DLCの冷却設備を選ぶ条件、Empyrion Digitalが整理する温度と水質

白い背景に立つ、角を丸めた淡青色のフレーム。

液体でチップを冷やすDLC(Direct Liquid Cooling)を導入するとき、施設側では「どの冷却設備なら電力を減らせるか」が気になります。ただ、選んだ設備がサーバーの必要とする温度・流量を届けられなければ、冷却系としては成立しません。Empyrion DigitalのJeongbeom Ko氏がOCP Korea Tech Day 2026で示したのは、IT機器側の条件から熱源と配管のつなぎ方を考える設計上の比較です。ここでいう「熱源」は、冷却に使う水を用意する施設側の設備を指します。[1]

簡単にまとめると?

  • 最初に決めるのはIT機器側の許容温度と必要流量。その条件を施設の熱源までたどります。
  • 外気を使う冷却でも、夏の温度、水の確保、空冷設備との併用によって選べる構成が変わります。
  • CDUへ冷却水を直接届ける方式と、手前に熱交換器を置く方式では、設備の増減と水質・流量の管理しやすさを比べます。

必要な温度は、どの場所の温度か

講演の構成では、施設側の水系統をFWS(Facility Water System)、チップ側の冷却系統をTCS(Technology Cooling System)と呼びます。その間にあるCDU(Coolant Distribution Unit)は、熱交換器を介してチップ側の熱を施設側へ渡す装置です。施設から届く水と、チップへ送る冷却液は別の流路を通ります。[1]

そのため、熱源設備から出る水の温度だけを見て、サーバーが使える温度だとは判断できません。まず利用者とIT機器メーカーがTCS側の許容温度を確認し、施設側は必要な温度と流量を供給できるように組み合わせます。講演は、IT機器がより高い冷却液温度を許容できれば省エネルギーにつながる可能性を示す一方、TCSの許容温度を先に確定するよう求めています。運用側の都合だけで設定を上げる話ではありません。[1]

外気を使えるかは、夏の条件まで見て決める

熱源の比較には、冷凍機、外気冷却を併用する冷凍機、冷却塔、ドライクーラーが登場します。ドライクーラーは外気へ熱を捨てる設備です。講演では外気の乾球温度、つまり通常の空気温度に影響され、夏季の冷却液温度を安定させる対策が論点になります。冷却塔は水の蒸発を利用するため、湿度も反映する湿球温度や、必要な水の確保が関わります。[1]

たとえば、外気を使える構成を候補にしても、暑い時期に供給できる温度がTCS側の要求を満たせるかを確かめる必要があります。さらに同じ施設で空冷も使うなら、その系統の温度条件も照合します。講演は液冷の計算クラスターにもネットワーク機器の空冷が残ると指摘し、熱源を共用するか分けるかを検討項目に挙げています。液冷の条件だけで施設全体の熱源を決めると、空冷側に必要な条件を取りこぼしかねません。[1]

「直接供給」は、施設の水をチップに流す意味ではない

熱源を選んだ後にも、FWSとCDUの間をどうつなぐかが残ります。図1の左はFWSの水をCDUへ直接供給する方式、右はCDUの手前にもう一組の熱交換器とポンプを置く間接供給方式です。どちらにもCDU内の熱交換器があります。「直接」はFWSからCDUまでの接続を指しており、施設の水をそのままチップ側へ流すという意味ではありません。[1]

FWSからCDUへの直接供給と間接供給の比較。左は施設の水をCDU内の熱交換器へ供給し、右はその手前にも熱交換器とポンプを置く。両方ともCDUとラック側の冷却液回路を持つ。
図1 施設側のFWSからCDUへ冷却水を届ける二つの方式。右ではCDUの上流にも熱交換器とポンプを置く。Jeongbeom Ko(Empyrion Digital)「DLC 도입 시 고려사항」、OCP Korea Tech Day 2026、PDF 8頁より。原資料/図を拡大する

左の直接供給は、右のような中間設備を追加せずにつなげます。その代わり、施設側から届く水の状態と流量がCDUに適合するかを見なければなりません。講演は、FWSの送りと戻りの温度差が小さい場合、多い流量と差圧への対応が必要になると説明しています。同じ熱を運ぶとき、一度に水が受け取れる熱が少なければ、その分多く流す必要があるためです。CDU内部の流れにくさも含めて、必要な流量を届けられるかを確認します。[1]

右の間接供給は、中間の熱交換器で流路を分けるため、CDUへ送る側の水質や流量を調整する構成を取りやすくなります。ただし、機器と設置場所が増えます。講演の比較でも、投資額・面積・PUEの増加方向と、水質管理やCDU推奨の温度差・流量を確保しやすい点が並べられています。これは「効率の悪い余分な装置」と切り捨てるのではなく、何を管理するために追加するかを考える比較です。[1]

PUEの順位より、満たすべき条件を並べる

PUEは施設全体の消費エネルギーを、IT機器の消費エネルギーで割った指標です。[2]資料の表には熱源や接続方式によるPUEの高低が示されていますが、同一の気候・負荷・運転期間で測った比較値や、改善幅は示されていません。この表だけから、ある方式なら年間の消費電力が必ず小さくなるとは言えません。[1]

設計案を比べるときは、まずTCSが求める温度と流量を置き、夏季に熱源が供給できる条件、空冷との併用、水質の管理範囲へとたどると判断しやすくなります。FWSから直接つなぐ案で条件を満たせるのか、それとも設備を追加してCDU側の条件を整える必要があるのか。講演から得られるのは単独の推奨機種ではなく、効率と安定性を同じ設計の中で比べるための順序です。[1]

参考資料

  1. Jeongbeom Ko(Empyrion Digital), DLC 도입 시 고려사항(公式一覧の英題:Considerations for implementing DLC), OCP Korea Tech Day 2026。PDF全11頁、主な参照は3–5・7–8・11頁。講演資料
  2. The Green Grid, Power Usage Effectiveness (PUE), Glossary。PUEの定義