AIインフラはどう変わる? OCP 2026の計算機・通信・電力・冷却をつなぐ発表

半透明の積層面に、橙色のレール、青い流れ、紫の細い網がつながる、計算・電力・冷却・通信の接続を表した抽象画。

AI用の計算機を増やそうとすると、チップの性能だけでは決められないことが増えてきます。電気を届けられるか、熱を運び出せるか、計算機どうしを十分な速さでつなげられるか。これらの条件がそろって、初めて計算能力を使えるからです。

2026年10月12〜15日に米サンノゼで開かれたOCP Global Summitでは、計算機、ネットワーク、電力、冷却を一緒に設計する流れが示されました。NVIDIAのラック設計、AMDのHelion、MetaのIcePackをつないで読むと、AIインフラで共有しようとしているものが見えてきます。

簡単にまとめると?

  • 計算機を収めるラックから建物の設備まで、接続条件を合わせることがAIインフラの課題になっています。
  • 今回の発表には、設計を提供したもの、今後提供する計画、将来世代に向けた仕様が混在しています。
  • 導入を考えるときは、公開された対象と開発段階、電力・冷却・通信の条件を分けて確かめる必要があります。

設計を共有する範囲が、ラックの外へ広がる

OCPは、計算基盤の設計や仕様を共有するOpen Compute Projectです。部品を棚のようなラックに収めるだけでなく、機器を支える電源や冷却の仕組みも扱います。

たとえば、同じ床面積により多くの計算機を置くと、そこへ届ける電力と取り除く熱も増えます。冷却能力が足りなければ、設置できる台数や運転条件を制限する必要があります。さらに、計算機間のデータ転送が追いつかなければ、計算できる側にも待ち時間が生まれます。

このため、計算機の仕様が固まってから設備を考える進め方では、後から接続条件の不一致が見つかることがあります。ラックと設備の境目で、何をどの条件で受け渡すかを先に共有する意味は、こうした設計の手戻りを減らせるところにあります。

三つの発表が扱う、それぞれの接続

NVIDIA:計算機を支えるラック設計の共有

NVIDIAは、Vera Rubinを対象とするラックと計算トレイの設計を、MGXの取り組みを通じてOCPへ提供したと発表しました。トレイは、計算に使う部品をまとめてラックに収める単位です。

ここで注目したいのは、計算用チップ単体ではなく、それを収めて給電し、冷やす構成も共有の対象になることです。装置を作る側と、それを設置する側が、同じ設計情報を参照しやすくなります。ただし、設計の提供だけで、すべての組み合わせの互換性や運用性能が保証されるわけではありません。

AMD:AIが考える計算と、行動を実行する計算を分ける

AMDが発表したHelionは、AIエージェント向けのオープンなラック構成案です。AIエージェントがモデルで判断する処理に加え、ツールやプログラムを実行する処理にも注目しています。

モデルの推論をGPUで行い、ツールの実行をCPU側へ分ける構成と、両方をまとめる構成を示しています。たとえば、AIが作業手順を考え、その結果に基づいてプログラムを動かす場合、二つの処理は同じ種類の計算ではありません。処理に応じて配置を考えることが、ラック設計にも関わります。

HelionのOCPへの提供は計画として示されており、パートナー構成の開発も進行中です。発表された将来の構成を、すでに導入できる完成品と読み替えないことが大切です。

Meta:通信機器も液体冷却の設計に入る

Metaは、液体冷却を使うネットワークラックIcePackと、スイッチIceCubeを紹介しました。IceCubeは128本の800 Gb/sポートを持ち、102.4 Tb/sのノンブロッキング構成を掲げています。これは各ポートの能力を同時に扱えるようにする設計上の容量で、AIの処理がその速さで進むという意味ではありません。

ネットワーク機器の原資料には、通信ポートだけでなく冷却液の入口・出口も示されています。通信の高速化を追うときにも、電力と熱をどこへ逃がすかを一緒に考える必要があることが分かります。計算用ラックだけを冷やせばよい、という設備計画では足りなくなる可能性があります。

設備側の仕様は、将来の設計条件を示す

この流れを建物側から見る資料が、OCPの「Open Data Center Spec」です。確認した版は0.7.0で、表紙の適用日は2026年8月27日。2027〜2028年の機器世代を見据え、ラックを並べる空間、給電、冷却などの条件をまとめています。

資料には、通路やラックの寸法の表に加えて、ラック列の上に電力の配線と冷却用の配管を配置する概念図があります。機器を収める場所、熱を運ぶ経路、保守のために人や機材が通る場所を、同じ空間の中で調整する必要があるためです。

この仕様は、10月のイベントで初めて生まれた構想ではありません。OCPのOpen Data Centerの構想自体は2025年10月に発表されています。今回のイベントは、以前からの設備設計の取り組みと、各社の新しい機器構成を結びつけて読む機会でもあります。

「オープン」の中身と、確かめる順番

これらの発表を比較するときは、まず何が共有されるのかを見ます。設計図、仕様書、ソフトウェアでは、利用できる内容も利用条件も違います。そのうえで、提供済みなのか、提供予定なのか、将来の設計目標なのかを確かめます。

次に、自分が扱う設備との境目を確認します。ラックへの給電条件、冷却液の条件、接続する通信機器、保守の空間が合っているか。たとえば液体冷却の機器を採用するなら、機器側の接続部に加え、設備側で熱を受け取れるかまで確認が必要です。

最後に、容量の数字と実際の処理性能を分けます。スイッチの転送容量、設備の受電能力、AI処理の速さは、別々の対象を測っています。一つの数字だけでシステム全体の優劣を決めず、対象と条件をそろえて比べるためです。

今回の発表から読み取れるのは、AIインフラの設計が、計算機と周囲の設備をどう合わせるかという課題へ広がっていることです。公開された設計や仕様は、その相談を具体的にするための手掛かりになります。各社の発表は設計方針を知る一次資料として扱い、組み合わせたシステムの性能実証とは区別して読む必要があります。

事業の背景も知りたい方は、CyclewaveのNVIDIAの企業解説、AMDの企業解説、Metaの企業解説も参照してください。

出典