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  • Advanced EnergyのORv3電源棚、高電圧DCへの対応と故障への備え

    Advanced EnergyのORv3電源棚、高電圧DCへの対応と故障への備え

    AIサーバーが必要とする電力が増えると、電源ユニットを大きくするだけで足りるでしょうか。ラックへ届くまでの電圧、複数のユニットの分担、異常を見つける仕組みも、合わせて考える必要があります。

    2026年8月のOCP Korea Tech Dayで、Advanced EnergyのMelvin Choi氏は、Open Rack V3(ORv3)向けの電源群を紹介しました。従来の約50Vを出す電源棚から、高電圧の直流を受けて50Vへ下げる大容量の棚まで、電気の届け方の変化が見える発表です。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • ORv3電源棚では、ユニットや棚の定格と、予備を含めた使用可能な電力を分けて見ます。
    • 高電圧DC入力で電流を抑える構成でも、絶縁・保護と50Vへの変換を一緒に設計します。
    • 容量を増やすだけでなく、複数の棚の監視や交換のしやすさもラック設計の対象です。

    まず、交流から50Vをつくる棚

    基本となる構成では、施設から来る交流を電源ユニットが50Vの直流に変え、ラック内の機器へ渡します。資料にある3kWのユニットは50V・60Aの出力です。これを六つ収める18kWの棚は、一つを予備にする5+1構成では15kWの供給として示されています。棚の最大値と、故障に備えたときに使える値は同じではありません。[2]

    電源ユニットの効率にも、読むときの条件があります。資料の測定例では、交流入力277Vの3kWユニットはピーク効率97.83%、定格負荷で96.94%。冷却ファンの損失も含めた測定値です。これはそのユニットの、その入力条件での数字であり、ラック全体の効率ではありません。[2]

    高電圧DCを受ける棚へ

    発表の後半には、高電圧の直流を受け、低電圧の直流へ変える棚が出てきます。示された構成例には100kWと160kWの棚があり、入力の接続数や出力コネクタが異なります。いずれも18kWの電源ユニットを使う設計として示され、接続部や外部バスバーの温度を監視する仕組みも載っています。[2]

    高い電圧でラックの近くまで運ぶと、同じ電力を低い電圧で運ぶ場合より、配線を流れる電流を抑えられます。ただし、実際の配電では入力の形式、絶縁・保護、コネクタ、そして50Vへ下げる変換器を一続きで設計します。資料の配線図にある「+400V・-400V」は、この発表の構成例です。すべてのORv3電源がこの入力を使うわけではありません。[2]

    電源の状態を、棚をまたいで見る

    電源が一台から複数の棚へ増えると、どのユニットが働き、どこに異常があるかを知ることも大切です。発表は、棚をまたいで状態を集める監視モジュールと、Ethernet経由で診断情報を伝える管理モジュールを挙げています。電源の容量だけでなく、予備の持ち方と、交換・監視のしやすさまで含めてラックを考えるためです。[2]

    Advanced Energyの資料は、50Vの電源棚から高電圧DC入力の棚へと、製品例を段階的に並べています。数字を比べるときは、ユニットの定格、棚の定格、予備を含めた使用可能な電力を分けて読む。その区別が、ラック全体の設計を理解する近道になります。

    発表したAdvanced Energyの事業全体は、cyclewaveの企業記事にまとめています。

    参考資料

    2026年9月23日確認。本文は公開スライドをもとにしています。100kW・160kWはAdvanced Energyが示した製品構成例です。資料の別ページには11ユニット構成を200kWと記した箇所もあるため、本稿ではその数字を採用していません。

    1. Open Compute Project「2026 OCP Korea Tech Day」発表一覧 — 「ORV3 and HVDC Power Systems for AI datacenter」、Melvin Choi(Advanced Energy)。
    2. 同発表の公式掲載スライド — 全17ページを確認。本文は主に3・6〜8・16ページ。
  • LITEONの電源ラック案、パワーシェルフをITラックから分ける

    LITEONの電源ラック案、パワーシェルフをITラックから分ける

    AIサーバーを収めるラックに、電源装置も一緒に積み続ける。消費電力が増えても、しばらくはそれで対応できます。ただ、計算用の機器や冷却の部品も増えると、ラックの中で場所を取り合うようになります。

