うるう秒のないUTCへ、CGPMが2027年5月20日の移行を決議

等間隔の粒を載せた連続する淡い帯と、奥で傾いた輪によって、原子時計の秒と地球の自転を表す抽象画

通信や計測で同じ時刻を共有するとき、普段と違う「1秒」が現れることは小さくない問題です。世界の標準時の基準である協定世界時(UTC)について、国際度量衡総会(CGPM)は2026年10月、2027年5月20日から連続した時系へ移ることを決議しました。NICTは10月23日、うるう秒の実質的な廃止につながる決定として紹介しています。何を変え、何を引き続き測り続けるのでしょうか。

簡単にまとめると?

  • CGPMの決議5は、連続したUTCの開始を2027年5月20日と定めました。2026年10月時点ですでに切り替わったわけではありません。
  • 地球の自転に基づくUT1との差を、最大3,600秒まで許容します。その日に時計を1時間動かすという意味ではありません。
  • UTCの連続化と、無線で時刻差を伝える規格や機器の対応は別の段階です。UT1が必要な用途では、差の情報を引き続き利用します。

原子時計の秒と、地球の回転をつなぐ調整

UTCは、国際単位系(SI)の秒に基づく時刻の尺度です。一方、UT1は地球がどこまで回転したかに対応します。地球の自転は一様ではないため、二つをそのまま進めると差が変化します。これまでのUTCでは、UT1との差を0.9秒以内に保つよう、必要に応じて秒を挿入または削除する運用が定められていました。これが、うるう秒です。

現行のITU-R勧告TF.460-6では、正のうるう秒を入れるとき、UTCの月末に「23時59分60秒」が現れます。負のうるう秒なら「23時59分58秒」の次が翌日の「0時0分0秒」です。決議によれば負のうるう秒はこれまで実施されていませんが、準備が十分でないシステムへの影響が懸念されています。

たとえば二つの計測装置が別々の時刻サービスを使っている場合、一方が秒を段階的に調整し、もう一方が異なる方法を採ると、同じ現象に付ける時刻が食い違うおそれがあります。これは仕組みを説明するための例です。決議も、サービスごとの調整方法の違いが、システム間の時刻の不整合につながることを問題として挙げています。

3,600秒は「許す差」であり、時計を動かす量ではない

今回変えるのは、UTCを地球の自転にどこまで近づけておくかという条件です。UT1との差の絶対値の上限を3,600秒に広げ、数世紀にわたり、不連続な調整なしでUTCを継続できるようにする方針です。1秒の単位を長くすることでも、移行日に1時間の時差を作ることでもありません。

NICTが「実質的な廃止」と表現するのは、この長い期間にうるう秒のような調整が不要になるためです。地球の自転とUTCの関係を測らなくなるわけではなく、決議はBIPMに対して、その差と将来の見通しを継続して監視し、報告することも求めています。

確認すること 今回の決定と残る作業
UTCをいつ連続化するか 決議で定めた開始日は2027年5月20日
UT1との差をどう扱うか 上限は3,600秒。差の観測と情報提供を続ける
無線で差をどう伝えるか 送信符号などの更新をITU-Rで検討
利用中の機器が対応したか 個別の提供者や機器の対応状況を別に確認する必要がある
CGPM決議5、NICTの説明、ITU-Rの現行勧告を基に作成。決定事項と実装の確認事項を分けています。

地球の向きが必要な用途には、差の情報を届ける

UTCが連続になっても、地球の回転を基準にした時刻を使う用途は残ります。その場合、UTCだけからUT1を近似するのではなく、UT1−UTCの情報を利用することになります。決議は、衛星測位システム(GNSS)の航法メッセージや、国際地球回転・基準系事業(IERS)、各国の計量機関などのインターネットサービスを、情報の入手先として挙げています。

無線でこの差を伝える仕組みには、別の課題があります。現行勧告では、UT1−UTCの予測値に相当するDUT1を、0.1秒刻みの値として送信する方法が定められています。許容する差を広げるなら、受信側が大きな値を正しく解釈できる表現も必要です。UTCの変更を決議することと、送受信機が扱う符号を変えることは、同時に完了する作業ではありません。

CGPM決議が引用する無線側の方針には、既存機器を早く交換できない場合の移行期間として2035年、遅くとも2040年という年も登場します。これは、増大する時刻差を無線で伝えるための機器・方式の移行に関するものです。連続したUTCの開始を2040年まで延期すると決めた、という読み方は適切ではありません。

決議、勧告、実際の運用を順に確かめる

2026年10月31日に確認したITUの勧告一覧では、TF.460-6(2002年版)が引き続き有効な版として掲載されています。NICTの発表も、今回の決定を受けた改定は今後進む見込みとしています。したがって、CGPMの決定を、改定済みの無線勧告や、個別の時刻配信サービスの対応完了と置き換えることはできません。

システムを読む側にとっては、まず参照している時刻がUTCか、地球の回転情報が必要か、そして提供者が移行をどう実装するかを分けると整理できます。今回の決定だけを理由に、現在のうるう秒情報を無視したり、時計の設定を先に変更したりする根拠にはなりません。

UTCを使う仕組みには連続性を与え、地球の回転が必要な仕組みにはその差を届ける。二つの役割を分けることが、この変更の中心です。今後は開始日だけでなく、関連勧告の版と、実際に使う機器・サービスの対応を合わせて見る必要があります。

出典