AIの計算機を大きくすると、チップを増やすだけでは済みません。離れたチップへデータを渡す線も増え、その線が使う電力や、途中で止まる可能性が効いてきます。光ファイバーは距離を伸ばしやすい一方、光と電気を変換する装置をどこに置くかが設計の分かれ目です。
OCP APAC Summit 2026でBroadcomのBhaskar Chinni氏が紹介したCPOは、光を電気信号の出発点に近づける方法です。発表はスイッチの実装からラック間の接続へ話を広げています。ここでは、SUE-Tのような通信手順ではなく、光の変換部を置く場所と、そこから生まれる利点・保守上の課題を見ます。[1・2]
光の変換部を、どこへ置くか
一般的な着脱式の光モジュールでは、スイッチの半導体から出た高速の電気信号が基板を通り、前面のモジュールで光に変わります。CPO(Co-Packaged Optics)では、光に変える小さなエンジンを、スイッチの半導体と同じパッケージの近くに収めます。基板を走る高速の電気信号を短くできるのが狙いです。[2・3]
発表の図には、光エンジンを基板上に置く方式も並びます。こちらは半導体の近くには置けますが、同じパッケージに収めるCPOとは別の配置です。「光を使う」だけで一括りにせず、電気で進む区間がどれほど残るかを比べると、設計の違いが見えてきます。
省電力の数字は、どこを比べている?
Broadcomの資料は、同社CPO構成の光学部分の電力が、信号を整える回路を持つ着脱式モジュールとの比較で65%少ないという結果を示します。これは特定の比較条件における光学部分の値です。スイッチ全体やデータセンター全体の消費電力が65%減る、という意味ではありません。[2・4]
変換部を近づけると、長い電気配線を補う回路を減らせる余地があります。ただし、実際の電力は光源、冷却、接続距離、採用する信号方式にも左右されます。比較表を読むなら、モジュールだけの値なのか、スイッチや冷却を含む値なのか、境界を先に確かめたいところです。
止まりにくさにも、測った範囲がある
資料はMetaの評価を引き、400Gbps相当ポートの稼働時間を合計した100万ポート時間で、短い接続断であるリンクフラップを観測しなかったと示します。複数のポートの時間を積み上げた数値であり、一本の接続が100万時間動き続けたという意味ではありません。測定対象もBroadcomの特定世代・環境です。すべてのCPO製品で同じ故障率を保証するデータではありません。[2・4]
この違いは保守でも重要です。前面の光モジュールなら、故障した単位を抜いて交換できます。CPOでは光エンジンが半導体のパッケージに近いため、交換の単位が大きくなりやすい。Broadcomは外付けで交換可能な光源や、ラック側のブラインドメイト接続も示しますが、光源を交換できることと、光エンジンそのものを現場で交換できることは別です。
ラックの外まで光を伸ばすとき
発表後半は、銅線で届く範囲に計算機を集める構成から、光で複数のラックをつなぐ構成へ進みます。OCI-MSAの公開仕様には、NRZ信号を複数の波長に分け、一つのファイバーで双方向に運ぶ物理層が記されています。これは接続の土台をそろえる試みです。仕様書があることだけで、異なるメーカーの完成品すべてが接続できると確認されたわけではありません。[2・5]
Broadcomが描くラック例には、光ファイバーの分岐、電源のバスバー、液冷の出入口、着脱時に位置を合わせてつなぐ光コネクターが同居します。光へ置き換えて終わりではなく、電気、熱、交換作業まで含めてラックを組み直す発想です。図は設計例として読み、掲載された規模を稼働中の導入実績とは扱いません。
CPOが問いかけるのは、光が銅より常に優れているか、という単純な比較ではありません。速い電気信号をどこまで運び、どこで光に変え、故障したときに何を交換するか。距離と電力、保守の境界を一緒に決めることが、次のAIネットワークの設計につながります。
Broadcomの事業全体と収益のしくみは、cyclewaveの企業記事で整理しています。
参考資料
2026年9月23日確認。本文は公開スライドと各団体の一次資料をもとにしています。講演動画の発言・質疑は確認対象に含めていません。性能値は記載された構成・測定範囲に限ります。
[1]Open Compute Project:2026 OCP APAC Summit 発表一覧。発表名・登壇者。
[2]Bhaskar Chinni「Open Ethernet AI Fabrics Enabled by Co-Packaged Optics」公式掲載スライド。pp.3–12、配置、省電力・評価値、OCI-MSA、ラック構成例。
[3]Broadcom:Co-Packaged Optics。着脱式、基板上、同一パッケージの配置と電気信号区間の説明。
[4]Broadcom:MetaでのCPO評価に関する発表。2025年10月1日。光学電力の比較と100万ポート時間の観測範囲。
[5]OCI-MSA:200G Optical Compute Interconnect Line Interface Specification v1.0。2026年3月11日。NRZ、波長分割、双方向ファイバーの物理層。

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