    2026年8月のOCP APAC Summitで、LITEONのRafael Lee氏が示したのは、電源を別の「Power Rack」にまとめ、計算用の「IT Rack」へ電気を渡す構成です。電圧を上げる話だけでなく、どこで電気を変換し、どこに蓄電の備えを置くかを一緒に考える発表でした。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • LITEONの案は、電源棚をITラックからPower Rackへ移し、高電圧で運んでサーバーの近くで降圧する構成です。
    • ITラックの空間を確保しやすくなる一方、配線と追加の変換器の損失を合わせて評価します。
    • 容量やバックアップの有無は発表の構成例で、施設の条件や停電・交換時の動きに合わせて選びます。

    電源を置く場所が変わる

    従来の構成例では、ITラックの中にパワーシェルフを収め、交流を約50Vの直流に変えていました。パワーシェルフは複数の電源ユニットを並べる棚です。サーバーが使う電気をまとめてつくり、部品の交換や予備の確保もここで行います。

    LITEONの次の構成例では、その棚をPower Rack側へ移します。Power Rackで交流を800Vの直流に変えてITラックへ送り、ITラック側で50Vへ下げる流れです。低い電圧のまま大きな電力を遠くへ運ぶと、電流が増え、配線や接続部の負担が大きくなります。そこで、ラック間は高い電圧で運び、サーバーの近くで必要な電圧へ変えます。[2]

    この配置なら、ITラックには計算機器や冷却のための場所を残しやすくなります。一方で、変換器が一段増えるため、配線の損失だけでなく変換器の損失も合わせて見る必要があります。「800Vだから全体が必ず高効率」とは言えません。

    110kWの棚を六つ並べた構成例

    発表に載るPower Rackの例は、110kWのパワーシェルフを六つ置く660kW構成です。バッテリーバックアップユニット(BBU)を組み込む例と、組み込まない例が並んでいます。どちらもPower Rackから800Vの直流を送り、ITラック側のDC/DC変換器で50Vに下げます。これはLITEONが示した構成例で、すべてのOCPラックが同じ容量や配線になるという意味ではありません。[2]

    BBUは、施設側からの給電が途切れたときに短時間の電力を支えるための部品です。組み込むかどうかで、Power Rack内の機器の配置、保守する部品、停電時に何を守るかが変わります。必要なバックアップ時間や施設側の無停電電源との役割分担は、この図だけでは決められません。

    大きなラックほど、運用も一緒に設計する

    電源棚の数が増えれば、一つのユニットを止めて交換する場面も増えます。どの棚を予備として持つか、電源の異常をどこで検知するか。ラックへ電気を届ける方法は、運用の仕方ともつながっています。

    LITEONは、パワーシェルフに加えてBBU、電圧を下げるモジュール、冷却設備までを発表の中で並べています。これらは同社の提案する製品群であり、導入先ごとに必要な組み合わせは違います。製品を比べるときは、棚単体のkWだけでなく、Power RackからITラックまでの電気の通り道と、停電・交換時の動きを確かめたいところです。[2]

    LITEONの事業全体は、cyclewaveの企業記事にまとめています。

    参考資料

    2026年9月23日確認。本文は公開スライドをもとにしています。講演動画の発言や質疑は確認対象に含めていません。容量・配置はLITEONの発表例で、OCP共通の仕様値としては扱いません。

    1. Open Compute Project「2026 OCP APAC Summit」発表一覧 — 「Powering AI Infrastructure: From Power Shelf to Rack-Level Power Architecture」、Rafael Lee(LITEON)。
    2. 同発表の公式掲載スライド — 全11ページを確認。本文は主に6〜10ページ。
  • DeltaとAdvanced EnergyのORv3電源、出力と故障時の予備容量

    DeltaとAdvanced EnergyのORv3電源、出力と故障時の予備容量

    AIサーバーの電源を比べるとき、「何kWまで供給できるか」は大切な数字です。ただし、電源1台の出力、複数台を収めるパワーシェルフ全体の出力、故障に備えた余裕を残して使える出力は、それぞれ異なります。

    ORv3(Open Rack v3)のPSUは、交流をサーバー向けの直流に変換する電源ユニットです。DeltaとAdvanced Energyによる2024年のOCP Global Summitの公開スライドをもとに、33kWという出力の内訳と、高電力化で一緒に考えるべき負荷変動・監視の仕組みを見ていきます。[1・2]

    簡単にまとめると?

