チップの熱を受け取るコールドプレート。その中に細かな流路を増やすと、冷却液へ熱を渡す面積を広げられます。小さな部品の改良に見えますが、液体を送り出すポンプや、汚れを取り除くフィルターにも新しい条件が生まれます。
2026年8月のOCP APAC Summitで、AVCのFang-chou Lin氏が取り上げたのは、このつながりでした。今回は公開スライドから、冷やす面積を増やすことと、液体を流し続けることの両立を見ていきます。[1・2]
45°Cの入口温度で、集中する熱を受け取る
発表が背景に置くのは、先端的な半導体パッケージで熱が一部に集中する状況です。同氏は、局所的な熱流束が7W/mm²に近づく例を示しています。1mm²という小さな面積に、7W近い熱負荷がかかるイメージです。チップ全体の平均とは異なり、特に熱い場所をどう冷やすかが課題になります。[2]
そこで紹介されるのが、45°Cの冷却液が入ってくる条件に合わせたコールドプレートです。内部の薄いひれ「フィン」を細かく並べ、熱を受け渡す面積を増やします。資料には、フィンのピッチを150µmから100µm、さらに80µmへと小さくする方向が示されています。ピッチはひれが繰り返し並ぶ間隔で、液体が通る隙間の幅そのものとは区別します。[2]
ポンプには、流量と圧力の両方が必要になる
細かな流路には、液体が通る際の圧力損失との兼ね合いがあります。圧力損失とは、流れに伴って入口から出口へ圧力が下がること。ポンプはその分を補いながら、冷却に必要な流量を送り続ける必要があります。[2]
そのため、ポンプの最大流量だけを見ても、組み合わせたときの性能は分かりません。流路で生じる抵抗に対して、どれだけ圧力を出し、そのとき何L/分を送れるかが大切です。コールドプレートの面積を増やした効果も、必要な液体が届いてこそ生きてきます。
発表では、液体を複数の領域に振り分けるマニホールドも紹介されています。図では供給口と排出口を分けて配置し、流れる道筋を短くしています。フィンを細かくする工夫に、熱い場所へ液体を配る工夫を組み合わせる設計です。[2]
圧力損失のグラフには、フィンの高さや隙間を変えた計算例も載っています。ただ、流量や冷却液などの比較条件は十分に示されていません。特定の寸法ならどの製品でも同じ性能になる、と読むことはできません。
25µmのフィルターは、数字の先まで見る
流路が細かくなると、冷却液に混じる粒子にも敏感になります。資料が挙げるのは金属粒子、金属以外の異物、微生物による付着物です。流路がふさがれば、熱が集中する場所へ必要な液体が届きにくくなります。[2]
Lin氏は、冷却液の温度や流れを整えるCDUに、従来の50µmから25µmへと細かいろ過を求める方向を示しています。稼働中に交換できるフィルターも併せて紹介しています。これはAVCの発表に示された設計の考え方で、すべてのCDUに共通するOCPの規格値として受け取らないことが大切です。[2]
製品を比べる場面では、「25µm」の表記に加えて、どの大きさの粒子をどの程度取り除けるのか、必要な流量でどれだけ圧力が下がるのかまで知りたくなります。これらは今回のスライドだけでは確認できないため、実際のフィルター仕様と組み合わせて読む部分です。
流れを速くする設計には、耐久性の宿題もある
発表の最後には、まだ解くべき課題も残されています。一つは、サーバー側の冷却回路で許容する粒子の大きさや清浄度を、実用的な条件として定めること。もう一つは、コールドプレート内の流速を高めたときの侵食を調べることです。[2]
侵食は、流れなどによって材料が少しずつ削られる現象です。同氏は研究の必要性を挙げていますが、安全な流速の上限や寿命を示したわけではありません。流量を増やして熱を運ぶ設計にも、長く使うための検証が伴います。
この発表から読み取れるのは、コールドプレートの寸法、ポンプの流量と圧力、冷却液の清浄度を一緒に決める必要があるということです。熱を受け取る面を細かく作り込むほど、その面まで液体を届け、汚れを抑え、流路を保つ設計が重要になります。微細化は、冷却回路全体を見直すきっかけでもあるのです。
AVCについて、もう少し
AVC(奇鋐科技)は、台湾に本社を置き、冷却部品やファン、システム全体の放熱設計を手がける企業です。事業の広がりや決算は、cyclewaveの企業記事で紹介しています。[3]
参考資料
2026年9月23日確認。発表の解説は公開スライドをもとにしています。寸法や条件は発表内の例として紹介しています。
- Open Compute Project「2026 OCP APAC Summit」発表一覧 — Cooling Environments、Fangchou Lin(AVC)。開催日は2026年8月11〜12日。
- Fang-chou Lin「Advanced Thermal Management for High-Density AI Servers: Cold Plate Optimization and CDU Specification Requirements」公式掲載スライド — 4〜7・10ページ。局所発熱、フィンと流路、圧力損失、ろ過、今後の課題。
- AVC:会社紹介・製品分野 — 企業の輪郭を確認。

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