC:コールドプレートとCDU要件のスライド(5〜7ページ)。

    [4]cyclewave:nVentはどんな会社? 電気設備を支える事業と収益のしくみ。

    [5]AVC公式サイト:会社概要・製品分野(台湾本社、製品分野)。