    • 資料の33kWシェルフは5.5kW電源6台の構成で、1台分の余裕を確保するN+1では27.5kWです。
    • 同資料のHPR2は10kW電源・60kWシェルフとして説明され、12kW超の電源は将来動向の図で別に示されています。
    • 出力の大きさだけでなく、変換効率、急な負荷変動への応答、故障や停電への備えを分けて読む必要があります。

    33kWは、どの電源を何台組み合わせた数字か

    資料の「Power Shelf Details」には、PSU用の6スロットと管理用の1スロットを持つ構成が示されています。組み合わせる整流電源は1台5,500W。6台の出力を合計すると33kWです。同じページは、冗長性を持たせないN+0で33kW、1台分の余裕を持たせるN+1で27.5kWと明記しています。[1、p.11]

    2024年の発表資料にある33kWシェルフの読み分け
    構成資料の出力出力の数え方
    5.5kW電源6台、N+033kW6台分を合計。電源1台分の予備容量を含まない
    同じ6台、N+127.5kW5台分を負荷に使う上限とし、1台分の余裕を確保

    たとえば、負荷が30kWなら33kWという合計値には収まります。しかし、1台分を失った後の27.5kWを超えるため、この構成で電源1台の故障に備えられるとは言えません。搭載容量と、冗長性を保って使える容量を分けると、数字の意味がはっきりします。これは資料の定格からの計算例で、実際の設備の運用事例ではありません。

    一方、同じ資料のHPR2比較表は電源1台を10kWとし、シェルフは33kWから60kWへの拡張として説明しています。後半の電力動向図にある「12kW+ PSU」「70kW+/OU」は、さらに先の方向を示す別の記述です。33kW構成へ12kW電源の数字を混ぜたり、60kWをそのままN+1時の出力と読んだりすることはできません。[1、pp.5–6・20]

    電力密度が上がることと、消費電力が減ることは別

    資料では、HPRの5.5kW電源からHPR2の10kW電源へ進むと、長さは640mmから710mmへ約11%増え、出力は約82%増えると説明されています。幅と高さは比較表で同じなので、限られた設置空間から取り出せる電力を増やす、という意味があります。[1、pp.4–5]

    これに対して変換効率は、入力した電力のうち何割を出力へ渡せるかを示します。比較表の230V・240V条件では、ピーク97.5%、100%負荷時96.5%という値が示されています。大きな出力を小さな筐体に収められることだけで、冷却や配電を含むデータセンター全体の効率まで改善したとは判断できません。設置空間と損失を、それぞれの指標で見る必要があります。[1、p.5]

    急な負荷変動では、値と一緒に試験条件を読む

    AI処理では負荷が短時間に大きく変わります。発表では、蓄えたエネルギーで一時的なピークを補うピークシェービング用シェルフと、PSUの入力電力制限を調整した試験を紹介しています。この二つは、電源から取り出せる連続出力を無制限に増やす仕組みではありません。[1、pp.8・12–18]

    入力電流の波形のひずみを表すiTHDが2.91%となった例は、5.5kW電源に対して、入力277V・60Hz、負荷15~160%、負荷変動の周波数1.25kHz、入力電力制限7.5kWという試験です。同じ負荷条件で制限値を8.8kWにした例のiTHDは3.27%でした。2.91%はこの条件での測定値であり、すべての負荷で得られる性能値や変換効率ではありません。[1、pp.15–16]

    入力電力を絞ればよい、とも限りません。別の試験では、230V・60Hzで5.5kW電源の負荷を50%から100%へ変え、入力電力制限を4.5kWにすると、高負荷が続いたときに出力を維持できず停止しました。続く例では、停止に至る前に制限値を自動的に引き上げています。ピークを抑える設定と、負荷へ給電し続けるための制御を組み合わせることが、この比較から読み取れる要点です。[1、pp.17–18]

    図1は、入力制限を4.5kWに固定したときの停止例です。負荷を増やした後、内部のバルク電圧(緑)が下がり、入力電流(紫)の周期的な波形も途切れています。瞬間的な変動を受け止められることと、高い負荷を継続して支えられることの違いを示しています。

    2024年OCP発表の入力電力制限試験。5.5kW電源、入力230V・60Hz、負荷50~100%、入力制限4.5kWで高負荷継続後に停止した波形。黄色は出力電圧、紫は入力電流、緑は内部バルク電圧。
    図1:入力電力制限を4.5kWに固定した5.5kW電源の試験。入力230V・60Hz、負荷50~100%。高負荷の継続後に停止した例を示します。出典:Cihan Aydin(Delta Energy Systems)、Harry Soin(Advanced Energy)「Requirements/Considerations of Next Generation ORv3 PSU and Power Shelves」、2024 OCP Global Summit、p.17。原資料 / 図を拡大する

