AIの処理を増やすとき、GPUを一か所に詰め込むだけでは足りなくなってきました。推論を担う計算機、道具を動かすCPU、途中の情報を置くメモリーは、それぞれ必要な量も増え方も違います。必要なものを組み合わせながら使うには、機器の間をどうつなぐかが大切です。
2026年8月のOCP APAC SummitでAyar LabsのMark Wade氏が示したのは、光の接続を使い、ラックの作り方そのものを単純にしようという構想でした。主役は「速いケーブル」だけではありません。半導体のそばから光で信号を取り出し、計算機を収めるシャーシを、組み合わせやすい単位に変えようとしています。[1]
ラックの中に閉じ込めない
これまで高い帯域が必要な機器どうしは、短い電気配線で結ぶため、同じシャーシやラックの近くに置く設計が中心でした。距離を伸ばすほど信号を保つのが難しくなり、配線や電力、冷却の制約も一緒に増えます。発表者は、この事情が大型で複雑なラックを生んでいると説明します。[1]
提案は、GPUなどのアクセラレータやスイッチの近くに光エンジンを置き、シャーシから出る信号を光にすることです。CPO(Co-Packaged Optics)は、その光エンジンを半導体のパッケージの近くへ組み込む設計を指します。長い電気配線に頼る区間を減らし、離れたシャーシどうしを光ファイバーで結びます。[1]
「組み替えられる」とはどういうことか
ここでいう組み替えは、動いているGPUを物理的に頻繁に差し替えるという意味ではありません。計算、CPU、メモリー、スイッチを、それぞれ必要な数のシャーシとして増やし、共通の接続で一つのクラスタにまとめる考え方です。負荷ごとに必要な資源が違っても、ラックごと特別な配線を作り直さずに済む可能性があります。これは発表資料を踏まえた設計上の狙いで、すべての設備で実現済みという意味ではありません。[1]
Ayar LabsとWiwynnが示した構成例では、一つの計算トレーにAI向け半導体を二つとCPUを置き、光エンジンと外部の光源を組み合わせます。資料は、この共通の部品から約1,000基規模のアクセラレータを結ぶ構成を描いています。両社の公開説明では、32トレーを収めるラックを16台つなぐ、1,024基超を想定した参照設計です。構成可能な規模の提示であり、一般の顧客環境で1,024基が稼働しているという報告ではありません。[1・2]
光エンジンの置き場所には選択肢がある
発表資料は、光エンジンを基板の上、半導体と同じパッケージ内、さらに近い中間基板上に置く三つの例を並べています。配置が違えば、半導体から光エンジンまでの電気信号の距離も変わります。一つの「CPO」という言葉だけで性能や修理のしやすさを決められない理由です。[1]
Ayar Labsは、TeraPHY光エンジンと、別の場所に置くSuperNova光源を製品の組み合わせとして紹介しています。レーザーを光エンジンから離すのは、熱と交換作業を考えた設計です。ただし、光ファイバーの取り回し、コネクター、光源の冷却、故障した部品へのアクセスまで設計して初めて、ラック全体として扱いやすくなります。[1・3]
共通の境界をどこに置くか
もう一つの要点は、光を使うだけでは組み替えやすいシステムにならないことです。資料は、論理的な通信方式、光の波長、コネクター、シャーシの形など、層ごとに接続の約束事をそろえる必要を示しています。既存のORv3ラックやOCP NIC 3.0などを使いながら、シャーシ間の光接続は今後さらに標準化を進めたい領域として挙げています。[1]
光接続の利点は、機器を自由に遠ざけられる魔法ではありません。届く距離や電力だけでなく、接続先を変えたときに動作するか、故障した光源やコネクターを直せるかも重要です。今回の発表は、CPOを部品単体の競争から、シャーシを繰り返し使える単位にするための接続設計へ広げて考える手がかりになります。[1]
この構想を発表したAyar Labsがどんな会社かは、cyclewaveで事業全体を紹介しています。
参考資料
2026年9月23日確認。本文はOCP公式掲載の18ページのスライドを中心にまとめました。講演動画の発言や質疑応答は根拠に含めていません。Ayar Labsの将来の構想や自社モデルを、製品の導入実績や保証値として扱っていません。
[1]Open Compute Project:2026 OCP APAC Summitの発表一覧/Mark Wade「Co-Packaged Optics and the Composable AI Cluster」公式掲載スライド(主にpp.3–5、8–16)。
[2]Ayar Labs・Wiwynn「Building a Production-Ready Optically Connected Rack for AI Scale-Up」(2026年5月27日。ラック・トレー数は参照設計の説明)。
[3]Ayar Labs:CPO製品の公式説明(TeraPHYとSuperNovaの役割)。

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