    故障・停電への備えと、監視まで含めて考える

    N+1が扱う電源1台分の余裕と、停電時に使うBBU(バッテリーバックアップユニット)は役割が違います。発表では、BBUへの切り替え信号に加え、PMM(Power Monitoring Module)がPSUやBBUの状態をまとめ、Modbus通信で上位のラック管理装置へ渡す仕組みを説明しています。出力の大きさだけでなく、状態を把握し、異常時にどう給電を続けるかまでがシステムの設計範囲です。[1、pp.6–7・19]

    この発表を読むときの順序は、まず電源1台の出力、次にシェルフの合計、続いて冗長条件、最後に負荷変動と停電への対応です。将来の高電力化を示す図も、現行構成の定格や冗長運転の保証とは分けて見ると、自分が比べたい条件に近づけられます。

    企業の事業全体については、cyclewaveのデルタ電子の企業解説とAdvanced Energyの企業解説も参照できます。

    参考資料

    1. Cihan Aydin(Delta Energy Systems)、Harry Soin(Advanced Energy)「Requirements/Considerations of Next Generation ORv3 PSU and Power Shelves」、2024 OCP Global Summit、全23ページ。本文はこの公開スライドの数値と条件に基づきます。
      発表スライド(OCP公式一覧のリンク先)
    2. Open Compute Project「2024 OCP Global Summit」Rack & Powerの発表一覧。
      公式プログラム・動画・スライド一覧
    3. Open Compute Project「Requirements Considerations of Next Generation ORv3 PSU and Power Shelves」発表動画。
      発表動画

    対象は2024年の発表資料です。資料確認日:2026年10月6日。現在販売されている全製品の仕様を比較したものではありません。

  • MetaのORv3 HPR、高電力ラックを支える電源と冷却の設計

    MetaのORv3 HPR、高電力ラックを支える電源と冷却の設計

    Metaが開発した「Open Rack V3 High Power Rack (HPR)」とそのエコシステムについて解説します。HPRは、AIが牽引する電力需要の高まりに対応するため、従来のOpen Rack V3 (ORv3) を改良し、高出力設計を実現したものです。以下に主な特徴と進化点をまとめます。


    簡単にまとめると?

    • MetaのHPRは、AI向けの高出力化に合わせてORv3のラック構造と電源を改良した設計です。
    • 大容量のコンデンサーで、一時的な高負荷に対応します。
    • 冷却ではラック間のシーリングを保ち、マニフォールドの柔軟性を高める設計です。

    HPRの主な改良点

    ラック構造の改良

    • ラックの深さ: ORv3より6インチ深い構造。
    • バスバー容量: 最低18kWから最低92kWへ大幅に向上。
    • 安定性の向上: バランスウェイトを追加して重量増加による不安定性を解消。

    電力システムの強化

    • パワーシェルフ: 従来の3kWから5.5kWのモジュールを採用し、最大33kWの出力を実現。
    • ピークパワー: 大容量のコンデンサを搭載し、一時的な高負荷(136%や160%のピークパワー)に対応。
    • バックアップ電源ユニット(BBU): 最大90秒のフルロードバックアップと4分間の部分バックアップが可能。
    • 配線: 北米では20Aから30A ACウィップへ変更し、ヨーロッパでは従来の32Aプラグを維持。

    接地と安全性の改善

    • 接地ポイントの変更: バスバー側に接地ポイントを移動し、過電流のリスクを軽減。
    • 新しいグラウンドクリップ設計: ITギアとの接続部材を適切に選定し、信頼性を向上。

    冷却と拡張性

    • 冷却効率の維持: ラック間のシーリング効率を保ちつつ、冷却用マニフォールドの柔軟性を向上。
    • 将来の高容量冷却への対応: 深いマニフォールドをサポートする設計。

    テスト結果と性能

    HPRは厳しい性能テストを実施し、以下の結果が得られています。

    • 最大出力: 155kWの電力供給を達成。
    • バスバー設計: 厚みを増し、15kgから80kgへの重量増加で高出力に対応。
    • 熱制御: バスバー温度上昇を30℃に抑え、3段階の温度制限(90℃、110℃、120℃)を設定。

    エコシステムと開発への参加

    MetaはHPR設計に多くのパートナー企業と協力し、ケーブル、バスバー、ラックの設計を最適化しました。また、Open Compute Project (OCP)のWikiでスペックを公開予定で、コミュニティからの参加も歓迎しています。


    結論

    HPRは、AI主導の需要に対応するための革新的な電力設計を提供し、スケーラビリティ、効率性、安全性を大幅に向上させています。この取り組みは、今後の高負荷環境におけるデータセンター設計の新たな基準を築くことを目的としています。

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